FC2ブログ
こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
元冒険者の追憶
2010-06-13 Sun 02:10
「すまない。ろくな見送りも出来ずに……」
「いいさ。お前は奥さんの所についていてやれよ。
 病気ってのは心細くなるものだからな」
「元気になったら家族3人で星の道標に遊びに来てね。親父さんが喜ぶし」

 恐縮するかつての仲間を無理やり元いた部屋へと押し込む。
 閉じかけた扉の向こうで華奢な女性が身を起こして一礼するのが見えた。

「わわ、駄目だよ。まだ寝てないと!」

 扉を隔ててなお届いてしまう友の声。
 扉の外に残った二人は、顔を見合わせて苦笑する。

「もうかえっちゃうの? もっとおはなしききたかったなぁ」
「すまないな。早く帰らないと今日中に帰れないんだ」
 
 玄関で彼らを見送ってくれたのは丁度遊びに行く所だった友の一人娘だった。 
 友譲りの黒い髪に青みがかった夜色の瞳。
 他の子よりもとびぬけて容貌がいいという訳ではないけれど、
 素直な心根とまっすぐな眼差しが愛らしい子だ。
 
「じゃあ、おじさま、おねえちゃん。またあそびにきてね」
「あ、ああ…お前さんもお父さん達の言う事をちゃんと聞くんだぞ」
「はーい!」

 家では遊べないから友達と遊ぶという女の子は、森への道を走っていく。
 その手には、彼らの土産であるあめ玉の袋がしっかりと抱きしめられていた。
 何だか今にも転んでしまいそうで、ついつい目が離せない。

「おじさん…か。俺は…」
「何黄昏てるのよ。子供の言った事でしょ」

(あの人はおじさんって呼ばれるのが好きよ。で、私はお姉さんがいいな)

 そう幼子に教え込んだ事をおくびにも出さず、女性は男をつっついた。

「それにしても小さな子供一人で森に行っても大丈夫なのかしら」
「いや、近くの家から男の子が出てきたぞ。あの子じゃないか?」

 二人は何事か言い合いながらも仲良くじゃれあっている。
 そんな微笑ましい姿に背を向けて、彼らも帰路へと歩み始めた。

「あいつ、色んな意味で変わってたなぁ…」
「そうね。戻ったら親父さんに報告しないと」
「しかし、氷の理性だとか言われてたあいつがまさかああなるとは……」
「仕方ないわ。愛には誰も勝てないのよ」

 数年前に結婚し、冒険者を引退した友の家は、リューンからもそう遠くない森の町にある。
 けれど、依頼などの都合からなかなか訪れる事は出来なかった。
 ところがある日、友から急に遠方の薬草調達の依頼が届いた。
 そして、二人はようやく入手できたそれを届けに来たのだ。

「子供、か……」
「目の中に入れても笑ってるわよ、きっと」
「昨日は悪い虫が付いたらどうしようと泣いてたぞ」
「……あの子、まだ5つよね?」
「早すぎだよなぁ」

 顔を見合わせてひとしきり笑う。
 けれどそれはやがてため息に変わった。

「奥さんの病気、治ると良いわね」
「完治は難しいらしい……もともと身体が弱い人だったからなぁ。
 だからこそあいつも、引退して傍で見守る道を選んだんだろうし……」

 長年生死を共にした仲間の決断だ。
 彼らにはそれを止める事など出来なかった。

「あなたは?」

 思考を戻すかのように、突然の女性の声。
 彼女は彼の前に回り込むと、その黒い瞳でじっと見上げてきた。

「ん?」
「あなたは引退した後のことを考えた事はないの?」
「どうしたんだ、急に?」
「なんとなく、よ」
「ふむ……そうだな」

 その目はいつになく真剣で、ごまかしなどできそうにない。
 逸らした視点の先には、天高くを舞い踊る一匹のトンビ。

「俺は……」

 見上げたまま、ポツリと言葉が漏れる。
 心の中を整理すれば、答えはあっさりと見つかった。

「俺は、親父みたいになりたい」
「親父さん?」
「ああ。冒険者の宿の主さ。
 親父みたいに、冒険を夢見る奴らの道標になりたい。
 昔の俺が、親父に導かれたようにな」

