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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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転機
2012-08-01 Wed 23:04
  朝靄に覆われた早朝のリューン、
 その郊外に静かに佇むのは、冒険者の宿【星の道標】。
  女は物陰からその宿、正確にはその周辺を観察する。
 
 (一人、二人、三人……か)
  
  宿の周囲にたむろするゴロツキに毛が生えた程度の連中は、
  いずれも彼女の気配に気付いた様子はない。
 
 (足運びもなってないし、退屈してるみたい。
  ま、そもそもまだこんな所にいる時点で腕の悪さはよく分かるけど)
 
  あの程度なら、彼女一人でも彼らを殲滅する事は可能だ。
 しかし、それは最後の手段に残しておきたい。 

 (とはいえ、私の顔も割れてるとすれば、のこのこと顔を出すのもなぁ)
 
  と、遠くで教会の鐘の響く音がした。
  それを合図としたように、リューンという街が目覚める。
  井戸端での朝の挨拶、通りを軽やかに駆ける馬車の音、
 それは静かに、けれど速やかに都市全体へと広がり、
 ミサの日だからか、気の早い人々が教会へと歩いていく。
  そして、彼女も何かに気付いたかのように微笑み、
 小道具を入手すべくその場所を後にした。


************************************


 「今日も来てるわね」

  サラは紅茶を飲む振りをしながら、そちらへと視線を向け、
 その扉の影から見え隠れする人の姿に眉を寄せた。

 「あんまり見るんじゃないぞ、サラちゃん」
 「喧嘩を売られて、中に入る理由にされないように、でしょ。
  分かってるわ、おじさま」

  ここ二日前から、だろうか?
  この宿は複数の何者かに見張られている。
  だが、特にあちらが手出しをしてくる様子はない今、
 こちらから厄介事を抱え込むのは避ける予定だった。
 
 「誰かが最近、何か変な依頼でも受けちゃった?」
 「そんな筈はないさ。荷運びに護衛だ。身元もしっかりしている」

  とはいえ、何か思い当たる点があるのか、親父の手は止まりがちである。 
  横目でそれを見ながら、サラは再度口元へとカップを運んだ。 
  朝食の皿を片付けるカチャカチャという音だけが辺りに広がる。
  紅茶の香りを楽しみながら、サラは小さく息を吐いた。

 (きっと、他の冒険者に関わりがある事なのね)
   
  この宿の冒険者達にも様々な経歴を持つ者がいるが、
 それを無闇に詮索はしない、と言うのが冒険者同士の暗黙の了解だ。
  だが、親父はある程度の事を知っていなければならない。  
  知っていて、黙っていてくれる。
 
 (でも、誰を待ち伏せしているんだろ?)
   
  幸いと言うべきか、新米達はそれぞれ依頼で出払っている。  
  百戦錬磨の古参冒険者達も軒並みいないのが、不安ではあるが。

 「マリス達は教会でハーロは娘さんとお買い物。
  リックはギルドで調べてるし、セアルは朝からいないし、
  誰でもいいから早く誰か戻ってこないかなぁ」
 「まぁ、女の子の一人歩きはこの状況じゃよした方がいいからな……おや」
 
  かたりと木戸の開く音に親父は顔を上げた。
  サラの願いは神様にすぐさま叶えられたらしく、
 扉の前には蒼髪のシスターが佇んでいる。
  その外にはフィリオンもいるが、なぜか彼は入ってこようとしない。
  
 「おかえりなさい、何かあったの?」
 「……それが、その。私にもよく分からないんですが」
 
  マリスは少し戸惑った様子で頬に手を当てた。
 
 「夫人が、サラさんを呼んできて、と」 
 
 
************************************
 
 
  待ち合わせ場所は教会に程近い、少し騒がしいカフェだった。
  女性客が多い事から、フィリオンは外で待機となる。
  頼んだ紅茶が届いた後、一口だけすすって見せてから、
 サラはようやく彼女へと視線を向けた。
 
 「あのぉ、なんですかその格好」
 「あらあら、いきなりなご挨拶ねぇ」

  サラにそう言われても、上品そうに微笑むシスター。
  特徴的なそばかすは薄い化粧の下に隠れ、
 普段の彼女の蓮っ葉な表情を知っているサラ達から見ても、
 かなりの化け具合だ。
   
