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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
碧海の夢
2014-03-23 Sun 02:34


※今回の話は、宿屋≪狼の隠れ家≫へようこそ!のLeeffes様の
 金狼の牙と碧の街3を受けて書かせていただきました。
 完結おめでとうございます。
 そして半年もお待たせして申し訳ありませんでした。

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  その光景は、かつて見た夢の形に似ていた。
  陽の光に照らし出されてきらきらと輝く水面。
  時折あがる水しぶきは遠く近くと揺らいで、
 波打ち際にあるものを時に飲み込み、時に吐き出す。  
  いつか、愛剣を飲み込んだときのように。

  しかし、水面を見つめる青年の目に悪夢の残滓は残っていない。
  愚直なまでに真っ直ぐに竿を構え、
 それをしならせてはまた遠くへと針を飛ばす。
  並みの剣術家では立ち入る事の出来ない心の入り口に一歩足を踏み入れながら、
 武術の鍛錬のようにそんな素振りをただ淡々と繰り返し、時が経つのを待つ。

  潮が引いたら、急いで食材を集めなければならない。
  今日、とある冒険者が聖海教会で結婚式を上げる為、
 宿には既に客が集まりつつあるのだ。
  マリスのように式の準備を手伝うには教義への理解もなく、
 サラやハーロのように物見遊山するほどの好奇心もなく、
 リックやセアルのような立ち回りも出来ない彼には
 女将の頼みは渡りに船と言えた。

  ふと、小さく竿が揺れた。
  糸から伝わるその感覚の意味を理解し、
 フィリオンの顔に、あるかなしかの微かな笑みが浮かぶ。  
  食いつくか、逃げられるか、強敵との戦いはすぐそこだった。


 
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 「~~♪」
 
  鼻歌のリズムにあわせぱたぱたとハタキが動く。
  エプロンから見え隠れする品のいい修道服の裾もまた、
 着用者であるマリスの足取りに踊るように揺らめいた。  
  彼女が奏でているのは結婚式でよく使われる曲だ。
 
 「……よく働いてくれる娘さんですこと」
 
  その言葉通り、はたから見れば自分より少し年上のアウロラ司祭に
 顎の下で使われているマリスだったが、
 彼女はむしろ上機嫌で掃除に飾り付けにと走り回っていた。
  
  そもそも、マリス達がアレトゥーザに来ているのは、
 アクートの慰霊祭でマリスの育ての親であるエステルと再会し、 
 一人旅をするには老齢の彼女を心配した為だ。
  エステルは今、助成金を減らされた孤児院を守る為動き回っているらしい。
  最近少しまとまって稼いでいたのもあって、  
 「これからもがんばりますから!」
 と、寄付を仲間に頼み込んだマリスと 
 額の大きさに眉をひそめたエステルの押し付け合いの結果、
 エステルが若い頃に使っていた防護魔法付与の修道服を
 マリスが一着買い取る形で決着がついた。それが今着ている服だ。 
  
 「急な話でどこまでやれるかと思いましたけど。
  ……どうにか形になりましたね」
 
  聖堂を覗いていた二人組と楽しそうに話していた仲間が
 控え室に戻るのを確認し、アウロラは漸く人心地がついたのを感じた。
  それでもなお見回して指先確認していくが、特に落ち度は見られない。
  むしろ、先程のミサでは聖海らしさの強かった聖堂が、
 儀礼的な小物に垂れ幕、清楚な花や飾りを駆使した結果、
 聖北と聖海が共に見守っているのだと確信させる厳かで上品な空間へと
 変身していて、いい仕事したなぁと思ってしまう。
  手伝いのマリス自身がリューンで聖北式にも触れている為、
 アウロラが思っていたよりずっと意思の疎通が楽だったのだ。
 