 ぷっと彼女が吹き出した。

「そこで、なぜ笑う……真面目に答えたのに」
「ごめんなさい。想像してみたら妙に似合っててね。頭が禿なら完璧だわ」
「おいおい。……結構気にしてるんだぞ」

 彼は憮然とした顔を崩そうとはしない。
 最近ちょっと髪の毛が後退しはじめた彼には、あまり笑い事ではないのだ。

「ごめんなさいってば。でもきっと、親父さん喜ぶわよ。
 これで星の道標も安泰だって。
 あの人もあなたのこと、実の子供みたいに可愛がってるから」
「まあ、もう何年かは冒険者を続けるがな。それまでは内緒だぞ」
「ふふ、了解」

 なおも思い出し笑いを続ける彼女に、一体どんな想像をされたのか不安になる彼。

「で、そういう君は?」
「私? んー、内緒」
「人に夢を語らせておいて、自分は内緒、はないだろう」
「だって笑われそうなんだもの」

 ようやく笑いを収めた彼女は彼に背を向けて呟いた。

「私、お母さんになりたいの」

 意外な言葉に瞳を瞬かせる。
 前を歩く彼より小さな背が、妙に遠く感じた。

「笑ったりはしない…けど、命を売り買いする冒険者の君がかい?」
「だからよ。引退したら命を育てる側に回りたいの」

 背を向けられているから、どんな表情をしているかは分からない。

(なんだったら俺の宿の女将さんに…なんて、言えるはず無いよな)

 胸中をよぎったそれを、胸の奥に仕舞い込む。

「何よ、急に黙り込んで」
「あ、ああいやいや、君は子供好きだからきっといいお母さんになれるよ。
 うん、大丈夫。俺が保障する」

 しどろもどろに答える彼にくすりと笑って彼女は振り返る。

「……ありがとう」

 その柔らかい微笑に、彼はしばしの間見惚れた。
 遠くから子供達の声が響いている。
 それはからかっているような、怒っているような声で…。


************************************


「あれ、俺……いや、わしは…」

 朝の片付けを終えた後、ついつい眠っていたらしい。
 新人の歓迎会にサラ達の帰還もあって、昨日はすっかり無礼講で、
 彼にしては珍しく酒を過ごしてしまったようだ。
 鈍く痛む頭に溜息をつく。

「あ、起きてる起きてる」

 勝手口から娘が顔を出した。
 洗濯をしていたらしく、シーツの入った籠を抱えている。
 今日は天気がいいので宿中の布団を干すのだと言っていた。

「さっきサラちゃん達が出かけたわよ。
 次の町への旅装や保存食買いにいくって」
「そうか。今日もリックと喧嘩してなかったか?」
「あら、よく知ってるわね。起きてたの?」
「……夢の中まで声が聞こえてきた」

 あれから12年。成長した筈の友の娘は時々妙に子供っぽい。
 当たり前の事だが、それはいつもの宿の風景だった。
 買い換えたばかりの新品のテーブルと椅子が並ぶ店内に、
 かすかに漂うのは朝食のスープの匂い。
 けれど、そこに夢の佳人の姿はなかった。
 当たり前だ、彼女はもう10年以上も前から行方知れずになっている。

「変なの。朝から何黄昏てるのよ?」
「ふっ、なーに……懐かしい人の夢を見てしまってな」

 渋く纏める親父にやれやれと溜息をつき、娘はシーツを干しに二階に向かう。
 誰もいなくなった酒場に親父がぽつんと残された。

「掃除でもするか……」

 一人寂しく雑巾を握る親父の背に哀愁が漂う。
 テーブルを磨き掃き掃除へ、慣れた手つきで仕事は進む。
 そうして、最後はモップがけでも……と言う所だった。
 宿の外が何だか騒がしい。

「……チンピラの喧嘩か? それにしては今子供の声がしたような」

 何事かと親父は外に顔を出してみた。

「お前ら! やめないか!!」

 ……それが彼女と再会するきっかけになるという事を、
 その時の親父は知る由もなかった。


************************************


 今回の出典
 若い頃の親父と女性:シナリオ「アニーの連れ子」のオープニング

 今回の目標
 1・父の日までに親父の話を書く
 2・実は絶賛スランプ中なので書くのをやめないように短いシーン量産

 という訳でほぼ勢いだけで書きました。
 短いのはどうか許してください。
 ちなみに、レベル対応が1から2だったので
 サラ達じゃなくて1レベルの新規な子を何人か突入させました。
 いつか出てくる事…あるのかなぁ?
スポンサーサイト
別窓 | CWリプレイ風小説 | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<幸福な関係  語り:リック | 宿屋【星の道標】 | 碧海の都アレトゥーザ(2)>>
コメント
∧top | under∨
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
∧top | under∨
| 宿屋【星の道標】 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。