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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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ある日の小話・2
2015-12-11 Fri 00:03
  よく晴れたある日。  

 「ちょっとちょっとちょっとちょっとーー!」
 
  聞き覚えのある声と階段をどたばたと上がって来る音に、
 セアルはハーブの水やりをする手を止めた。
  最近は宿の部屋がやや余って困っているという事で、
 男性陣は一人一部屋になっている。
  で、彼は植物の為に日当たりの良い奥の部屋を頂いたのだが
 どうやら足音はここにまっすぐ向かっているようだ。 

 (はて……心当たりは、ありますが)

  しかしどう言いくるめようかなと考えている内に、
 ばたんと扉が勢いよく開かれて、彼女は飛び込んできた。

 「セアル! ちょっとこれってどう言う事よ!」

  風で飛ばされていたらしい、泥に汚れた楽譜を抱えて。


  ***   ***   ***   ***   *** 


 「落ちてたわ。これ、この前のロスウェルを元にした話だよね」
 
  ぱさっと楽譜をつき返し、サラは頬を膨らます。

 「そうですよ」
 「そうですよって、なんでまた……」
 「サラさん、私は吟遊詩人です。
  そこに物語があるならば歌うのが宿命なんですよ」
 「でもじゃあなんで私がどや顔してポーカー勝負に勝ってるの?
  あれはアッシュさんのおかげでしょ。
  捏造とかはハーロとの件で懲りたんじゃなかったの?」
 「いやだなぁ、捏造だなんて。脚色といってください」

  まあ、脚色部分は英雄譚を得意とするセアルの好みだが、
 彼が詩を作ろうと思ったのは彼なりの賛辞の表れでもあった。  
  大げさかもしれないが、命の危機にあったにもかかわらず、
 あの場面にいたのは幸運だったと思うほど、
 セアルはサラの決断と勝利に感銘を受けていた。
  アッシュの反応で大体の事に気づいていれば尚更である。 

 「それにちゃんと違う人を主人公にしてるんじゃないですか。
  ……主役がハーロじゃなければ耐久弾き語りもなしですしね」
 「もう! 反省の色がない!」 
 「いえいえ。そんな事はないですけど……しかしねえ」

  セアルは困ったように頬をかいた。 

 「……今回のやり方は世間には隠しておいた方がいいんですよ。
  種がばれては、盗賊ギルドのやり方は使えなくなります。
  誰かが矢面に立つのが望ましいんです」
 「でも、今ロスウェルに関する噂って例の事件が中心でしょ。
  わざわざ表沙汰にしなくてもいつか風化するんじゃないの?」 

 (く、そこに気付かれましたか)

  ハーロと違い、そう易々と誤魔化されてくれないサラに、
 セアルは少しだけ、彼女の評価を改めた。
  日頃の言動はどこか抜けている時もあるが、一応彼女も魔術師だ。
  基本的な頭の回転自体はそう悪くない。
  まあ、そこに情が絡めば、流されやすいのが難点だが。

 「それは確かにそうですが、先に言った通り
  詩人は歌いたくなったら作って歌う生き物ですから。
  それより、何がそんなに不満なんです?」
 「え……それはやっぱり、私の名前で変な事してほしくないし?」
 「しかし、サラさんまだ私達のPT名登録してませんよね?
  その結果サラ一行とか呼ばれてるんですが、
  そこは恥ずかしくはないんですか?」
 「そ、それは言わないで! 考えないようにしてるんだから!」
 「決めちゃえばいいじゃないですか。さっさと」
 「駄目なの! 名前は宝物だから大事に決めないと!」

  気にしている辺りをつけば、あからさまな話題逸らしに
 彼女はあっさりと引っかかった。
  一族の決まりの事もあり名前に関しては妙に神経質なサラには
 そんな軽い気持ちで名付けをする事が出来ないのだ。

 (こういう所は親子なんですかねえ。
  正直あの『氷の理性』がどうやってこんな子を育てたのか、
  想像すら出来ないんですけど……)

