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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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プロローグ・3
2015-10-02 Fri 21:27
 「ゴメン、私にもよく分からないわ」

  あちこちからコーヒーと甘い匂いが漂うカフェの中、 
 ウェイトレスがすまなそうに微笑むのに合わせ
 似たような笑みを浮かべながらも、イブルは内心で嘆息した。
  疲れを見せる仲間達が店先の椅子に座って注文を始めるが、
 彼としてもそれを止める気はもう起きない。
  妖魔退治の完了を自警団に報告した所、
 妖魔を操る呪具を町の近くに仕掛けた犯人探しと言う
 新たな依頼を受けた新米冒険者達だったが、
 聞き込みは早くも暗礁に乗り上げている。
  今までに分かった事と言えば、呪具の正体が
 クドラ教という邪教集団の祭器である事、
 そのクドラ教の特徴として灰色のローブがある事くらいだ。 

 (ああ、カフェの奥が特別室だって情報もあったっけ……どうしろと)

  ちょうどその奥の扉に、赤髪の男が女主人と入っていく。
  それを視界に留めながら、次の手を思案していくイブルだが、
 正直言って状況はかなり厳しい。

 「すみませんが、よく分かりません」
 「クドラ教? さぁな、この町にいるのかい?」 
 「えーと…ゴメンよく分かんない」 
 「サァ、ボクは旅の者だから、この町のことはよく分からないよ」

  こんな言葉はもう飽き飽きだ。
  本音を言えばこの町をよく知る者の協力が欲しい所だが、
 依頼人である自警団は今、連続辻斬り犯を追って町中に散っている。
  何でも、先日その現場を押さえたチームは返り討ちでほぼ全滅、
 唯一の生存者もいまだに生死の境を彷徨っているらしい。
  生死が関わるだけに自警団が次の犯行を警戒するのも当然だし、
 そんな人手不足な状況である故の今回の依頼だ。
  そちらの方面から手を回してもらうのはほぼ無理だろう。
  また、ディーンに頼んでこの町の盗賊ギルドを頼る事も考えたが、
 どうも今のギルドは辻斬りや自警団の動きを警戒しているのか
 入り口を守る当番らしい相手の姿も見えないそうだ。
  だからこそ、ウエイトレスの次の言葉は、彼に新たな活路を与えた。

 「でも、この町の冒険者なら何か知っているかも…… 
  宿の場所を教えるから、後で行ってみたら?」


  ***   ***   ***   ***   ***   

 
  それから暫く後、捜査線上に浮かんだユーリと言う冒険者を追って、
 イブル達は遺跡近くの森まで足を運んでいた。
  今彼が受けている依頼は冒険者の宿の仲介を受けていないらしく、
 宿の主人にも、彼を殴ってでも止めるよう言われている。
  森の中は静まり返り、イブルには何かを待っているようにも思えた。
  近くの動物達の気配を感じない……いや。
  森に慣れているフィアルが、足元の小石を茂みに蹴りこんだ。

 「誰? そこにいるのは!」
  
  その言葉に応じたのか、茂みから男が一人現れる。 

 「テメェらか、俺のことかぎまわっているっていう冒険者は……」

  現れたのは聞き込みの途中でも何度か見かけた青年だった。
  イブルが訊ねたその時は何も知らないと言っていたが、
 こうして現れた以上、どうやらそれは嘘のようだ。 
  だって、本当ならば、
 
