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蔓草の病・1
2015-10-17 Sat 22:07
シナリオ名  :蔓草の病
製作者    :野澤様
入手場所   :ギルド

  その日、スラムの一角の静寂は破られた。

 「チューッ!」

  逃げ場がないと判断したのか灰色頭の大きなネズミが、
 小さなネズミ達を従えて、冒険者達へと突進してくる。

 「このっ!」

  足元を駆け回るそれに、真っ白な網を振りかざす少女。
  その姿は見かけが秀麗なだけに鬼気迫るといっても過言ではない
 彼女は大きなネズミに狙いを定め、素早く振り下ろし、

 「獲った!」 
 
  と、見事巨大ネズミをその手中に収めた。
  ……勿論、網の中ではあるが。
  それを預かったサンプル入れに押し込んで、
 呆然と見ているだけだった仲間達の方に視線を送る。

 「トーリちゃん、格好いいー!」
 「……何よ? この位普通でしょ」

  トーリはそう言って、そっぽを向いた。

  なお、このトーリの大活躍により、今回の依頼である
 『熱病の原因を探る為のサンプル採集』は
 追加報酬が出るほどの大成功だった。
  そして【星の道標】にもう一つの依頼が舞い込んだのである。



************************************



  リューンから北東に、片道三日ほど歩いた森に抱かれる村。
  それが今回の目的地、ハイレンの村である。
  
 「高い薬を扱ってるだけあってなかなかに小奇麗な村じゃのう」
 
  まるで貴族の別荘のようなしっかりした家が並ぶ通りに、
 オーギュストが感心したように呟いた。 
  この村で『リグノス』という薬を購入してくるのが今回の依頼だ。
  いつもなら医者が自分で行くのだが、今は熱病の関係もあって忙しく、
 しかし一日5000spの薬が二日分で10000spともなれば
 金額が大きすぎて持ち逃げの恐れもある。
  つまり、それだけ信頼された、という事なのだろう。  
  
 (さっさと払ってしまいたいなぁ……)

  財布の中身が重たいのが何とも不安なイブルであったが、
 その望みはあっけなく絶たれた。
  
 「残念ながら、今はお売りすることができないのですよ」
 
  邸宅と言ってもいい一際大きな家に住む
 恰幅のいい初老の村長は、申し訳なさそうに唇をゆがめた。
  
 「というと?」

  交渉役に立ったイブルの問いかけに、彼は困ったように首を傾げ

 「余分な在庫がない、と言えば分かっていただけますか?
  例年であればお渡しするだけの在庫があるはずなのですが、
  今年は少し問題がありまして。
  吸血蔦が大量発生してとても太刀打ちできないのです……」
 
  そう言われても、冒険者達もすごすご帰る訳にはいかない。
  結果、森の魔物退治も引き受ける羽目になるイブル達なのだった。



************************************



  (((((ブーーーン!)))))

 「うぁぁ!」 
 
  イブルが突然ばったりと崩れ落ちた。
 
 「ま……か……」 
 「お、おにいちゃああん!」
 「いや、フィーちゃんイブルは麻痺してるだけだよ」
 
  蜂の巣の周辺は、今や蜂の羽音が嵐のように積み重なっている。
  森の魔物の活性化の影響か、蜂蜜もろくに取れないとぼやく
 通りすがりの村人の頼みを引き受けたイブル達だが、
 正直後悔してしまうほどの蜂の群れに右往左往していた。
 
 「いやいやいやいやこっちきちゃいやなのですー!」
 
  オカリナで眠らせるどころではなくひたすら逃げ回るベル。
 
 「【穿光の矢】!【闇の双刃】!」  
 
  そんな彼女を助けようと老魔術師は呪文を連打する。 
  その老魔術師に針を向けた蜂をトーリのレイピアが貫いた。
  
 「ベル。こっち。ディーンも」
 「はい!!」
 「守ってくれんの? トーリちゃん!」
 「違うわよ」
 「ですよねー。トーリちゃんの為なら喜んで盾になりますよー」
 「がんばって! こっちもお兄ちゃん守るので手一杯なの!
  後ディーンはフィーって呼ぶな!」
 「……(情けない兄ですまん……うう、まだしびれが……)」  
 
  そんな兄妹の状況を、視界の端でとらえたトーリは
 何かを堪えるかのように一瞬唇を噛み締める。
  やがて、まだ若干たどたどしいオカリナが辺り一面に響き、
 忌々しい羽音はひとまず止まったのであった。
 
 
  ***   ***   ***   ***   *** 
 
 
  蜂蜜を村人に届けこの先の難所の情報を得たイブル達だったが
 ほどなく訪れた夕焼けに村への帰還を強いられていた。

 「初めての森を甘く見ては駄目だもの」
 
  と、森育ちのフィアルが主張したのだ。
  成果なく戻った冒険者一行を迎えたのは、
 本日の宿を貸してくれる村長が男やもめと謙遜しながら並べた
 数々のご馳走だった。
  山菜の付け合わせに具沢山のスープ、メインは山鳥のグリル。

 「森の恵みに感謝しなきゃね」
 「かんしゃです!」
 
  故郷と似たような食材に喜ぶ二人とは裏腹に、
 (技術的にはともかく)【星の道標】よりも豪華な夕食にイブルは

 「本当にいいんですか? 部屋を借りるだけでもあり難いのに」
 
 と、いぶかしさを感じていた。
  ただの冒険者へあまりにもいたせりつくせりな気がしたのだ。
  そんな彼の疑念に気付いてか、村長は穏やかな笑みを浮かべ
 
 「この村は薬のお陰で裕福です。この程度はどうってことありませんよ」
 
 と太っ腹な言葉を返す。
  
 「そもそも、今日で魔物退治が片付かなかったのは、
  村民の頼みを聞いてくれたから、とも聞いております。
  戦う力の乏しい我々では、ただの蜂も生死に関わるのです。
  だからこそでしょう。こんなものを彼から預かってますよ」

  村長は卓の傍においていた瓶をイブルに差し出した。
  かなり高級そうな酒の中に、蜂が幾匹か浮かんでいる。

 「ほう、蜂酒か」

  オーギュストが身を乗り出した。
  彼はかなりの酒豪らしく、年齢に似合わぬ量を呑む。
  今も食事は後回しで村長の心尽くしの杯をちびりちびりとやっていた。
  
 「わざわざ開けずともいいですよ。それは彼からのお礼ですから。
  リューンで売ればそれなりの金額にはなるでしょう。
  それに同じものなら我が家にも残っていますし」
 「ほぉ、それは本当か。話によると体に良いらしいの」
 「ええ。普段は一人で呑むのですが、
  よかったらお付き合いしていただけませんか?」 
 「いいですとも!」
 
  意気投合する老人達の姿にイブルは考えるのが馬鹿らしくなり、
  
 「オーギュストは明日の仕事に支障が出ない程度にしてくれよ」

 と声をかけるにとどめておいた。 


  その夜。トーリは夢を見た。
  襲い掛かる何かから、大切な人を守っているのだ。
  けれど、振り返ってみれば、彼らは皆既に死相を浮かべていた。
  助けようと、まだ間に合うと、走って走って走って走って
  ようやく追いついたその体は砂になり手から零れ落ちていく――

続く
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