FC2ブログ
こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
ある冒険者の悩み
2010-10-25 Mon 01:48
「まあ、これなら無難……だよね」


 残暑お見舞い申し上げます。

 日に日に涼しくなりますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
 ジャックは元気になりましたか?寂しがっていませんか?
 狼退治の依頼は軽く片付けられたけど、やっぱりちょっと切なかったです。
 そういえば先日は、初めて船に乗る依頼も受けました。
 
 でもまだ依頼が幾つかあります。やっぱり“フォーチュン=ベル”は大きな街ですね。
 もう少しそれらをこなしてから【星の道標】に戻るつもりです。
 あ、依頼が多くても無茶はしてませんから大丈夫ですよ。
 それでは皆さんお元気で。また会う日を楽しみにしております。

                   親愛なるおじさまと娘さんへ サラより

 追伸
 リューンに戻るついでだからとこの手紙を届けるのを快く引き受けてくれた
 【彷徨える月】の皆さんへ、エールでもおごってあげてください。
 戻ったら必ずつけは返しますので――』

 三度読み返して一つ頷く。
 うん、きっと問題ない。
 本当は……私には書いてしまいたい事があった。
 書いてしまおうかと、とても悩んだ。
 けれどそれはあまりにも二人に心配をかけそうで。
 そう考え込んだ時間は私が思ったよりも長かったようで、
 ペンの先からインクが垂れて一行開けざるをえなくなった。

「サラさん。【彷徨える月】の皆さん、そろそろ出られるそうですよ」
「あ、マリスお願い!ちょっと待ってって言ってー!」

 インクが乾くのを待って、包みへと入れる。
 あまり質のいい紙じゃないから多少は文字がにじんじゃったけど、それは仕方がない事。
 起きてしまった事は、もう覆せはしないのだから。

(帰ったら、言おう)

 この気持ちはきっと、後悔とは微妙に違う。
 たとえあの行動が故意であったとしても、あの状況ならきっと何度だってやる。
 だから、気にしないように……それこそ笑い飛ばせるくらいにならなければ。
 ただ、いくらそう言い聞かせても苦しいのは収まらなくて……
 何となくお酒でも飲んでおじさまに打ち明けてしまいたかった。
  
 この夏……私は人を死なせてしまった、と。 


************************************


 時間は数日前に遡る。

 その頃、私達は商人さんからの依頼で船上の人となっていた。
 ここ数日は見事なまでの快晴。
 熱気を飛ばす涼やかな潮風と穏やかな波に恵まれた絶好の航海日和だ。

「船から見る海も綺麗……」
「サラ……お前、昨日もそれ言ってなかったか?」
「何度見ても良いものは良いじゃない」

 私はその日も甲板から海を見ていた。
 アレトゥーザの海も素敵だったけど、こうして船から見る海もいい。
 きらきらとよせてかえす波は何時間見ていても私の心を飽きさせなかった。
 遠くで小さな何かが跳ねている。魚かな、あれは?

「マリスも呼んでこようかな? 気晴らしになるよね、綺麗な風景って」
「気晴らし?」
「うーん……それが妙に緊張してるみたいなの。
 船酔いって訳でもないみたいだけど」

 そもそもマリスはアレトゥーザに近い島の出身だと聞いている。
 私達の中では、船に一番慣れている筈だ。
 まあ、こんな大きな船は初めてだ、とも言っていたけど。

「このまま何事も起きなきゃ楽なんだけどなぁ」

 リックが大きく伸びをする。
 この三日間、水平線の彼方をどれほど見つめても、怪しい影は見えやしない。

「まあ、警戒を怠っては駄目だけど、来たら見張りの人が叫ぶでしょ。
『海賊が出たぞー!!』って……あれ?」
「すげぇ、はもった」

 私の声に覆いかぶさるように、空から声が降ってきた。
 物見台にいる船乗りが盛んに後方を指差し叫んでいる。
 船員達の動きが急に慌しくなった。海賊が恐ろしいのだろう。
 少しでも船足を速めて、海賊船から逃れようとする。
 そして、私達ののんびりした船旅もここで終わり。
 今回の依頼は海賊からこの船を守る事なのだ。

