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ゴブリンの洞窟(前編) 語り:サラ
2010-04-09 Fri 01:42
シナリオ名   :ゴブリンの洞窟
製作者     :齋藤 洋様
入手場所    :本体ダウンロードしたら最初から入ってます


 真っ暗な向こうから抜け出せば、おぼろげにゆがむ視界。
 見上げた先に広がるのは見慣れない天井だった。
 窓の向こうから伝わる雑踏はいつもより煩くて。 
(そういえば、もう家じゃないんだっけ)
 昨日の出来事を思い出す。出会いと、パーティ結成と。

「よし!」

 気合を入れて起き上が…ろうとした視点が急に回った。

************************************

「おはようございまーす!」
「…おはよ、マリス」

 階下に下りると先に起きていたマリスが声をかけてくれた。
 高めの声がずきずきと頭に響く。お願いだから声のトーンを落としてほしい。
 カウンターにいるマリスの隣に腰を落ち着ける。
 が、頭を上げているのが辛くてすぐに突っ伏してしまった。
 木のカウンター、ひんやりしてちょっと気持ちいい…。

「何だか具合悪そう…風邪でもひかれたとか?」
「ちょっと頭が痛いだけ…」

 厨房から出てきたおじさまがそんな私の姿を笑う。

「わはは、思ったとおりだな。血は争えんという事か」

 この人は宿の主人で通称『親父』さん。
 ただ、父さんがこの人の冒険仲間だった縁もあって
 子供の頃に何度も会って可愛がってもらっている身には
 今更親父、なんて呼び辛いんだけどね。
 まして、この人はあの頃から見た目があまり変わってないし。
 この宿はそんな親父さんと『娘さん』と呼ばれる
 ウェイトレスさんできりもりされている。
 ただ、二人の関係や名前を覚悟なく聞き出す事はこの宿ではタブーらしく、
 下手をすると突然狂って襲い掛かってくる事もあるらしい。
 好奇心旺盛な私はそれでも聞いてみた事があるんだけど…
 ダメだ、思い出せないし思い出したくもない。
 あまりの惨劇に思考がブロックされている。

「あの、やっぱり変ですよ。眉間にしわがよってます」 
「気にするな、マリス。サラちゃんは二日酔いなだけだから」
「え?でも、サラさんは昨日お酒殆ど飲んでないでしょう?」 
「そりゃ2杯程度だけどさぁ」

 昨晩は仕事のない宿の先輩方が集まって新人歓迎会をやってくれた。
 私もおつきあいとしてお酒呑んだけど…正直、あの液体は苦手だ。
 一番大事な付き合いは騒がしい仲間達に任せて
 すみっこでちびちびと果汁割りを呑むだけにしておいたのだけど…。
 やっぱり呑むの自体断るべきだったかなぁ。

「仕方ないさ。あいつ…サラちゃんの親父も下戸だからな」
「なるほど…そういう家系なんですね」
「ま、無理して飲ませないほうがいい。あいつと同じなら限度超えると暴れだすぞ」
「へえ、それは見てみたい気もします」
「やめてくれ、頼むから。酒場が壊れちまう…ほらよ」

 おじさまに差し出されたのは蜂蜜と果汁を混ぜた飲み物。
 舌先に伝わる優しい甘さにほっと一息つく。
 ほんの少し頭の痛みがほぐれた気がした。

「他の人達は?」
「ハーロ君は食事を取ってから部屋に戻ってます。
 あとの人はまだ寝てるんだと思いますよ?
 昨日随分遅くまで飲まれてましたから」
「遅くまでってマリスはいつまで飲んでたのよ?戻ってきたの覚えてないや…」
「サラさん、ぐっすりでしたもんね」

 むぅ…少し頬が熱い。変な寝言とかいびきとか大丈夫かな?
 私達は女同士二人で同じ部屋を使う事にしたから
 いつかは慣れなきゃいけないけれど、今は流石に気恥ずかしい。
 ちなみに、男性陣は今日だけは大部屋で雑魚寝している。
 予定より冒険者が増えた上に到着したのが暗くなってからで、
 おまけに一般向けに空けてある部屋に早朝立つ依頼人達が泊まったらしく
 すぐに使える空き部屋がなかったのだ。
 セアルは冒険しなくても歌で稼げるからと優雅に一人部屋を使っていたし
 ハーロが長年使っていた最安値の屋根裏部屋(通称子供部屋)はとにかく狭い。
 まあ、今日の晩からは二人部屋が二つ空けられるそうなので、
 ハーロも今日で子供部屋は卒業、と大喜びで引越しの準備だそうだ。
 それにしても、だ。

「なんでそんなにマリスは元気なのよ。昨日、私よりもたくさん飲んでなかった?」

 改めて明るいところで見るとマリスは艶やかな青い髪がとても綺麗で、
 肌だって日には焼けてるけど色黒っていうよりも健康的って感じ。
 同じ年頃の女の子なのにどうしてこんなに違うのか、ちょっと神様が憎らしくなる。
 そんなマリスは私の見ていた限り、周囲にがんがん呑まされていたほうだ。
 可愛らしい女の子を見たら酔い潰してみたいと思う男は世の中に沢山いるらしい。
 