 「夫人ったら関係者以外立ち入り禁止の所で声をかけてきたんですよ」
 「あんな奥で掃除してるなんて思わなかったんだもの。
  ま、結構スリルがあって楽しかったわ」
 
  彼女は周囲からペネル夫人と呼ばれている。
 【星の道標】の看板冒険者である《死神の逆位置》のメンバーで、
  ストリートチルドレンから冒険者、
 果てには仲間だった男爵の息子と結婚して男爵夫人と  
 玉の輿街道まっしぐら!の人生を送っていたが、
 夫の領地で事故があり多大な借金を背負ってしまい、
 出稼ぎの為にまた冒険者へと戻った、という波乱万丈の人生を送る女性だ。 
  酔うたびにその苦労と惚気話を聞かされたりもするが、
 口は悪くも姉御肌の性格と遺跡で見つけたという銃の腕前は、
 宿にいる誰もが一目置いていた。
  しかし、その彼女が何故宿に戻らないのか、
 同じ宿の仲間とはいえ、どうしてサラを呼び出したのか。
  強いて言えば、サラ達が代わってもらった赤塔の本の依頼に関しては、
 メンバーの強化をする為に休止中だと聞いているのだが。
  
 「旦那様に何かあったんですか?」
 
  サラの言葉に、何も聞かされていないというマリスが、
 はっとした様子で胸の十字架を握り締めた。
 その表情に、上品ぶった仮面を脱ぎ捨てた女性は、ぶんぶんと手を振る。 
 
 「違う違う、これは変装よ。へ・ん・そ・う」
   
  からりと笑うその表情は楽しげで、
 とても喪に服そうとか、そういう様子には見えない。
  サラは少し安心して、頼まれていたことを思い出す。
  
 「おじさまから伝言です。『三人は元気か?』って聞いておけ、と」
 「あぁ。大丈夫よ。上手くやってる筈。
  ……やっぱり我らのハゲ頭はただのハゲじゃないわね」
 
  夫人は嬉しそうに笑う。
  辛辣な言葉は親父が聞けば怒るかも知れないが、
 しかしその言葉に棘はない。
  むしろ、彼女が心からの信頼を親父に寄せているのを感じさせる。
  
 「あの、一体何があったんですか?」
 「まぁ、ちょっとね。暫く帰れないからよろしくいっといて」
 「宿を見張ってる人達と、何か関係が?」
 「そんな所かな。さっきギルドに軽く情報流したから、
  よっぽどの無能じゃなければ数日中には消えるでしょ」
 
  それ以上の事は、夫人は何も言わない。
  サラ達は一つ顔を見合わせ、根負けして続きを促す。
 
 「で、私の用件だけど……一つ目はこれ」
 
  そう言って彼女が懐の隠しから取り出した封筒は随分と分厚い。
  表書は先ほど、マリスがサラを呼びに戻った間に書かれたらしく、
 宛名のインクにはまだ、かすかに潤いが残っていた。
 
 「この手紙を親父に届けてもらいたいの。
  帰りが遅くなるって伝えないと心配するからね。
  旦那へのラブレターも入ってるから、濡らさないで。
  親父に渡せば、あとは届けてくれる筈だから」
 「ラブレター……相変わらず仲良しなんですね」
 「うん。最近は書いてる瞬間が一番幸せよ」
 
  うんうん、と頷くマリスの隣で、サラは首を捻る。
  その手の感情は、どうにもよく分からない。
 
 「そう言うもの、ですか?」
 「そうそう、サラちゃんだってリック君に告白されれば分かるわよ」
 「そうですか。それで、他には?」
 「スルーされちゃった。
  えーっともう一つは《暴走戦車》への伝言と対策法を……」
 
  夫人の言葉に、サラは頬を掻いた。
 《暴走戦車》もまた、《死神の逆位置》と同じく
 【星の道標】に所属する冒険者のパーティなのだが。
 
 「えーっと、無理です」
 「無理?」
 「あの方々は、その、長い旅に出てしまって……」  
 
  言葉だけを見れば、まるで黄泉路にでも足を踏み入れたようである。
  しかし、その実情をよく知っている夫人は、一つ嘆息した。
 
 「また、暴走したの? 今度は何?」
 「らしいです。俺達より強い奴に会いに行く、と……」
 「なーにやってるんだか、あいつらは」
 「あ、でも今回はちゃんと依頼は一区切りつけてから出たらしいので、
  そこはよかったですよね」 
 「そうねぇ~。依頼人を置き去りにしないだけ、成長したわぁ~」
 