  思えば知り合った頃のシエンスにもまだ苗字はなかった。
  依頼を手伝ったのが縁で親父達にマリアと共に連れ込まれ、
 彼が電撃引退するまでの数ヶ月間、同じこの宿で過ごしたが
 名前などへの妙なこだわりや酒への弱さ以外には、
 せいぜい同じ黒髪位しか似ている所を思いつけない。
  まあ、そんな事はどうでもいいのだが。
 
 「でも、それでもう一年以上が経ってますよ?
  だんだんハーロの歌で広めた効果もなくなってますから、
  これからはサラ一行の時代ですね。
  だったら多少尾ひれがついても仕方ないじゃないですか」
 「だからって、率先して尾ひれつけに行かないで!!」

  へらへらと語るセアルに、サラはとうとう感情を爆発させた。
   
       
  結局。 
  最近吟遊詩人の間に流行っている勇者物語にあやかって
 固有名詞も性別も出さず、ただ幾多ある物語の中の一つのように、
 例の話を作ったセアルだったが。

 「ちょっとセアル!
  なんか最近あれお前だろうってのが増えたんだけど!」

  これまでがあるだけにとばっちりを食らったのはハーロだった。
  その度に背後で謝罪のポーズを取っているサラがいたのだが、
 それはまた別の話である。



************************************



  黄昏時。
  ハーロとマリスは二人並んで宿への道を歩いていた。 
  孤児院の畑を拡張する為、力自慢のハーロに手伝いを頼んだのだ。
   
 「おかげでかなり作業がはかどりました。ハーロ君のおかげですね」
 「ま、たまには奉仕活動もしないとね。あそことは縁もあるし」
 
  そんな言葉に、マリスは昼間ハーロが院長に
 随分と親しげに声をかけられていたのを思い出す。
 
 「そういえば孤児院の院長様とお知り合いだったんですか?」
 「まあ一応? 正直覚えられてるとは思わなかったけど。
  オレ、三日だけあそこにいたんだよ。
  親が亡くなった後、とりあえずって感じでさ。
  ただ、どうにも合わなくて逃げ出したんだ」
 「合わない、ですか?」

  しかし、信心深いハーロに教会主導の孤児院が合わないだろうか?
  首を傾げるマリスに、ハーロははははと笑って見せた。

 「だって、武器とか持っちゃ駄目って言われるもん」
 「それは当たり前ですよ……」

  マリスは苦笑いを浮かべてしまった。
  礼拝に来ているとかならともかく、孤児院のような場所で
 聖騎士など特別な存在以外が殺生の道具を持つ必要はない。
 
 「……でも、あの時のオレにはこれ位しかなかったんだ。
  親の形見って言えそうな物は」
 
  そう言ってハーロは大剣をかちゃりと鳴らしてみせる。
  その姿に、ふと懐かしい影が重なった気がして、修道女は瞬きをした。

 「ああ……そうですね」

  マリスの孤児仲間にもそういう子がいた。
  漁師だった父を失い、その銛を暫くの間抱きしめていた子が。 
  その時の彼の姿と、想像に過ぎないハーロの幼い頃が、
 不思議と重なって見えた。

 「だから、取り上げられそうになった時、つい逃げちゃった」

  この時の事が心にあるのか、以降彼が大剣を手放す事は殆どない。
  幸い亡き父の残したそれは、その頑丈さと重たさが
 驚異的な怪力を持つハーロにぴったりで、特に問題もなかった。
  勿論、今の仲間達と組むようになってからは
 魔法の掛かった武器でないと対処できない場面も増えたが
 普通の相手なら軽く掠めるだけで吹き飛ぶのだ。  
  だから、ハーロにしてみれば、空腹の方がよほど恐ろしい。
  ……思えばあの時もそうだった。

 「で、オレ、とにかく宿に戻ってきたんだ。
  だけど怒られるだろうって宿に入れなくて。
  でも、とにかく腹は減るしさ。行き場もないし。
  親父が気付いて普通に宿に入れてくれて、
  シチューとパンくれてさ。もうマジ泣きしちゃったよ」
 「……そうでしたか。それから冒険者に?」