「私、あまり酔わない体質らしくて。酔う感じってめったになった事がないんですよね」

 羨ましい話だ。特に、二日酔いの頭を抱えた身には。
 朝食にと出されたパンをもそもそと噛み締める。

「まあ、とはいえ、ただ酒は昨日までだ。今日からはみっちり働いてつけは作らないように」
「はい。がんばりましょうね、サラさん」

 念を押すおじさまにガッツポーズをしているマリス。

「もうさんづけじゃなくていいわよ。せっかく仲間になったんだし年もそんなに違わないでしょ」
「うーん。私の育った教会では言葉遣いが悪いって最初徹底的にしごかれたんですよ。
 もう癖みたいなものですから、気にならないなら気にしないで下さると助かります」

 そんな風に私達が話している間にもおじさまは仕事中。
 古くなった張り紙などを整理し、新しいものを張り出している。
 あとで見ておかなきゃ、と思っていたらおじさまがその中の一枚を手によってきた。

「話してるところをすまんが、サラちゃんはゴブリンは見た事あるか?」
「ありますよ」
「倒した事は?」
「1匹ですけど…一応」
「ふむ…まあハーロ達もいるしやれるかな。
 ゴブリン退治の依頼がきてたんだが引き受けてみないか?」

************************************

【ゴブリンとは下級の妖魔である。
 緑色の皮膜状の皮膚に覆われた蛙に似た外見を持つ。
 日光を嫌う夜行性の生き物で、
 洞窟や迷宮などに十数匹の集団で棲息する。
 時にはゴブリンシャーマンやゴブリンロードといった
 上位種に率いられている事もある。
 その性分は極めて邪悪であり、
 古代から人間との諍いが絶えない。
 彼らの最大の武器はいかなる悪条件でも生き延びる
 その生命力の強さと繁殖力の強さである】

「この繁殖力の強さが曲者なのよね。
 倒しても気がついたらまた住み着いてるって感じで。
 だからゴブリン退治ってのは冒険者にとってはありふれた依頼である。
 以上、説明終了」

 ちょっと声がかすれてる。どうも長くしゃべりすぎたようだ。
 持参した水袋から一口だけ水を飲む。
 この水袋は居合わせた先輩から持たされたものだ。
 余裕で日帰りできる森とはいえ今日は随分と天気がいいから
 道のりによっては熱中症になるかもしれない、と。
 あと、もしもに備えた保存食の干し肉なども渡されてある。
 流石にこれは必要ないとは思うけど、先輩方の知恵には感心する。
 準備を怠らない事が長く生き延びるコツなのだろう。

「そんなものがこの森に潜んでるなんて信じられません」
「あ、それはいえてるかも。ピクニックだったらよかったのにね」

 木漏れ日がさんさんと降り注ぐここはリューン近郊の小さな森。
 狼のような危険な野生動物はおらず、
 地域でも薬草とり等で親しまれている。
 こんなにいいお天気の日には森林浴によさそうな綺麗な森なのに、
 今、この森の奥の洞窟にはゴブリンが住み着いているらしい。
 おじさまに話を持ちかけられた後、
 私達は寝ていた人達を叩き起こして相談し、
 初めての依頼を引き受けた。
 何もしなかったらいつまでも何も始まらないもんね。
 幸い二日酔いに関してはセアルがくれた薬でぴたりと収まった。
 詩人であるほかに薬師としての心得もあるらしい。
 人は見かけによらないって本当だね。

「ゴブリン…どうも想像がつかないです。
 海賊やマーマンなら見た事あるんですけどね…」
「いや、どう考えてもその方が珍しいと思う」

 そう、それが問題だった。
 マリスはこれまでゴブリンを見た事がなかったのだ。
 マリスの故郷はリューンの南東の海上都市アレトゥーザより
 さらに南にある小島でゴブリンはいなかったらしい。
 海かぁ……実はまだ見た事ないから憧れる。
 せっかく旅に出たんだからいつか見てみたいなぁ。
 まあ、そんな訳で私が教科書の丸暗記のような薀蓄を披露しているのである。
 実際、昔読んだモンスター辞典の内容だけどね。勉強は身を助けるわ。

「サラさんはゴブリンって倒した事があるんですよね?手強いんですか?」
「うーん、正直それはよく分からない。あれは…私がハーロくらいの年だった頃だから」
「そんなに前だったんですか?どうしてゴブリンなんて相手にしたんです?」
「あれは…俺の近所のおばさんの畑が何かに荒らされたんだよね」
「そうそう。で、どんな動物か気になったから、罠かけてリックと二人ではりこんでみたのよ。
 音がしたから見に行ったらゴブリンが1匹トラバサミにかかって逃げ損ねててさ…。
 罠のおかげで怪我してたのもあってどうにか倒せたって感じだったかなぁ」