 「なんだか手馴れていますね」 
 「結婚式の手伝いってこれまでに何度もしてますから。
  人手不足になりやすいんですよね、今の時期って」

  風が安定するこの時期には、聖海教会での結婚式だけではなく
 見栄えのいい大型船上での結婚式も多く行われている。
  特に海洋貿易で成り上がった商人達は自分の実力を見せつける為、
 好きに派手な事が出来るそちらのやり方を好んでいた。
  その中にはより徳の高い司祭を誰が呼ぶか、という競走もあり、
 寄付金確保の為に教会も色々頑張らねばならないのだ。

 「そういえばアウロラ様。
  式が終わった後の小船、もう用意されました?」
 「船?」
 
  司祭が慌てたように手を上げ、アウロラは小首を傾げた。

 「いかん、説明が抜けていたかもしれません」
 「……どういう儀式なのでしょう?」 
 
  マリスがええっと、と目を伏せた。
  聖堂内の気温が急に下がったように感じられる。
  目の前の女史の表情はむしろ静かで、それがやけに怖い。
 
 「式の後、結婚した二人は小船に乗って二人きりで過ごすんです。
  新しい人生での最初の船出、ですね」
 「英雄見たさで人がもう集まり始めてますから、
  何のお披露目もなしだと騒動が起きる可能性も」
 「……とてもとても大変な事に聞こえるんですが」

  アウロラの声が硬さを増し、その唇が噛み締められる。 
  それはある意味で中途半端に聖北色を混ぜた弊害とも言えた。
  内部では連絡済の聖北風の式というのも、民衆には伝わっていないのだ。
  しかし、己のミスに歯噛みするアウロラをよそに聖海の面々は、
 その程度よくある事、と段取りの組み換えを始めていた。  
 
 「じゃあ少し船着場のほうに顔を出してきます」
 「司祭様、一番いい船を借りてきてくださいね!」
 
  影響力の高い司祭が顔を出せば、事はすぐに解決する筈だ。  
  今日の噂は船着場にも流れているはずなので、
 おそらくは向こうも教会の動きを待ち構えているだろう。
  慌しく外出していく司祭の背に頭を下げて、
 アウロラはマリスへと向き直った。
  
 「貴方にもごめんなさい、こちらの不手際でしたね」

  アウロラのすまなそうな顔に、マリスはいえいえと笑う。
  完璧主義者らしいアウロラだが、彼女の仕事量を考えれば
 この程度のミスしか出ていないのはむしろ凄い事だ。
  
 「お気になさらずとも大丈夫ですよ。それに」
 
  今回式の準備を手伝わせてもらったおかげで、
 ここ数日、マリスはとてもとても幸せなのだ。
  
 「おかげさまでいい夢いっぱい見れましたから」
 
  そう言って次の仕事に急ぐマリスの言葉の意味が分からず、
 アウロラは目を瞬かせたのであった。
 

  
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  詩人は謡う、ひそやかに。
  静まり返った者達の期待の視線を浴びながら。
 
  詩人は歌う、高らかに。
  集う者達が陽気に笑う、その声を聞きながら。
 
  言葉は幻想を紡ぎ、人を幻に誘う。
  山へ、海へ、見知らぬ街へ、
  そして時には戦場(いくさば)へ。
 
  今宵というには早すぎる今、日は高く、
  教会での祝い事はまだ続いているだろう。
  とはいえ、飲兵衛達にはその口実こそが重要。
 
  人々はしきりにせがむ。
  金色の狼達が困難を打ち砕く物語を。
 
 
  そして、束の間の空想の中で自らも夢に酔うのだ。
  詩人のリュートに身を委ね杯を合わせて。
   
 


 
 
 
 「ったく、夢見る余裕がある奴はいいよなっ!
  女将さん、あげじゃがの準備完了。次は魚さばいてくるっ!」



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出費:5000(追憶のカソック代。寄付として演出)
合計所持金:8232
入手アイテム:追憶のカソック(落日の村オランジェル)
  