  修道女の娘が紡ぐ静かな言葉に、ハーロはこくりと頷く。
  あの頃の彼は自分でもただの厄介者だったと思う。
  けれど、親父は逃げてきた事に関しては一言も怒らず、
 孤児院とうまく話をつけてくれた。
  娘は、時折こっそりと彼の好きなお菓子を作って分けてくれた。
  両親が人好きする性格だったからか、他の冒険者も優しかった。

 「怖く、ありませんでしたか?」
 「なんで?」
 
  ハーロは心底不思議な事を聞かれた、と言うように目を丸くした。
  その反応に、マリスは深い溜息をつく。
 
 「……そうですか。まあ、ハーロ君ならそうですよねぇ」

  良くも悪くも、彼は怖いもの知らずだ。時に羨ましくなるほどに。
  意味が分からない、と見下ろしてくるハーロに、
 出会ったばかりの頃は自分より背が低かったな、と
 ふとそんな事を思い出し、マリスは穏やかに微笑む。
  その美しくも優しい顔は、どこか教会にある聖母の像を思わせた。 
  
 「それにしても、ハーロ君もすっかり大きくなって……
  いつの間にか追い抜かれてしまいましたね。
  撫でてあげようにも、そのうち届かなくなりそう」
 「ま、昔と比べて一杯食べてるからね。
  リック兄ちゃんにはそろそろ追いつくかな?
  出来ればフィリオン兄ちゃん位まで伸びればいいけど」
 「フィリオン様ですか……あの人は特別高いからどうでしょう?」
 
  一瞬、物憂げな表情を浮かべたマリス。
 
 「姉ちゃん、どうかした? 今なんか」
 「いえいえいいえ。特になんでもないですよ」

  慌ててぶんぶんと首を振り、ほんの少しだけ足を速める。
  宿はもう目の前だから、別におかしい行動ではない。
  それでもハーロの前を行くのは出来れば隠しておきたいから。
  今浮かべている顔を見せたくないからだ。

 (言えるわけないじゃないですか……。
  なんだか昨日からサラさんとフィリオン様が仲良しで
  それが羨ましい、だなんて)

  どうやらここ最近二人で術式の研究をしているらしいが、
 魔術についての難しい会話に割って入れない彼女には
 暗号のような事を親しげに話しているようにしか見えない。

 (どちらの事も大好きなのに……本当に浅ましいですね)

  フィリオン様が幸せならそれでよかった筈なのに、と
 自分でもままならない気持ちを持て余しながら、
 マリスは【星の道標】の扉を開けた。
  いつもの笑顔を浮かべるよう、こっそり気合を入れながら。



************************************


  ある晩の【星の道標】。
  フィリオンは階下のカウンターに座っていた。
  眼を閉じ微動だにせぬ彼は、一見眠っているようにも見えるが、
 忘れた頃にその手が、酒のグラスを口元に運びその唇を湿らせている。
  既に厨房の火も落とされて、親父や娘も休んでしまった。
  明かりは細く開けられた雨戸から差し込む月の光だけ。
  それすらもカウンターまでは届かず、白い線を酒場に伸ばす。
  と、音もなく入り口の扉が開いた。
  夜分だからか見事なまでに音を消して入ってきた青年は、
 未だに起きていた仲間に少し面倒そうな顔を浮かべた。    

 「起きてたのか」
 「ああ」
 「今、いいか?」
 「ああ。……頼んでいた件だろう? 遅くなったのは」
 「……まぁな。っと、とりあえず酒でも出すか。後ツマミツマミ」
 
  厨房に入りなれている青年は勝手知ったると言った様子で
 明かりも火も使わずに上等なツマミを作ってしまう。
  その手際の良さに、フィリオンは表情に出さず驚いた。

 「大したものだが……勝手にいいのか?」
 「いいんだよ。いつもこき使われてるんだから」
 
  フィリオンの分をカウンター越しに渡して、
 己の分を彼から二つ離れた席に置いたリックは、
 やはりどこからか引っ張り出してきた酒をグラスに注いだ。
  そうして、杯を打ち合わせる事もせず、無言で酒を口にする。
  やがて、リックの方が先に沈黙を破った。

