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夏の日の一休み
2016-01-08 Fri 23:48
7月のその日は午後から急に気温が上がった。
猛暑、といってもいいお天気だ。
往来の人々も熱気にイライラしたような様子で足早に日陰を探す。
そんな中、一人のシスターがどこか途方にくれたように歩いていた。

「行きは迷わなかったのにどうしてなのでしょう……?」

真夏だと言うのに長袖の敬虔な衣装でも隠し切れないたおやかな立ち姿は、
まるで深窓の令嬢と言った風情の麗しい少女である。
陽光に、フードから毀れた銀の髪が季節外れのオーロラのように艶やかに煌くが、
本人は暑さに大分参っているようで、顔色もあまり良くない。

(とにかく、どなたかに道を尋ねなければ)

道の先に上る陽炎の中にカップルらしい二人連れを見つけ、ややよろける足で近付く。
背の高い青年と、半袖だが自分と似通った衣装を纏う女性だ。

「申し訳ありま……」

ふわりと視界が揺れた。
軽く礼をするだけのつもりだった体が、地面に近付いていく。
それを誰かの腕が抱きとめた。
しかし、礼を言おうにももう目が開けられなかった。

「あ、ルナさんじゃないですか。
 これは……熱中症ですね。どこかで休ませてあげないと」
「……涼める場所か」
「はい、じゃあ、そこの喫茶店で一休みしましょう。
 もうちょっと頑張ってくださいね」

暗闇に包まれるルナに届いたのは、そんなどこか聞き覚えのある声だった。


  ***   ***   ***   ***   *** 


「暑さをあまり甘く見てはいけませんよ」

意識を取り戻したルナを迎えたのは冷たい水と見知った相手のお小言だった。
彼女は、時折ルナが顔を出す教会に手伝いに来るマリスという女性だ。
もう一人はフィリオン。冒険者である彼女の仲間らしい。
彼は口数が少ないらしく、喋っているのはマリスばかりだった。
しかし、彼女の言葉は煩い、と言う感じではない。
むしろ彼女の故郷は今日のリューンよりなお暑くなるからと、
暑さの恐怖やルナの知らなかった涼のとり方を、丁寧に教えてくれる。

「それは知りませんでした」
「案外効くんですよ。後こういうのは知ってますか?」

庶民の知恵、とも言うべきそれらは、お嬢様のルナが知らないものが多い。
これまでマリスと話したのは雑務の合間の挨拶や雑談程度だったが
どうやら彼女はわりと周囲の世話を焼くタイプのようで、
ルナのコップが減ってくるとすぐに新しい水を注いでくれた。

「それでは中座してすまないが……二人はもう暫く休んでいくといい」

と、紅茶を飲み終わった青年は、一人先に立ち上がると
修理に出した武器を受け取りにいくと出て行ってしまった。
残されたのは二人の修道女である。
ルナはやや申し訳なさそうに、頭を下げる。

「すいません、デートのお邪魔をして……」

その言葉に、マリスは思わず咽そうになった。
こほっと咳き込みながら、荒い息をつく。

「あー……別に私達はそういう関係じゃないのですよ」
「そう、ですか? でも……」

ルナの目から見て二人はとても信頼しあっているように見えた。
というより、マリスの表情に覚えがある、と言うべきか。

「ルナさんのほうこそ、最近親しい方が出来たと噂されていますよ」

マリスの反撃に、ルナの白い頬が淡い赤に染まる。
今思えば自分も彼を見る時に似たような顔をしている気がしたのだ。
その反応の分かりやすさにマリスは微笑む。
彼女の方が少し年上だからか、初々しいなぁと思ってしまう。

「ルナさんは可愛らしいからきっとうまくいきますよ。頑張って下さいね」
「そ、そうでしょうか……気付いてもらえな……いえ、その」

自分の言葉に慌てる少女はやはり可愛らしくて、マリスはくすくすと笑った。
お相手の人はどうやら朴念仁な所があるようだが、
こんな子をふるなら相当に見る目がない。がんばれ!と心の中で囁く。

(何だか不思議な縁ですね)

元々今日出かけたのはどうにかして仲間のサラ達の背中を押したいと考えたから。
何かきっかけでもないとあの二人は友達で終わってしまわないかと、
娘さんとよく話しているから余計に心配なのである。
出来るならサラ達には幸せになって欲しいのだ。
恋愛脳と言われそうだが、その気持ちは嘘じゃない。
なのに、自分の方がハーロに背中を押されたばかりか、
今はこうして、別の人と恋バナをしている。
それが不思議で、だからこそ彼女も、サラ達も皆うまく行けばいいと思う。