  語尾を延ばす夫人の口元は少しひくついている。
 《暴走戦車》は強さだけなら《死神の逆位置》よりも上と言う噂だが、
 何かと余計な手出しや無茶な暴走をするせいで、
 サラ達より古参のメンバーは色々尻拭いが大変らしい。

 (悪い人じゃないんだけどなぁ、あの人達)

  しかし、長年苦労をかけられていた夫人には別の意見もあるのだろう。
  せっかく用意した弱点一覧が……とぼやく夫人に苦笑しながら、
 サラは注文してからそのままだった紅茶を含んだ。
  宿の物より薫り高く、ほんのりと甘さを感じる。
 
 「でも、だったら」
 
  突如夫人から強い視線を向けられて、サラは息を呑んだ。
  口元に浮かんでいる笑みに比べて、目はまったく笑っていない。
  
 「サラちゃん達に宿の看板になってもらうしかないわね」
 

 ――その爆弾発言に喉の紅茶を噴出さなかったのを褒めてもらいたい。
  後にサラはそう語ったという……。


************************************


  お久しぶりです! 環菜です。もう8月です、暑いです!
  大変長らくお待たせしました。長すぎです。
  見に来てくださってた人達すいません。

  まあ、一応言い訳させてもらえばこちらも大変でした。
 5月6月はパソコンのモニターが不調から壊れ(買ったの今年なのに)
 あげく今度は祖母が倒れまして……これが一番辛かった。
  これ自体は6月の終わりには書いてたのですが、
 ほぼ毎日の病院通いと一人減った事での家業の負担増から、
 どうしてもパソコンと向き合う気分になれなかったです。
  今も正直ちょっと、カードワースやれる気力はなかったり…。
  おかげで物語不足のあまりうっかり購入した携帯ゲーム機で
 ちまちま現実逃避、もといファンタジーに触れてます。
 ねっころがりながらやれるのは偉大だなぁ…。
 
  ま、そんな現状はさておいて。

  幕間、多分割と意表をつく流れになったかな、と思います。
  スランプを自分流に解釈した結果、
 レベルが上がったせいでサラ達が割と有能、というか
 本来書きたかった普通の冒険者のどたばたが書きづらく…
 かといってサラ達が今更色々失敗するのも嫌だ!と
 書きたいものの折り合いがつかなくなるのが原因かな、と。
  なので、普通の冒険者が苦労する話、から
 普通の冒険者なのに看板になっちゃってがんばる話、に
 方向性を変えてみようと思いまして。
  これで上手く動くようになればいいのですが…。

  新キャラにあれっと思った方がいるかもしれませんが、
 夫人は前に出したサジタリスのお仲間です。
 彼らは有能な冒険者でサラ達が来た時から長らく看板でした。
  大きな壁の後を引き継ぐ事が彼女達に出来るでしょうか?
  出来なかったらどうしよう。
  ちなみに元々書けるなら書こうって気分で作ったキャラ達で、
 彼らのテーマは色々傷を負った人の再生、でした。
  月夜の宴とか色々書きたいイベントはあったんだよなぁ…。

  暴走戦車のほうはその場で作ったオリジナルですが、
 サラ達以上にどたばたしそうな人達ですね。
  きっと裸で依頼人の前に飛び出しちゃったり、
 いきなりキャラの一人が記憶喪失になったり、
 かと思ったら犯人として捕まってその時の記憶があやふやだったり、
 突然退屈な状況に切れて北の戦争やってる都市に出かけたり、
 娘さんに言われてちっちゃくてまんまるで可愛らしいものとってきたり、
 親父が断りかけた依頼を受けて船で倭の国まで買い物に行ったり、
 アッチャラでペッサーなアッチャラペッサーだったり、
 うっかりがんばりすぎて戦場の狼と呼ばれたりしたんだと思います。
 (全部分かるかなっ) 

  まぁ、リアルがこんな事になっちゃって色々と不安ですが、
 書き始めたからには最後まで書ければいいなぁと思います。
  またお待たせするかもしれませんが、
 どうか気長にサラ達を待ってくだされば幸いです。

 追記

  Leeffesさんが、新しくリプレイを書かれ始めたそうです。
  新人さんの登場に、今後がとっても楽しみになってます。
  リンクありがとうございました。期待してます。がんばってください。
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