「海賊が出たって!」

 船室からハーロ達も飛び出してきた。
 後方からは思っていたより小ぶりの帆船が見る見るうちに近づいてくる。
 こちらも順風で飛ばしているのだが、到底振り切れそうにない。
 最後に出てきたマリスの目が妙に据わっていたけれど、
 はて?と思う暇もなく、敵からの先制攻撃が降り注いだ。

「皆、隠れて!」

 相手の放った矢の雨がこちらの船に飛んでくる。
 私はとっさに手近な樽の陰へともぐりこんだ。
 外れた矢が近くの甲板に穴を開けていく。
 樽に矢が当たっている振動を感じながら、小さく顔を出して皆の無事を確認する。
 倒れている姿はないと、ほっとする。
 皆、無事に木箱やマストの影に隠れる事が出来たらしい。
 
「す、すまねぇ。助かった」
「いいからほら、早く逃げてよ!」

 ハーロの頬からぽたりと血が滴り落ちていた。 
 その傍から逃げ遅れていた船員が慌てて船室の階段を転がり降りていく。
 どうやらその人を庇って、避けるのが遅れたようだった。

「ちぇ、失敗したなぁ」
「大丈夫?」
「心配ないよ。かすり傷だし。なかなかフィリオン兄ちゃんみたいにはいかないなぁ」

 ハーロはそう言いながら血を乱暴に拭った。
 それだけで出血が止まる所を見ると、本当にかすり傷だったらしい。
 既に皆の体には私の唱えた【魔法の鎧】がかかっている。
 海賊に気付いた時点で早めに唱えておいたのが功を奏したようだ。

(皆の命は私が守るんだから!)

 決意を新たに、一つ深呼吸して、海の向こうの海賊達を睨みつけた。
 賢者の杖を握り締め、【眠りの雲】の詠唱を始める。 

「主よ、天罰を彼らに与えてください!」 

 けれど、それより早くマリスが神に助力を願った。
 白く輝く【聖なる矢】が敵の射手、そして舵取りを立て続けに貫いていく。
 思わず詠唱をやめて見とれてしまうほどの、実に鮮やかなお手並みだ。
 これなら挑んでくる相手は大きく減ったに違いない。
 操るものを失った海賊船が、ただ慣性でこちらにぶつかってくるのを
 その辺の物にしがみついて耐える。
 顔を上げた先にいる海賊達は既に渡り板の準備を終わらせた。
 慣れているらしく手早い上に、予想したより数も多い。
 こちらの前衛もそれを食い止める為に動き始めている。
 私はもう一度賢者の杖を握り締めた。
 用意する呪文も先ほどと同じだ。
 混戦状態になってしまう前に……!

《眠れ!》

 味方を巻き込まないように、板の中心を狙って唱えられた眠りの雲。
 既にこちらへと渡りきっていた海賊達の半分ほどが、その魔法に捕らわれる。
 そして、今まさに板を渡りきろうとしていた海賊は足元をふらつかせ、
 落ちて、いった。 


************************************


 「おめえら覚えてやがれっ!」

 そんな事を叫びながら海賊達は逃げ出した。
 あちこちに転がった仲間を引きずって自分達の船に戻っていく。
 追撃はしたけれど、渡り板を外された以上こちらから乗り込む事は出来ない。
 襲ってきた時とは違い、逆風の中を海賊船は遠ざかっていった。
 おそるおそる見下ろした先には、ただ静かにたゆたう海。

「マリス……怪我してるようだが」
「あ、大丈夫です。かすり傷ですから」
「手当てしましょうか? 船での感染症は危険ですよ」
「そうですね、お願いします。すいません、ちょっと我を忘れてたみたいで」
「それで聖なる矢の連打を?」
「ええ。私、海賊って嫌いなんですよね。捕まりかけた事があるものですから」

 マリスの穏やかな声に、「怖ぇ…」と誰かが呟いた。
 相手も傷薬を使って回復してきたから多少は時間がかかったものの
 【眠りの雲】で眠らせて数を減らすいつも通りの作戦は、今回も上手くいった。
 味方の怪我の方も、マリスが転んだ位だ。
 他の船員達にも怪我はなく、快勝といってもいいんだろう、なのに。
 仲間達のいつもと変わらない様子に安堵しながらも
 キラキラとした水面から、目が離せない。

