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ヒバリ村の救出劇(前編) 語り:フィリオン
2010-05-13 Thu 18:26
シナリオ名 :ヒバリ村の救出劇
製作者 :伊礼様
入手場所 :Vector


「僕達でこの国の弱き人々を守っていくんだ。手伝ってくれるね」
 
 幼き日の幻は、だからこそどこまでも優しかった。
 城の鐘楼から見下ろしたのは、湖に抱かれるようにして広がる美しい街。
 いつかこの国を統べる彼の剣となる為に自分は生まれてきたのだと、
 無邪気に信じられたあの頃。
 …時間がこの関係を変えてしまうなど思いもしなかった。
   
「宝物庫の警備責任者としてお前には責任を取ってもらおう。
 己が力で宝珠を取り戻してみせよ。それまでこの国に戻る事は許さぬ」
 
 言葉の裏に宿った愉悦には気付かないふりをして、
 最後の希望を抱いて思い出の場所に向かってみれば。
  
「お前の哀れみを、我が甘んじて受け続けたとでも思っていたのか?」
 
 高き鐘楼からまばゆいほどに煌いて湖に落ちる銀の光。
 それはかつて目の前の相手に捧げた筈の剣。
 あの時、剣を追ったならあの方は幸せだったのだろうか?
 
 終わりはいつも自分の声での問いかけ。
  
 行き場をなくした剣が主に最後に望まれた事。
 それも果たすことが出来ず、何が騎士なのだろうか? と。
  
  
************************************
 
 
 室内の暗さから、まだ夜である事を知った。
 少し、背中が痛い。それに相変わらず違和感を覚える。
 かつての居室とは比べ物にならないほど硬い寝台と、
 シーツからかすかに漂う藁草の匂い。
 不快ではないのだが、なかなか慣れないものだ。 
 それに現実を思い出す。自分がまたあの夢を見ていた事も。
 嫌な…実に嫌な夢だった。だが。
 
(あれが全て夢であったならどれだけ良かったことか)
 
 否定したくてたまらないのは、全てが現実に起こった事だからだ。 
 私が国を出てから早半年、宝珠の手掛かりは何も掴めていない。
 捕まえた盗賊が拷問の末にリューンの事を喋ったらしいが、
 私は謹慎中であった為にそれを直接聞いた訳ではなかった。
 全ては旅立つ時に、陛下から聞かされた事。
 あるいは…偽情報に踊らされたのだと認めれば私は楽になるのだろう。
 けれど、王への疑惑の念を騎士としての自分が否定する。

(騎士、か…今更だな)

 主の敵を討つ剣、弱き者を護る盾となる事を誓う…
 その誓いの言葉は今も、己の内に流れているのに、
 その時に願った事からは、現実はあまりにもかけ離れてしまった。 
 そもそも真実を見出すにしても国に戻る事を許されないこの身。
 これからどうすべきか、ただ不安と焦燥だけが募っていく。
 最近悪夢ばかり見るのは、そのせいでもあるのだろう。 
 気分転換に水でも飲もうと水筒に手を伸ばす。
     
「冷めていても構わないなら特製ハーブティーがありますよ」
 
 身を起こしたのを見計らったかのように、小さな声が届く。
 いつから起きていたのか、セアルが窓際の椅子に座っていた。
 野営で使うカップを取り出し、水筒から飲み物を注いでいる。
 
「どうぞ」
 
 仲間に差し出されたものを断る必要もない。
 そっと含むと、名も知らぬ香草の爽やかな香りが口の中に広がった。
 確かに冷めてしまっているものの飲みやすく清涼感がある。
 一杯飲み終わる頃には、ささくれだっていた心も不思議と落ち着いていた。
 美味しいです、そう言おうとして少し悩む。
 こちらの国の言葉では…、
 
「…美味い」 
「それはよかった」
  
 それっきり、二人とも黙り込んだ。
 そういえば私はセアルとはあまり会話をした事がない。
 彼はこちらの存在を忘れたかのように、窓の方を見ている。
 私が目覚める前からそうしていたのだろうか?
 軽く周囲を見回すと、他の仲間はまだ熟睡しているようだった。
 とはいえ女性陣は部屋の奥、宿の亭主が好意で貸してくれた衝立の向こうだが。
 端から狼のジャック達が3匹で寄り添って寝ているのが見え、微笑ましい。
 と、何やらむにゃむにゃ言いながら隣の寝台で寝ていたハーロが毛布を蹴飛ばした。
 6人と3匹が集まってる部屋は、体温だけでもぬくもってはいるが、 
 風邪を引くとよくないから毛布をかけ直してやる。
 同時に入り込む冷たい冬の風。
 セアルが閉めていた窓を細く開け、外を見ていた。
 入り込んでくるかすかな星月の光。
 