お久しぶりです。環菜です。やっと書きあがりました。
とりあえず語れなかったことをちまちまと。
まず最初にアレトゥーザの習慣とかは完全にこじつけです。
本当に大型船での結婚式がはやってるかは分かりません。
……誰か作ってくれないかな、そういうシナリオ。
でも推理物か盗難事件っぽくなりそうw

どうでもいいこぼれ話①
マリスの見たいい夢はアレトゥーザの結婚式とLeeffes様の結婚式シナリオに
フィリオンとマリス主人公で送り込むのを、かなりの回数繰り返したから。
どうでもいいこぼれ話②
最後の台詞はリックです。彼は夢見てる間もないほど忙しいので。
本当はサラと話すシーンあったけどいつもどおりすぎで却下。
……相変わらずの不憫枠。思いつかなかったら台詞もなかった。
と、長くなりましたが今回はこの辺で。
夢の続きをご覧ください。

追伸:寝る時はちゃんとぬくぬくしてないと
   風邪を引くので気をつけてください。
   てか、喉が痛くて辛いです(涙)。

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  賑やかなお祭り騒ぎも主役達の船出で幕を閉じて、
 杖を片手に腕を組み、サラは大きく伸びをした。
  時刻はもうすぐ夕刻、といった所だ。

 「いい式だったねー」
 
  彼女にとってこの一日はとても有意義なものだった。
  幼い頃に母が夢見るような口調で読み聞かせてくれていた
 アレトゥーザの結婚式をこの目で見る事が出来たし、
 何よりあの年で既に卓越した腕前のミナスと話せたのが大きい。
  知らない街やまだ見ぬ秘境の話が、彼女を次の目標に駆り立てる。
 
 「ハーロ、中央広場で何か食べて帰る? ……ハーロ?」
 
  が、声をかけても返事のない少年にサラは少し慌てる。
  多少無理について来てもらったので機嫌でも悪いのかと心配になったのだ。
 
 「ハーロ? どうしたの?」
 
  ハーロは答えない。目の前で手を振るサラの事も見てはいない。
  彼は先程見てきた光景を何度も頭に思い描く。
  ミナスは精霊使いらしくどこか底知れぬ面があった。
  それを呼びにきた男や、緊張した面持ちで友人の席にいた青年も
 今の彼からは計り知れない実力の持ち主なのは分かった。
  しかし、何より。
 
 「姉ちゃん……きっと、きっとさ」
 
  ハーロから見て、あの新郎の青年は眩しかった。
  セアルの歌によると、その一喝は敵を吹き飛ばし、
 斧を巧みに操って全ての敵を薙ぎ倒してきたそうだが、
 きっとその歌には嘘偽りがない、と思えた。
  足運び一つ見ても彼は強者なのだと分かるのだ。
  
 「英雄ってあんなのなんだよな」
 
  今まで淡い憧憬でしかなかった英雄という言葉。
  その意味が初めて分かったんだ、と語るハーロは、
 サラの目から見てもどんなご馳走が並んだ時よりも楽しそうだった。
    
 「オレ、あんな風に強くなりたいなあ」 
    
  彼の武器一つで成り上がったその人生は、
 大剣一本を武器にするハーロにはとても理解しやすい。
   
 「ううん。絶対なるんだ!」
  
  強く言い切るハーロの言葉を受けてサラは微笑む。
  その言葉には少しの呆れと驚きも感じたが何より強く納得した。
 
 (この子だったらなっちゃうかもなあ)

  勿論今すぐには無理だろう。
  しかし、3年、4年と経験を積めば、今のサラと同じ年には 
 少なくとも豪傑として名を上げてそうな、そんな風采が彼にはある。
  しかし、ハーロが将来の目標を見据えたのはいい事だと思うし、
 彼女としても応援したいのだが。
 
 (その頃の私達はどうなっているかしら?)
  
  無邪気に夢を追うには大人になったのかなぁと、
 西日を背に受けながら、サラは苦く笑った。

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