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蔓草の病・2
2015-10-17 Sat 22:08
  次の日。
  オムレツなどやはり豪華な食事をありがたくいただいたイブル達は
 先日村人と話した場所のさらに奥へと足を踏み入れていた。
 「よく調べながら行きましょう。
  確か、魔物が住む場所の手前に毒花の群生地があるんでしょ。
  蕾を潰さないようにしないとね」
 
  昨日村人が教えてくれた情報を、小休止中にフィアルが纏めると、
 何に気付いたのかちょこちょことベルが前へと駆け出した。

 「フィーさまぁ、いいものみつけました! どくにはこれです!」
  
  ボールをくわえた子犬のような得意満面で少女が差し出したのは、
 一見どこにでもありそうな植物の葉だった。

 「流石ベルは目がいいわねえ。えらいえらい」
 「フィーさまくすぐったいですー!」
 「ほぅ、コカの葉か。よぅ見つけたの」

  ベルを撫で回すフィアルからコカの葉を取り上げて
 オーギュストが感心の声を上げた。
  この葉は、成分を煮詰めれば麻薬の原料ともなるが、
 少量をうまく使えば毒を消す作用を持っている。
  その為、冒険中にこれを見つければとりあえず確保する冒険者は多い。
  
 「あと、このさきにうぃーどがよんひきいますけどどうしますか?」
 
  本来森の妖精であるベルは森林ではディーンより反応が早くなる。
  ウィードは動く雑草といった風情の、植物系では最弱の魔物だ。
 
 「倒さなくていいの? 一応森の魔物でしょ」
 
  トーリが軽く首をかしげて持参した長い松明に触れた。
  火をあまり撒き散らさない形のその大松明は、
 今朝村長から預かった村人達が森に入る時の護身道具らしい。
  それを少し不快そうに眺めたフィアルは、唇をとがらせる。
  
 「……私は迂回するべきだと思うわ。
  生きる為にどうしようもないって状況なら別だけど、
  人間の勝手で森を荒らすのも何だか申し訳ないし。
  それにわざわざ戦ってかじられるのもあまり楽しくないでしょ」
 「まあ、そうだな。疲れるのも馬鹿らしい。
  出来れば今日で終わらせてしまいたいしな」
  
  なんだかんだで甘いのか、イブルも妹の言葉を肯定し、
 ウィードのいる辺りを迂回した一行だったが、
 何かに気付いたベルが、フィアルのスカートを引っ張った。 
   
 「あの、フィーさま。みちのさきからこえがします。だれかよんでる?」
 「そうなのか? 誰かが困ってるのかな?」
 「ベルが言うなら確かよ。お兄ちゃん、行ってみましょ」
 
  根がお人よしの兄妹達が、そちらへと駆け出した。
 
 「また依頼そっちのけで……人がよすぎるでしょ」
 
  仏頂面になりながら、トーリもそちらを追いかけていく。 
  一方、半信半疑なオーギュストは森歩きに慣れないのもあって
 マイペースを崩さぬよう、慎重に足を進めた。
  同じようにのんびりとした足取りのディーンへと
 首を捻って問いかける。 

 「ディーン。おぬし、声なんて聞こえておるか?」
 「言われてみればそんな気もする、けど。爺さんみたいな声だしね。
  女性ならとりあえず駆けつけるけどまあ別にいいかなぁって」
 「お主、筋金入りじゃの。ある意味凄いのかもしれんが」

  すっかり呆れた顔のオーギュストを無視して、
 ディーンはやれやれと肩をすくめてぼやく。

 「なんか俺、今日もボスまで行きつかない気がしてきたよ」

  そして、その通りになった。 



************************************



 「本日はリード爺さんとエットを助けて貰ったばかりか、
  エットの毒まで抜いてもらったそうで。
  おかげ様で村の宝である幼子を失わずにすみました。
  夕食後にリード爺さんもお礼を言いに来るらしいですが、
  村民の命を助けて頂いた事、私からも御礼申し上げます」

  せめてもの感謝を、と言う村長の心尽くしからか、
 その晩の食事は、去勢鳥のローストと根菜のシチューという
 昨日よりもさらに豪華なものだった。
  夕食後には昼間出会って迷子探しを手伝ったリードと言う老人に、
 この辺りで採れる薬草の種類とちょっとしたアイテムを頂き、
 老人達はそのまま酒宴へと洒落込む。
  だが、そんな老人会のノリに付き合いきれない若者達は、       
 早々に借りている部屋に下がった。


  女性陣達が借りているその部屋は大きな窓から森が一望できた。
  既に寝入ったベルの為にランプを消してはいるものの、
 カーテンの隙間から差し込む月光は窓際のベッドでは眩しい位だ。
  何でも、この部屋は取引相手の商人を泊める為の部屋らしく、
 その窓に嵌っているのも木ではなく希少な硝子の一枚板で、
 そこにもまたこの村の裕福さを感じ、トーリは溜息をついた。
  羨ましがるばかりの自分の浅ましさが嫌になる。
  
