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冷え切った部屋(後編) 語り:ハーロ
2010-04-13 Tue 02:42
 結局…オレ達は間に合わなかった。
 そうだ、どんなに急いだって間に合わない事はある。
 その日付が3週間も前では、当たり前だ。
 そんなの、分かりすぎるほど分かってるけど…。
「化け物が何でこんなとこに?!」
「俺が知るか!」

 ぴちゃぴちゃという妙な音を頼りに進んだ暗い下水道。
 オレ達を待っていたのは人型の異形だった。
 何かを抱えたまま汚れた眼球をこちらに向ける。
  
「…グール…爪の毒に気をつけて!」  

 後ろからサラ姉ちゃんが叫ぶ。
 グール…確か、アンデッドの一種。
 でも、オレはそんなの無視して突進していた。
 奴が抱えてるものが何なのか、気がついたから。
 白っぽくて細長い……人の腕。
 所々黒くなった血と白い骨を見え隠れさせている。
 枯れ枝のような細い指にきらりと何かが輝いた。
 指輪だ。

「こんっの野郎!!」
「ハーロ?!」
「おいこら無茶すんな!」

 言葉を無視して武器を振るう。
 大剣が腹を貫いたのにこちらを嘲笑うグール。
 その手が俺の体へと伸びる。
 はっとしたけれど、回避は間に合わなかった。
 脇腹に束の間痛みが走り、すぐに何も感じなくなる。
 体が重く、足元が急にぐらついて立っていられない。
 紗がかかったように暗い視界の中、
 黄ばんだ乱杭歯が近づいてくるのが妙にスローに見えた。

(喰われる!?)

 けれど、その歯との距離が急に開いた。
 誰かが引っ張ってくれたらしい。
 触った感触も分からないけど…ほんの少し暖かい。

「任せた」

 フィリオン兄ちゃんの声。足音が敵の方に戻っていく。

「マリスさんは魔法で他の方を。麻痺したようなら教えてください」 
「分かりました!」

 武器の音。荒々しい足音。魔法を詠唱する声。何も出来ないオレ。

「…っくしょー…」
「はいはい、麻痺毒は面倒なんですからさっさと手当てされて下さいね」

 押しのけてやりたいのに体が動かない。
 セアルの薬はいつもならかなり沁みる。なのに何も感じない。

(本当に大丈夫なのかよ?)

 セアルのほうを見ようとした、ら、見えた。
 鈍くだけれど、体が動いた。
 どうやら薬は確かに効いていたらしい。
 少しずつ痺れが抜けていく。
 首を戦闘の方に向けるとどうやら佳境に入ってるようだ。
 サラ姉ちゃんの魔法の矢がグールの腕を射抜き、
 すかさず踏み込んだリック兄ちゃんが斧を振るって断ち切った。
 反対側の腕は、フィリオン兄ちゃんの剣に押さえられている。

「このまま、終わって、たまるかよ」

 ようやく力の戻った腕でセアルを押しやった。あいつも、もう止めない。 
 転がっていた大剣を拾い上げ、もう一度突撃する。
 全ての力を切っ先に込めた渾身の一撃。
 胴に風穴を開けられた化け物が吼える。
 けれど、半ば断ち切られた胴体をなおも震わせながらも、
 グールにはもうやり返す事はできなかった。
 だって、今の奴に、やり返す為の腕はなかったんだから。

************************************

 それはもう、肉の塊だった。
 左腕はグールの傍らに転がり、右腕はとうになくなっている。
 胸もえぐれたようになっていて、内臓が垣間見えている。
 ただ、長い髪の毛だけがそれが女性だった事を物語っていた。
 オレ達の中にはいないけれど繊細な奴がいたら吐いていただろう。
 呆けていたサラ姉ちゃんの視線が彷徨い、やがて女性の躯の前で止まる。

「…この人…埋葬してあげないと…」 
「でも、俺達で運ぶのか?ここの外は街中だぞ」
「だって…このままここに放置するのはかわいそうよ。
 依頼人さんにだって…なんて説明するの?」 
「気持ちは分かるが…葬儀屋以外が棺桶を運んでたら不審者だろう」
「感情的には別にかまいません。
 でも、その前にやるべき事を忘れてやいませんか?」
「その前に…? あっ」

 遺骸の傍らでマリス姉ちゃんが小さく祈り始める。

「葬送の…? 今更じゃないか?」
「いや…それでも聖別されてない躯は」

 誰かが息を飲む。
 どこかでちゅくっと、舌なめずりの音がした。

「やっと気がつきましたか」

 マリス姉ちゃんを押しのけたセアルが女性の胸に短剣を突き立てる。
 その瞬間、死体の目がかっと見開かれた!!

『GRYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 人の声とは思えない、身の毛もよだつ叫び声!
 誰かがひっと声を上げる。
 それともこれはオレの声なのだろうか?
 思考が止まっていてよく分からない。
 とはいえそれも束の間だった。
 セアルが再度刃を突き立てると、恐ろしいほどの絶叫はぱったりと途絶えた。