「どうした?」
「…どうもさっきから村の中があわただしいんですよ。それと…」
 
 窓辺に近づくと、先ほどまで気付かなかった物が見えてくる。
 寝静まっていた村に灯っていくランプの明かり。
 村の人達の小さなざわめき。そして…足音。
 
「お客さんが来るようですね」 
 
 窓の隙間から、二人組が宿へ駆け込んでくるのが垣間見えた。

 
************************************


「あの子は、マリアはこの村の宝です。どうか、どうか…!」
 
 悲痛な声を上げながら、村長は深々と頭を下げる。
 その隣では泣き腫らして目を赤くした女性が、
 今も涙を浮かべながら懇願の眼差しを送っていた。
 
「ゴブリンが子供をさらったなんて…」
 
 サラが唇をかみ締めている。
 私達はリューンへの帰りにこの村に宿を取ったのだが、
 想定外の事態に巻き込まれてしまっていた。
 最近この村を悩ませていた妖魔を見てみたい、と
 興味本位で外に出てしまった村の子供が誘拐されたという。
 
「大変だわ。皆、急いで準備して」
「待ってください。400でそんな危険な依頼を引き受けるんですか?」
「でも、だったら今この近くで私達以外に誰がその子を助けだせるの?」
 
 このヒバリ村はとても小さな村だ。
 かつて鉱山の村として栄えたらしく、宿の部屋は大きかったが、
 鉱山が閉じられた今は旅人も少なく、今日も他に泊り客もいない。
 当然の事ながら冒険者の宿なんてものもなかった。
 今、この付近で荒事に長けた人間は、ここにいる我々だけだろう。
 
「あの、報酬が足りないならこれを!」
 
 母親が首につけていた首飾りを差し出した。
 赤い輝石の嵌った、素人目には綺麗な細工に見える。
 
「ジニィ!それはトニーの…」
「構いません!あの子が救われるなら、きっと、きっとあの人も…」
 
 女性は先ほど批判的な発言をしたセアルにその首飾りを押し付けた。
 
「……」
 
 受け取った首飾りを彼はじっと値定めしている。
 
「ちなみに…私が否定したからいかないって思うのは何人なんです?」 
「私はいきます。心配ですもの」
「ま、サラにつき合わされるのはいつもの事だし」
「オレもいく。後味悪くなるじゃん」
「で…」
 
 こちらを見る視線を感じる。
 ちなみに私は剣を腰に差し必要なものを纏めている所だ。
 弱者は守らなければならないし、今はとにかく時間が惜しい。
 
「皆さん人が良過ぎますよ。…いつも私が悪者になるんですから。
 分かりましたよ。これもいりません。400でお仕事しましょう。
 その代わり今回の宿代はただという事で。
 あと…どんな歌が出来ても皆さん止めないでくださいね?」
「…ま、仕方ないかな」
 
 渋々とハーロが承諾する。主な被害者だ。無理もない。
 と、リックが一つ手を上げた。
 
「あ、もう一つ頼んでもいいかな?」
「我々に出来る事ならば」
「じゃ、戻るまでこの二匹を村で預かっていてください。
 狼ですけどよく人に慣れていますし、
 この鈴を鳴らせば大人しくなります。
 餌は干し肉でも与えてくれれば大丈夫です。
 もし俺達が戻らなかったら……処分は任せる事になりますが」
 
 そこで村長が初めて躊躇いの色を見せる。 
 やはり、狼と聞くと荷が重いのか。
 が、そこで母親のほうが進み出た。
 
「分かりました。でしたら私が面倒を見ておきます」
「ジニィ、いいのか?」
「ええ。その位はやらせてください。
 一人きりでただ待ってるのは、気が狂ってしまいそうですし…」
「ジニィ…」
 
 弱弱しいながらも笑みを浮かべ、村長に大丈夫だと一つ頷く。
 私はそこにこの母親の強さを垣間見た気がした。
 
 数十分後。
 
 依頼料の足しにとコカの葉2枚と傷薬を受け取り、
 村長の案内で月明かりとランプを頼りに道を歩く最中、
 我々はもう一つ大切な話を聞いた。
 ジニィの夫、トニーは一人娘のマリアを攫われて逆上し、
 ただの村人にも関わらず一人で救出に向かったらしい。
 流石に彼の救助は頼まれなかった…既に諦めている、と。
 もしも村全体の宝である幼子が無事でなかったならば、
 村には戻らず去ってほしい、とも。
 