 「……とりあえずお前の気にしてた外交官の死に事件性はなし。
  確かに急だけど……まあ、心労でもたまってたんじゃね」
 「そうか……」

  フィリオンは小さく黙祷を捧げた。
  あの外交官は、リューンで唯一彼の背景を知る同郷人だった。  
  慣れない世界に飛び立つ彼を最後まで心配してくれていた。
  まだ老人というには若すぎる死を密かに怪しんでいたのだが、
 後ろ暗い何かが動いてではない事に、フィリオンはただ安堵する。 
  そんな彼へ感情を見せずにちらりと視線を送ったリックは、
 もう一つ頼まれていた話を終わらせることにした。

 「で、例の国……お前の故郷だけど、可もなく不可もなく」
 「……」
 「と言えればよかったんだけどな」
 「……」
 「新王ってのが先代を超えようと躍起になってて、
  画期的過ぎてついていけない政策を幾つも出してるそうだ」 
 「……」
 「ま、効果が全くない訳じゃないけど、
  それが体感出来るようになるには十数年以上はかかるらしい。
  俺にはよく分からないからただの受け売りだけどさ。
  知り合い曰く、今のままならただの暗君。
  しかし運よくそれまでに革命や天災が起こらなければ
  名君と呼ばれる日も来るかもしれない、だってさ」
 「……そうか」
 
  聞き終えたフィリオンの顔には何の表情も浮かばない。
  勿論内心で思う所はあるが、動揺を顔に出さないのは彼の癖だ。
  冷静に、どんな事を言われてもそれで済ませてしまうから、
 気位が高い、馬鹿にしていると相手に思わせる諸刃の剣だが。
 
 「じゃ、そういう事で。俺は寝る」
 「……聞かないのか?」 
 「正直この件にそこまで興味ねえもん。
  同情が欲しいならサラに……いや、マリスのが適任か。お前なら」
 「……すまん」

  返事の代わりに後ろ手に手をふり、
 足音を立てずに階段を登っていくリックに、
 フィリオンはそっと頭を下げる。
  おそらくリックもどこかの段階で自分の正体には気付いた筈だ。
  その上で、ただの仲間として扱ってくれるのなら、彼には有難い。
  もっとも。

 (仲間の隠し事にわざわざすすんで首突っ込むかよ)

  と、リックは本気で思っている。
  ……多分、彼自身はそれ程他人に期待していない。
  ましてや今頃は夢の中の幼馴染が、人の問題に首を突っ込んで
 何度も痛い目を見ているのを十年以上も見続けているのだ。
  その姿は良くも悪くも反面教師である。

 (まあ、それでも懲りないからあいつは面白いんだけどさ) 
 
 
  一方。
  フィリオンはただ黄昏ていた。
  今を気に入っているからか、新王を呪う心は沸いてこないが。

 (……人は、変わるものなのだな)

  新王の行っている改革は、昔誰よりも彼自身が応援していた。
  二人で協力すればきっと出来るのだと信じ込んで。
  しかし、世界に出て見れば見えなかったものが見えてくる。
  かの国は王子時代の彼が危惧した通り確かに時代遅れの弱小国だ。
  それでも。
  リューンと比べれば小さく感じるが、首都で暮らしていた彼は、
 普通に暮らしている国民達を見る事があまりにも少なかった。
  彼らこそが真の意味で国を支えていたというのに。

 (民達にも暮らしがあるのを私は気付いていなかった)

  だから、今のフィリオンにはかつての親友を支持する事が出来ない。
 
 (どんなに行く末を心配しても出来る事など何もない、だが……)

  それでも考えて考えて、けれど何も出来ない無力な青年は
 心の痛みを呑み込むかのように残った酒を呷った。


  
************************************


こんばんは、環菜です。
12月、なんかがんがん更新してますよ!
という訳で、ある日の小話その2が出来上がりました。
1の内心で決めてたテーマが《悩み事》なのですが、
2のテーマは……《過去の思い出》かな。
なんかそれっぽい話がちょこちょこ出てきたので……。
今回の閑話については時系列がやや前後したりもします。
その辺の順番に関しては、多分次の話で大体分かりそうです。
既に許可はとれたので、頑張ってかけたらいいなと思います。
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