(まあ、私はフィリオン様のお傍にいられるだけで幸せですけど)

だからこそ、余計に。


  ***   ***   ***   ***   *** 


その後、マリス達は互いの冒険や仲間の話をしたりしてルナの回復を待った。
ちょうど同時期にロスウェルにいたのが発覚して、
当事者の一人だったルナがやや言葉に詰まったシーンもあったが、
言い難い事を無理して聞くようなマリスでもなかった為、
いつもと違う相手とのガールズトークはなかなか楽しい時間だった。

「そろそろ歩けそうですか?」
「あ、もう夕方ですね。大丈夫です、すっかり長居しちゃって」

本当ならもっと早くに帰る予定だったのだ。
仲間達に心配をかけていそうで、急がないと、とルナは慌てて立ち上がった。
会計を済ませ飛び出た夕暮れ時の街は、
雲が出てきたせいか昼間よりは過ごしやすく、
少しふらつく頭も、この気温なら我慢できる。

「じゃ、宿まで送りましょうか」
「もう大丈夫ですよ。この位」
「駄目ですよ。そもそも迷子だったんでしょう?」
「そ、そうでした……じゃあ、大通りまで」

しかし、ルナの言葉を遮るように、彼女の耳に飛び込んでくる声。

「ルナ!」

"月歌を紡ぐ者たち"のリーダーでありルナの想い人である彼が、そこにいた。
しかしコヨーテは今日は宿の手伝いをしている筈だ。
そもそも、暑いのが苦手な彼がこんな日に外にいるのに驚き、ルナは目を瞬かせた。

「コヨーテ? どうしてここが」
「さっき、宿に背の高い人が来て……簡単にだけど事情を聞いたから」
「ああ、フィリオン様ですね、きっと。あの方なら確かにそうしそうです」

自己紹介の時に宿の名前を聞いたから調べたのだろう、と想い人の気遣いに感心するマリス。
話を聞いて慌てて出てきたらしいコヨーテに、ルナは申し訳なさそうに頭を下げる。

「心配かけてすいません」
「本当に。ルナはすぐに無理をするから」

それをコヨーテには言われたくありません、とルナは言おうとした。
しかし、言えない。コヨーテに抱き上げられたから。
いわゆるお姫様抱っこ、である。

「こ、コヨーテ、あの、本当に大丈夫ですから!」

(ひゃあああ、い、いっぱい汗かいちゃってるのにぃ!
 待って、ねえお願い待ってくださいってば!)

正常な思考を保てずに、ただ脳内で繰り返される言葉。
恥ずかしさで頭に熱が登っていく。
それをやっぱり無理をしてたか……と呟いている青年。顔が近い。

「それじゃお世話になりました」
「いえいえ。こちらこそ楽しかったです。
 次は会えるとすれば……東聖堂の奉仕日かしら?
 まあ、私は仕事が入らなければ、ですけど。
 とにかく、お大事になさって。……頑張って下さいね」

蒼髪のシスターが楚々と笑って踵を返す。
道案内は確かに必要なくなっただろうが、ルナは見た。
彼女が去り際にとても微笑ましそうな笑みを浮かべたのを。

(あの、そこで見捨てないで!この状況を何とか!)

去っていく女性を名残惜しげに見つめるルナを、
もう一度抱えなおしてコヨーテも歩き出した。
通りすがりの人々にも見られているのに、
彼は気付いていないんだろうか?

「本当に熱いな。帰ったら医者に来て貰うか?」
「……誰のせいだと思ってるんですか」

ルナは少し不貞腐れて、少しひんやりとした彼の体に頬を預けた。



************************************

今回のお話はMoonNight-Waltz.の"月歌を紡ぐ者たち"から、
ルナさんとコヨーテさんをお借りしています。
既に数日過ぎてしまいましたが周摩さん、お誕生日おめでとう!
という訳でせめてものお祝いにでコラボさせていただきました。
ルナさんの可愛らしさが少しでも出ていればいいなと思います。
あ、ちなみにマリスさん東聖堂にはいけなかったです。
依頼で郊外で野菜の手入れしてましたので。
なお、7月7日東聖堂で起こる騒ぎについては春秋村道の駅のothersをご覧下さい。
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