 「クライアントからのお達しで、ここでお前らには死んでもらうぜ!」
 
  等とは言い出さないだろう。
  そして、不定形の魔物を三匹けしかけてきた彼は、
 少し離れた場所で高みの見物としゃれ込んでいる。

 「わーん、フィーさまぁ!このこきもちわるいのですよー!?」
 「ベルは離れてなさい。私がやるわ!」 
 
  妹達が騒ぐのを尻目に、イブルは声を上げた。
 
 「スライム型の魔法生物だ!
  落ち着いてやればたいして手強い相手じゃない!」
 
  そして彼はそのまま妹達の援護に回る。
 
 「そうじゃのぉ。一体はわしが貰おうか」
  
  オーギュストが自信満々に片手を挙げた。
  詠唱が進むと同時に、その指先に光り輝く矢が生じていく。
 
 「じゃ、俺らはあっちの一体をがんばろうか」
 
  ディーンが楽しげにトーリを誘うが、

 「必要ない」 
  
  一足飛びに前に出た彼女は、斧を一振りしてスライムを破壊する。
 
 「なんじゃ、出遅れたのぉ」
  
  続いてもう一体。
  輝く光の矢がスライムの核を貫き消滅させ、
 そしてその頃には、兄妹達の戦闘も終わっていた。
 
 「全滅!? マジかよ!」
 
  一瞬で終わった戦闘に、ユーリのニヤニヤ笑いが止まる。
  そんな彼に、フィアルが武器を向けた。
 
 「次はあなたよ、覚悟しなさい!」
 「クソッ!!」
 
  その言葉に躊躇いもせず、ただ悪態をついてユーリは走り出す。 
 
 「待ちなさい!!」 
 
  それを追ってフィアルもまた。   
 
 「フィーさま!!」
 
  幼子が慌てて声を上げるが、森歩きに慣れた彼女は既に茂みの向こうだ。
 
 「俺はあいつの後を追う、オーギュスト達はここに残って周囲の哨戒を頼む!」
 
  そう叫んでイブルも二人の後を追いかける。
  了解、と答えた声は、あの調子では聞こえていないだろう。
  
 「フィーさま、イブルさま、どうかごぶじで」 
 
  主人達に残された少女は不安げな顔でそっと天を仰いだ。


  ***   ***   ***   ***   *** 


  一方その頃。 
 
 「一人で勝手に突っ走るんじゃねえ!」
 「お兄ちゃん!」

  イブルは無事にフィアルに追いついていた。
  双方に手傷はない。どうやらまだお互い出方を伺っていたらしい。
  
 「クソッ!! たかが二人、俺だってやれる!」
 
  しかし、ユーリの強がりも長くは続かない。
  イブルが彼を投げ飛ばし、そこにフィアルからの一撃を喰らう。
  呻きながら起き上がろうとしたユーリを動けなくしたのは、
 首元に添えられたフィアルの剣だった。
 
 「どう? まだやるつもり?」
 「や…やめろ…殺さないでくれ…」
  
  観念した様子のユーリに頷いて、フィアルが剣をしまった。
  
 「よし。それじゃ、ゆっくり話を」
 「気を抜くな! 様子がおかしい!!」
 
  兄の叱責に、フィアルは慌ててユーリを睨みつけた。
  しかしその表情はすぐに崩れ、驚いたように目を見開く。 

 「グッ!! ググ…!」
  
  ユーリは腕を押さえて悶え苦しんでいた。
  額に脂汗を浮かべながら激しく呻き声を上げる。  
 
 「あ、あの野郎……俺に呪いをかけてやがったのか!!」
 
  腕から腸へ、更に上へ、と体の中で何かが自分を喰い漁っている。
  もう時間がない事は、ユーリ自身にもよく分かった。

 「ち、ちょっと、大丈夫?」
 「聞け…俺のクライアントは…クドラのパラディン…死の騎士…」
 
  さっきまで強気そのもので自分を攻撃していた少女は、
 今は敵だった彼の容態に不安げな表情を見せていた。
  しかし、彼女の唱える癒しの呪文は、既にユーリには届かない。
  そしてそんな彼女を庇うように、彼女によく似た男が剣を抜く。
  多分彼は気付いているのだ。ユーリの意識が消えた時、何が起こるか。
 
 「あ、赤髪、ブラウンの瞳…長身で、見た目は温厚そうな…」
 
  もう、彼らに託す位しか彼に出来る事はない。
  それでも、心臓を食われる痛みにユーリは慄いた。

 「く、クソォォ!!! し、死にたくない…イヤダ…タ…タスケ…テ……」
 
  言葉の最後の方では既に、ユーリは見るも無残な姿になっていた。
  しかし、その姿すらも内側から滲み出てきた魔法生物に溶かされていく。
  最後に上がった悲鳴はむしろ、獣の咆哮のような響き。
  そして、それは途中から断末魔に変わった。  
 
 
  ***   ***   ***   ***   *** 
  
 
  ユーリの最後を看取って呆然となっていたフィアルを
 待ち構えていたのは尊敬する兄の拳骨だった。 

 「一人で飛び出して、万が一の事があったらどうするんだ!」  
 「やだな。お兄ちゃんったら心配性よ。
  私は森の住人よ? だからこんな森、一人でも」
 
  平気だよ? と言う呟きは、兄が森の木を叩く音に打ち消された。
 
 「いや、言わせて貰う。
  森の民だろうと今のお前はあくまで新米冒険者だ。
  今回は一人で受けてるわけじゃない。パーティを組んでるんだぞ?
  だから、皆と協力して物事に当たらなきゃいけない。
  でも、お前はなんでも自分がって言うばかりだ。
  そんな事じゃ冒険者として生きていくのは」
 
  不可能だ、と切って捨てようとしたイブルを止めたのは、
 それを遮るように呟く妹の冷ややかな言葉だった。  
 
 「なら、やめるわ。別になりたくて来た訳じゃないもの」
 「え?」
 
  いつもは青空の印象を与えるフィアルの瞳が、
 まるで雲が出たかのように翳り暗い色を灯す。
  
 「お父さんからも言われてるわ。
  お兄ちゃんがいいって言えばいつでも帰ってきていいよって。
  私はあの森の巫女なのよ。森の中で暮らせれば十分幸せ。
  なのにどうして? どうして街で勉強しなきゃいけないの?
  お兄ちゃんだって言ってたでしょ? 旅に出る時村を頼むって。
  だから、私がんばったのよ? 危ない事も。皆が嫌がる事も。
  出来る事は何でも一人でやってきたわ。
  ……どうしてお兄ちゃんは村の外の人々を信頼できるの?
  信頼できない人に頼むなら自分で動いた方がましでしょう?」
 