 「溜息をつくと幸せが逃げるらしいわよ」
 
  今日は雰囲気に酔ったのか、何故かベルが酔っ払っていた。
  そんな彼女が眠りにつくまで優しげな表情で傍にいたフィアルが
 そのトーリの溜息を聞きとがめ、小声で注意する。

 「そうらしいわね」
 
  ぼんやりと生返事をしたトーリに、フィアルは顔をしかめた。 
  そのまま、つかつかと窓際の彼女の顔を覗き込む。
 
 「ねえ、トーリ。私は森の巫女……いわば聖職者なのよ」
 
  突然妙な事を言い出したフィアルに、
 トーリは今目が覚めたかのように視線を向けた。
  窓から差し込む月明かりが、彼女の髪を輝かせている。
  しかしそれは、雲が明暗を作るからか月の光というよりも、
 木の葉の隙間から顔を覗かせる木漏れ日の輝きに似ていた。

 「それがどうかしたの?」
 「こっちの風習だと、告解? だっけ。
  確か悪い事を打ち明けるのがあるでしょう?
  トーリもそれ、私にやってみなさい」
 
  トーリは目を瞬かせた。
  上から目線の少女の物言いはともかく、
 言ってる内容がまるで理解できなかったのだ。
 
 「何で?」
 「分からない人ね。悩みがあるなら聞くって事よ」
 
  フィアルはトーリの隣に腰掛けた。
  冒険者の宿とは比べ物にならないほど柔らかいベッドは、
 多少乱暴に座っても大した音も立てない。
  本当にお金持ちだな、と場違いな感想がトーリの脳裏によぎる。
  
 「あのね、ここに来て同じ部屋で寝泊りして二日も立つのよ。
  道中の野営時もそうだったけど、その間毎晩夜泣きされたら
  何がそんなに悲しいのかなって思って当然でしょう?」
 「……」
 「声を殺して泣く位なら誰かに打ち明けて楽になりなさいよ。
  心配しなくても人に言いふらすほど、腐ってはいないわ。
  だって、私は森の民だもの」
 
  彼女は綺麗だなと改めてトーリは思う。
  言葉だけとれば上から目線で高慢な物言いではあるが、
 その目はとても優しい色だ。
  先日蜂に襲われた時、兄を庇えた彼女が羨ましかった。
  そう打ち明けたら、この子はどう思うだろう? 

  しかし、赤い髪の娘はその髪を揺らして首を振る。
  今、この身に起こった話をして何になるというのか。
  人のいい彼女達なら、何らかの知恵を授けてくれるかもしれない。
  けれど、フィアルの優しさを素直に受け入れられるほど、
 今のトーリに余裕はなかった。
   
 「……今はまだ、ごめん」
 「そう。別に無理にとは言わないけど」
 
  軽く首を傾げて頷いたフィアルは、
 何事もなかったように自分のベッドに戻る。
   
 「気持ち、嬉しかったわ。ありがとう、フィアル」
 
  その後姿に声をかけると、トーリはそのままベッドに横になった。
  昨日までよりはほんの少し孤独感が薄れている。 
  これならば、今日は悪い夢は見ないかもしれない。
  一方。 
   
 (女の子同士ならフィーって呼んでもいいのにな)

  フィアルは言い出すタイミングがなかったな、と少し後悔する。 
  幼い頃から敬われながら育ったフィアル。
  その彼女には愛称で呼んでくれるような友達が殆どいない。
  同年代の相手と対等に会話出来るのは、意外と楽しいと、
 最近彼女は少しだけ、思ってしまったりもするのだ。
 
 (ま、ディーンみたいな人からはゴメンだけどね!)


  ***   ***   ***   ***   *** 


  そんなフィアルの感想を知ってか知らずか。
  二人の会話を窓の外で盗み聞きしていたディーンは、
 寝息しか聞こえなくなった室内につまらなそうな表情を浮かべた。
  
 「会話だけ聞いてれば百合の花っぽいよなぁ……
  本当なら俺が付け入るつもりだったんだけど。先越されたな」
 
  空に銀円が浮かぶ中、彼の影はそこにない。
  そして、すぐ傍の硝子窓にも。
  もっとも、それに気付いた彼が細く息を吐くと、
 月の光はそれが束の間の幻だったかのように揺らめいて、
 彼の姿と影を映し出したのだが。
  その場を離れ、まるで何かに浮かれるように
 村外れまで来た青年は、ふと森へと視線を向ける。
  
 「ああ……今日の月、本当に綺麗だ」

  不思議な事に森は紅い色に染まっていた。 
  それは人の暮らす領域を示す境界の外から見た月と同じ色だ。
  そして、そう呟く彼の瞳もまた、鮮血のような紅い色。
   
  今宵は紅し夜。
  魔の者がざわめく宴の夜である。

続く
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