「今のうちにお金は払っておきますので」
「でも、もうあの子達置いてきてしまいましたし…」 
「やはり…あの時断るべきだったでしょうか?」 
「うーん、でもあいつらの心配までしてたらオレらが本気を出せないよ」
「そうだな、ジャックも動きが鈍っただろうし」
「うん。どうせ戻らなきゃいけないならお金も後でいいです。
 無事に子供を助け出して、皆で帰ってくる。それでいいじゃない」
 
 周囲の空気を読んでか、サラがいつもより楽観的にそういってのける。
 指揮するものが不安になればそれは周りに感染していく。
 彼女が明るく振舞うのは、本人は無自覚かもしれないが大切なことだ。
 
「…どうか、よろしくお願いします」
 
 帰っていく村長のランプの灯りが次第に遠くなっていく。
 それに背を向けて、坑道を睨み付ける。
 ぽっかりあいたその穴の周囲に見張りらしき姿は見当たらなかった。
 だというのに緊張するのは、やはり幼子の命がかかっているからか。
 リックが罠などを調べたが、特にそれらしいものはない。
 そして、我々は目の前の廃坑へと乗り込んでいった。

 
************************************
 
 
 鉱山内は意外なまでにひっそりとしていた。
 ずいぶん昔のゴブリンの洞窟はもっと賑やかだったと思うのだが。
 壁の隙間からランプの灯りを受けきらりと輝く水晶は鉱山夫達の忘れ物か。
 何もかかっていないネズミ捕りがポツリとおいてあるのが哀愁をそそる。
 
「特に何もなし。…無用心すぎてかえって怖いな」

 左と前方へ道は伸びている。前方への道がやや広いか。
 
「女の子、どこにいるんだろ?リック兄ちゃんならどうする?」
「俺なら?…入り口近くはないな。少なくとも」
「逃げられるから?じゃあ、奥のほうですか?」
「そうね、牢屋みたいに鍵がかかる所じゃないかしら?」
「そうですね、もしくは宝物庫。あるいは食料庫」
「セアル、悪い想像は禁止!」

 皆、経験を積んだからか、軽口が飛び交う。
 ただ、敵の巣窟でこんなに賑やかすぎるのはよくない気がする。

「敵の巣窟だ、気を抜きすぎるな」

 注意する身が大声を出す訳には行かないから、小声で小さく嗜める。
 ぴたりと会話が止まった。きつく言い過ぎたか?
 唯一マリスが何事か呟いているようだがよく聞き取れない。

「ま、とにかく進みましょうか。前でいいよね」

 決定権を持っているのはリーダーであるサラだ。
 特に大きな違いがない以上、否定する言葉は誰からも出ない。
 暫く歩くと四つ角にたどり着く。

「なんだか匂いが酷いわね」

 ジャックが興奮して吼えている。

「ゴブリンの巣穴だし仕方ないだろ…っと」

 先頭を歩いていたリックが急に立ち止まった。何か落ちていたらしい。
 手にしたランプで照らしてみると木で出来ている大きな板が目に映る。

「扉?老朽化で外れたの?」
「いや、それにしてはここのささくれとか新しすぎないか?
 足跡だってついてないぞ。この位置なら一匹位は踏むだろ、普通」
「むしろ、誰かが強引に引き剥がしたかのようにも見えますね」
「ここから剥がしたんだろうけど、ホブゴブリンが暴れでもしたのかな…」

 左の部屋をリックが覗き込んだ。  
 何かに驚いたように、そこから一歩後退する。

「もう、どうしたの…!?」
 
 隙間から中を覗き込んだサラが息を呑んだ。

「これは予想外の展開ですね…」
「ひでぇ、何だよ、これ?!」

 覗きこんだ者達から次々に声が上がる。
 マリスを制止して私も部屋の中を見た。
 ランプに照らされる範囲はどこまでも赤の世界。
 潰され、引きちぎられ、虚ろな目をしたゴブリン達が
 幾匹も、幾匹も、折り重なって倒れている。
 あちこちに散らばるバラバラな手足。
 ナイフを振り上げたまま頭部をなくした固体。
 放り出されたゴブリンシャーマンの折れた杖には、
 引きちぎられた手がくっついたままだ。
 一体どれほどの殺戮を行えばこうなるのだろうか?
 恐ろしい事に骸一つとして、五体満足のものがない。

「いったい、ここでなにがあったんだ?」

 むせ返るような血の匂いの中、
 その問いに答えられるものは誰にもいなかった。 


続く
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