  話している間に感情が激してきたのか、
 フィアルは一方的に兄へと言葉をぶつける。   

 「……村でもそうなのか?」
 「うん。……だって分からない。私には分からないよ。
  誰かにやらせて、その人が怪我したらどうするの?
  それなら私が動いた方が安心だわ。
  私やお兄ちゃん位に出来る人なんて早々いないもの」
 
  ここに来てイブルはようやく扱い辛いという父の言葉の意味を悟った。
  どんなに個人の能力が高くても、社会は一人で動かせない事を、
 冒険者になった事でイブルはよく理解している。
  けれど、幼い身で期待を背負った妹にはそれが理解出来ないのだろう。  
  本来巫女は社で祈りながら、村の者の相談を聞くのが務めだが、
 しかしそれはあくまで、誰かに仕事を振り分ける役だ。
  薬草不足を巫女に相談したら自分で採りに行きました、なんて
 そんな事ではおいそれと相談も出来やしない。
  ましてや、彼女は未来の村長でもある大事な身の上なのだ。
  このまま問題を放置して村の為に働かせるより、
 能力的には稀代の巫女を一時期手放してでも
 性格改善を望むのは、親心的にも仕方がない事かもしれない。
 
 (……ある意味、俺のせいなのか)
 
  そもそも、イブルが自分勝手に村を出て行かなければ、
 任されていた筈の重荷を、彼女は巫女の肩書きの上に背負っていたのだ。
  ならば、彼女の為に出来る事をするのは、兄としての勤めだと思う。
  だが、しかし。
 
 (ちゃんと手紙でも説明してくれよ父さん!
  うっかり俺がOKだしてたらどうするんだよ! 
  てか、フィアルが死んだらどうするんだよ! 冒険者なめるな!) 
 
  脳内で父を怒鳴りつけてしまうのは、仕方のない事だろう。
  されど、フィアルには無言の彼が何を思っているか分からない。
  よく考えれば、二人っきりで話すのは再会して初めてなのだ。
  ベルがいては零せない泣き言なども混ぜ、
 いつの間にか彼女は涙目になりながら必死で兄に縋っていた。
  
 「お兄ちゃん。どうせなら一緒に森に帰りましょう?  
  どうして冒険者になったかは分からないけど、
 お父さんもきっと心配してるわ。
  それに、お兄ちゃんがいれば私も安心できるの……」
 
  そして、彼女は上目遣いになって兄を見上げる。
 
 「ね?」
 
  秀麗でどこか似通った顔立ちの絵になる二人が、
 ただお互いの事だけを瞳に写している。
  特にフィアルは、大抵の人間がきっとその頼みを断れないと思える
 庇護欲や独占欲を刺激する空気を纏っていた。
  そんな彼女から視線を逸らし、兄はその頭を撫でた。
  
 「無意識にドライアドの力、借りてるぞ。
  そんな事じゃOKなんて到底出せないよ」
 「あれ?」
 
  フィアルがきょろきょろと見回すと、
 美しい木の精霊が微笑みながら森の空気に溶けるように消えた。
  どうやらさっきイブルに殴られた木に宿っていた精霊が、
 意趣返しのつもりかフィアルに力を送り込んでいたらしい。
 
 「よく分かった。まだまだ自己研鑽が足りないんだろう。
  森で本気を出したら村が危ないかもって手加減してないか?」
 「それは、ないとはいえない、かな……?」
 「だろ? 勉強が必要ってのは、間違いないんじゃないかな?
  冒険者なら精霊術の修行も出来るし、
  リューンには精霊宮っていうその為の施設もある」 
  
  イブルは思いついた事を並べ立てる。
  正直言えば、本気で修行などと考えた訳ではない。
  ただ、たとえ危険な冒険者の世界に引きずり込んだとしても、
 今手を離せばきっとその方が後悔する事になると、そんな予感がしたのだ。
 
 「そう……まあ、お兄ちゃんがそう言うなら。
  でも、約束よ。いつかは絶対一緒に帰ろうね」 
 「気が向いたら、な。にしても、相変わらずの甘えん坊だな」
 
  イブルがフィアルの頭をくしゃりと撫でた。
 
 「もう、子供扱いしないでよぉ。もうすぐ16歳なんだからね!」
 「はいはい、悪かった悪かった」
 
  そんな感じで昔のようにじゃれあいながら、   
 二人は待ちくたびれていた仲間達と合流したのだった。 

続く
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