 冒険者になる前、初めて妖魔と対峙した記憶。
 両親が教えてくれた魔法ではじめて敵を倒した。

「サラは殆ど何もしなかっただろ、戦ってたの俺ばっかりじゃん」
「もう、最後はちゃんと魔法の矢、成功したでしょ」

 ああもう。余計な事は思い出さなくていいのに。
 あの時のリックは格好よかったのにどーして今はこうなのかなぁ。
 でもこの体験がなければ、私はいまだに魔術師のはしくれになってなかったかもしれない。
 昔は、魔法が嫌いだった。魔法を覚えたら家を追い出されると思っていたから。
  
「えーっと…まあ、だからね。今の私はあの時よりはちゃんと魔法が使えるけど
 あの時は無我夢中だったからどう比べたらいいか分からないのよ」
「まあ、正直俺もよく覚えてないなぁ。むしろ、サラの父ちゃんのほうが怖かった。
 うちの娘を真夜中に連れ出すとはどういうことだ!!って殴りこみ」

 そういえば、うちの父さんは昔からリックと仲が悪いのだ。
 魔法の修行をサボって遊びにいってたのをリックのせいと思い込んでるらしい。
 過保護なんだよねぇ。どう考えても。

「まあ自警団やあの畑のおばさんには感謝されたからいいじゃない」
「子供にしてはなかなかの冒険ですね。詩人として歌いたくなるかというと別ですが…
 でも、まさか一匹で終わりじゃないでしょう?」
「そうね。1匹いるって事は森でもっと増えてるんじゃないかって自警団が冒険者雇って駆除。
 すべては無事に解決しました。ちゃんちゃん」

 少しおどけて話を締めくくる。
 さっきまでに比べるとマリスの表情も柔らかい。緊張ほぐれてくれたかしら?

「ま。そんなに心配しなくても大丈夫だって、姉ちゃん達。オレ、一人で3体やった事があるし」
「あらあら、ハーロってば頼もしいのね」
「そう。この少年はなんとゴブリンロードまで倒した事があるのです!」
「それはお前が流したデマだ!?」

 セアルさん、どうして言わなくていいことを言うんだろう?
 言われなければ殴られる事もないのに…痛そう。
 と、それまで黙っていた無口なフィリオンが一行を諌めた。

「そろそろ洞窟だ。騒ぐのは辞めたほうがいい…」

************************************

 小さな洞窟の前で、緑色で人型の生き物が1匹大きくあくびをしている。
 警戒心まるっきり0。太陽の出てる時間は眠くて仕方ないのかもね。

「あれがゴブリンだよ。マリス姉ちゃん」

 近くの茂みに隠れてゴブリンをハーロが指さす。

「まだこっちには気付いていないみたいだな…あちらに回り込んで仕留めてこようか?」
「見張りは確実に無力化させたほうがいい。その方が奥の奴らを奇襲に持ち込める」
「失敗するっていうのかよ」
「そうは言っていないが…」

 ああ、なんか険悪になりそうな雰囲気。
 こんなところで喧嘩されたらゴブリン退治どころじゃなくなっちゃうのに。
 
「もう、リックもフィリオンもこの状況で喧嘩しないでよ」
「「喧嘩なんてしてない」」

 まったく、二人して声をそろえて…
 見張りが気を抜いていてよかったが、見つかったらどうするのだろ。

「まあいいから皆黙って任せて。集中するから」

 呼吸を整え、己の中にある魔力と呼ばれるものを知覚する。
 魔術の形式に従い決まった形で魔力を編み上げる。
 
 《貫き徹す光の鏃、輝きを纏い疾く放たれよ》
 
 ここで使うのは【魔法の矢】。
 賢者の搭で教わる魔術の中ではもっとも基本であり、
 その必中性ゆえに多くの魔術師に護身用として愛用される技。
 目の前の空間に、見えざる魔力の矢が形成される。
 そして最後の一言を呟いた。

 《穿て!》

 光よりも早く、魔法の矢はゴブリンの心臓を貫く。
 何がおきたかも分からないままばったりと倒れるゴブリン。
 動かない。
 …動かない。
 死んでいるのだ、と確信する。

「命中、仕留めたわ…まあ、ざっとこんなものよ」

 振り向いてにっこりと笑ってみせる。

「サラ姉ちゃん格好いいー!」
「あの…ハーロ君、あまり騒ぐと見張りを倒した意味がないですから」
「そうそう、ここからが本番ですからね。
 皆さんの作る物語、楽しませていただきましょう」

 はしゃいでくれるハーロとそれを窘めるマリス。
 小声で何かを歌っていたセアルの肩にツバメが飛んできてとまる。
 いつの間に潜っていたのかリックが洞窟から顔を出した。

「分かれ道までいってみたが気付いた様子もなけりゃ罠らしきものもない。
 ただ、東の通路から地鳴りみたいな音がしているな」
「では、いくとしよう」

 率先して洞窟へと足を踏み入れていくフィリオン。
 他の皆もそれに続いていく。
 私は…少しの間、動けなかった。
 無我夢中じゃなくて、私が明確な意思で奪ったゴブリンの命。
 隠してた手の震えが収まるのに、少しだけ時間がかかった。
 早く、慣れなくちゃ。


続く
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