 暫く、誰も動かなかった。

「今のは…何がどうなったんですか…?」

 ようやく衝撃から目覚めたのか、マリス姉ちゃんが体を震わせた。

「グールに殺されたらグールになる…伝説だと思ってた…」

 呆然としたサラ姉ちゃんが返す。

「まあそれが本当かは私も知りませんけど…
 こんな死に方をしたのなら化けてでたくもなるでしょうよ」

 女性の胸を貫いたナイフを引き抜きながら、淡々と言うセアル。

「腕がなくてよかったですね」

 座り込むマリス姉ちゃんにそう声をかける。  
 確かに、もし女性に腕がついたままなら
 マリス姉ちゃんは爪に襲われていただろう。

「…貴方達には観察と警戒心というものが足りない。
 甘い事を考える前にもっと気をつけて下さいね。
 アンデッド退治もいい収入源なんですから」 

 そのままつかつかと、落ちていた腕を拾い上げた。

「形見でも渡して…あとは依頼人に任せましょう」

 引き抜かれた指輪がサラ姉ちゃんの手に落ちた。
 誰もが黙り込んだままだ。
 皆が何を考えてるのか、よく分からない。
 特に。

「お前、どうして…?」

 いつも変なことばかり言ってるのに。
  
「こうなることは予測済みでしたから。
 娼婦の失踪で幸せなものなんて早々ありませんよ」

 親父さんだって気付いてた。

「そうじゃない。そうじゃなくて!
 何で、そんなに冷静なんだよ」

 すると、セアルは振り向いた。

「そんなの冒険者だからに決まってるでしょう」

 呆れたような、冷たい声。そして、一つため息をつく。

「これが神ならぬ私達の限界です」


************************************  


 その夜。

「綺麗になったかな?」
「大丈夫じゃないか。丈夫そうだな、その武器は」
「兄ちゃんのはちゃんと見てもらった方がいいね。細いし」
「特に乱暴に使ったわけじゃないが、あの手、意外と怪力だったな…」

 同室のフィリオン兄ちゃんと寝る前の武器の手入れ中。
 グールを切り裂いてしまったものだから、
 どうも汚くなってそうでお互いに手が抜けない。 
 仕方がないから翌日武器屋をたずねる事にする。

「終わったなら、明かりを消すぞ」
「あー。ねぇ…ちょっと聞いていいかな」 
「…昼間の事か」
「うん…あ、依頼じゃなくてさ。
 兄ちゃんは冒険者ってなんだと思う?」
「なんだ、藪から棒に?」 
「ほら、昼間セアルがいってたじゃん。冒険者だからって」

 手入れが終わった剣を眺める。
 そこに写ってるのはオレ…冒険者のハーロ。
 その筈だったけど…。

「オレ、頭が悪いからかな?
 どうしてもよく分かんないんだよ。
 冒険者だから冷静でいられるってどういう訳だ?」

 彼は、すぐには答えをかえしてくれなかった。
 最近思うのだけど、彼は特に無口なわけじゃないと思う。
 ただ、しゃべる時に1テンポ遅れるからそう感じるだけで。
 違う国の言葉を翻訳する為じゃないかって親父はいってた。

「そう言いたかった訳ではないと思う。
 冷静さは資質の問題だからな。
 お前や彼女達にあの場面で冷静でいろってのは無理がある」
「えっ、それ…さりげなく酷くない?」
「別に非難するつもりでいったわけじゃないが…
 多分、彼は折り合いをつけろと言いたかったんじゃないか」
「折り合い?」
「世の中には神の御手ではないと、どうしようもない事がある。
 別にそれを悲しむな、という訳じゃないが…
 ただの人間ならともかく冒険者がそのたびに悩んでいたら
 依頼達成前に時間も命も足りなくなるだろう」
「ごめん…それはなんとなく分かるんだけどやっぱりよく…」
「分からないか。なら…こういえば伝わるか?
 冒険者なら常に次にやるべき事を…最善の手を考えろ、と」

 それ以上、兄ちゃんは何も教えてくれなかった。 
 ノックの音と共にサラ姉ちゃんが訪れたからだ。
 依頼料が無事に貰えた事と、明日は休みにするという連絡だった。
 それっきり話を再開する事もなく、オレを睡魔が襲い始める。
 うつらうつらする意識の中に兄ちゃんの言葉が響く。 

「最善、かぁ…」
  

++++++++++++++++++++++++++++++++++++  


 俺が本当の意味で冒険者になったのはきっとあの依頼からだ。

 …それまで、セアル以外の皆は冒険にどこか甘い夢を持っていた。
 特に、俺がそうだった。
 比較的安全で簡単な仕事を譲って貰ってばかりなのにも気づかず、
 「オレは冒険者だ」って言い張ってたんだから。
 …子供だったんだ。あの頃は。言い訳だけど。
 そんな成功を重ねていれば、いつか身を立てられるって信じてた。
 自分達じゃどうにもならない事があるなんて、気付いていなかったんだ。
 そんな「オレ」にとってあの時の依頼は、ある意味で初めての挫折だった。
 だけど…そのお陰で、今のテンハーロ・グレスがいる。
 あれから十年。今は遠い旅の空だけど、俺はきっと忘れない。
 皆と過ごした沢山の思い出と、ある女性の悲しい結末の事を。


************************************


シナリオ名   :冷え切った部屋
製作者     :サークル毒餃子(R、white-wings、釈迦釈迦チキン、ハル、ピノ)の皆様
入手場所 :ベクター

依頼料:+700SP
合計所持金:3100SP
入手アイテム:傷薬→荷物袋へ
クーポン:冷え切った部屋(+1)

 凄く雰囲気の出てるシナリオです。なんていうか…怖い。
どんどん陰鬱となっていく空気の構成が凄いなと思います。
ちなみに今回書きたいなぁとおもったテーマは「挫折」です。
冒険者なんてそんないい事ばかりじゃないだろうし、
そろそろ現実を悟るべきだろう、でも失敗はさせたくない…と
それっぽい結果のシナリオを探して回りました。
成長版ハーロに関しては…子供の所だけだとうまく収まらなくて
なんかふってわいたので使ってみました。
でも、未来視点って夢オチとかと共に禁じ手の一つだよね、これ…。
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