「サラ、どうしたんだ?」
「姉ちゃん何見てんの? 何もないじゃん」 
「うん……」
  
 そもそも帆船というものは風で動くものだ。おまけにこちらにとっては追い風。
 今眼下に広がる海は、戦闘があった場所からは既に随分と離れているから
 いくらここから眺めても何も浮かんできたりはしてくれない。

「誰か海に落ちた海賊が助けられたとこ、見た……?」
「え? いや……」

 頭をふる仲間達。

「……そっか」

 杖を持つ手が震える。
 もう片方の手でその手を押さえるけれど震えが止まらない。 

「私、人を死なせちゃったのかも……」

 言葉にすれば妙に簡単なその事実に、目の前が暗くなった。
 

************************************


 あれから数日。
 帰りにも海賊と戦ったりしたけれど正直殆ど覚えてない。
 ただぼんやりとした意識の中、賢者の杖に縋りながら
 【魔法の矢】を急所にはなりえない場所に撃っていたのは覚えてる。
 でも、よく考えればこちらのほうがより人を殺せる技なんだと後から青褪めてみたり。
 そして今。

(空が青いなぁ) 

 私は泊まっている運命の呼鈴亭を出てふらふらと散歩中。
 といっても、行きたい場所がある訳ではない。
 ただ、同室のマリスがあまりに心配げにこちらを見るので
 宿にいるのがいたたまれなくなっただけなのだ。
 そうして、気がつけば私は街の中央にある広場のベンチに座っていた。
 噴水の水に手を差し伸べて、その感触を確かめる。

「冷たい……」
 
 あの海賊も、こんな冷たさに抱かれて死んでいったのだろうか?
 でも、救助されたのに気付かなかっただけで本当に死んだかも分かっていないし、
 たとえ死んでいたとしても、悪い人で私達の敵だから、自業自得。
 そんな風に色々言葉は浮かぶのだけれど、それに納得できないでいるのは否めない。

(そもそもゴブリンなら平気で人だから悩むってのもおかしいよね。
 どちらも命としてみるなら同じ筈なのに。
 確かに冒険者はゴブリン退治が基本だって聞いてたし、覚悟もしてたけど
 それだけの違いなのかしら?
 それともただ単に慣れていないから?
 沢山人を殺したら、そんな事気にもしなくなるのかな……)

 冒険者として暮らしていくならば、これからはもっとこういった事が増えるのだろう。
 自分の考えの至らなさと、未熟さを思い知る。

(しっかりしなきゃ、もっと)


************************************


「いやー、動き回るとやっぱ暑いなー」
「!?」

 突然、後ろから来た誰かが私の隣に荷物を下ろした。
 
「何驚いてんだよ」

 いや、いきなり隣にいたら驚くって。
 それがよく知ってる幼馴染だとしてもね。

「リック……もう、びっくりしたじゃない!」
「何度か声かけたぞ。忍んだつもりもないし」

 あー、全く気付かなかった。気を抜いてたつもりないのに。

「買出し?」
「ああ。ランタンの油とか消耗品の補充」
「そっか」
「で、まだ辛気臭い顔してるお前は何してんだ?」
「……そんな顔してないよ」
「へ~ぇ」

 まるっきり信じてなさそうな口調で、リックは隣に座り込む。
 けれど、会話なんかない。
 聞こえてくるのは鳥の鳴き声、水の音、行きかう馬車や通行人の足音。

「……そりゃあ、ね」

 居心地が悪い沈黙の空間を破ろうと、渋々口を開く。

「ぜんぜん気にしてないわけじゃないよ。
 でも今回、人を死なせちゃった事で痛感したの。
 私、冒険者としての覚悟が出来てなかったんだなって……。
 だからこれからはもっとちゃんと考えないと」
「ああ、その思考全て捨ててもいいよ。無駄だから」
「無駄って何よ無駄って! こっちは真面目に悩んでるのに!」
「今悩んだからって、いざ戦闘中に悩みながら戦えるほどお前ゆとりないだろうが。
 で、結局終わってからうじうじするんだ。
 だったら今から今後の事を塞ぎ込んでもしょうがないだろ」
「でも、だからって!」
「じゃあ聞くけどさ」

 リックは付き合いが長い私から見ても珍しい位真面目な顔をしていた。

「どんなに上手い言い訳を見つけたからって、
 それでお前は自分自身に人殺しを肯定させる事が出来るのか?
 違うだろ?
 「仕方がなかった」ってそれで納得できるなら、始めから悩んじゃいない筈だ」

 言葉に詰まる。
 だって、それは確かに、私の悩みの通りだったから。

「でも……覚悟も無しに、その時になってちゃんと殺せるか、だなんて……怖いし、自信ないよ……」
「それは皆怖いだろ。平気で出来る方が怖いさ」
「……リックも、怖い…?」
「まあ怖かった、かな。ただ、俺は斧やら短剣使ってるから、慣れた」
「慣れる?」
「血が流れるじゃん。よっぽど変な魔物じゃない限り、同じ赤だし」
「私、眠らせてばかりだもんね。
 真面目に武器振り回したの、冒険者になって数回かも」
「ま、その方がいいと思うぞ。
 剣振り回したところで怪我するのが落ちだし」
「あ、あんたは……」

 ぐっと手を握り締めたのもほんの束の間だった。
 怒る気も失せて、ベンチに座り込む。
 なんか、リックと話してるといっつもこんな調子。
 気が抜けるっていうか、真面目に悩んでた私が馬鹿みたいだ。
 目の前には桃仙山。その山頂に近い辺りでは僅かに紅葉が始まっている。
 そういえば、ここ最近は全くそういったものを見ていなかった。
 空の青の色も木々の緑の色も、少しずつ変わってきているのに。
 
「そういえば、桃仙山って子供の頃に見たよね。本で」
「そんな事もあったなぁ」
「私ね、ここ数日悩んでたけど、冒険者でいるのを止めたいとかは思わなかったの。
 あの本で見た景色をね、6人で見て回りたいから」
「ふーん、だったらそうすれば?」
「そうだね……」

 見上げた空には鰯雲。女心は秋の空ってこういう事を言うのかな。
 自分の望みを夢見れば心の暗雲も多少は紛れていく。
 ……単に、根が単純なだけか。

「うん、そうしますか!」

 静かに佇むその山は、記憶の中の淡い春の色とは違って
 夏の終わりと初秋の狭間の深い色彩で装っている。
 これはこれで綺麗……でも、いつかは春の桃仙山も、あの絵の景色も目にしたい。
 まだ、悩みが消えたわけじゃない……けれど、今はとにかく前を向こう。

 とりあえず今は、ね。
  

************************************


今回の出典
町とか依頼とか桃仙山とか:シナリオ「希望の都フォーチュン=ベル」

今回の目標
一人前扱いさせる前に一度は殺す事、について考えさせる


依頼料:+300×2、+500×2で1600sp
購入アイテム:鏡、ロープ、火口箱、ランタン 計-130sp
合計所持金:4979SP
クーポン:ゴブリン退治、狼退治、海賊退治、オーガ退治

いつもよりほんのちょっぴり真面目に悩むお話です。
(いや、キャラはいつもちゃんと悩んでるけど)
元々は夏らしく海だ!と暑中見舞いのつもりで書き始めた話なのですが
サラの悩みに関して自分でもどうしても彼女を納得させられる答えが出せず
結局今の今までかかって幕間劇として出させていただく事になりました。
冒険者としてはあまり向いていないタイプかもしれないですが、
こういう問題に直面する度に彼女は悩み続けていくんだろうなぁ。
時に苦しんだり悩んだりしながらもしなやかに成長していってほしいです、彼女には。
スポンサーサイト
別窓 | CWリプレイ風小説 | コメント:0 | トラックバック:0 | ∧top | under∨
<<ヤドネコ。 | 宿屋【星の道標】 | 気分転換>>
コメント
∧top | under∨
コメントの投稿
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

この記事のトラックバック
トラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
∧top | under∨
| 宿屋【星の道標】 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。