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鳥の歌が聞こえない・2
2011-02-27 Sun 02:25
「薬草が取れない? それってどういう事なんですか!」
 驚き騒ぐシャルロッテの声が、アダンの薬草屋の店内に響いた。
 冒険者達も思わず顔を見合わせる。
 アダンの村と言えば親父も言っていた通り薬草の名産地として知られている場所だ。
 そこで薬草が手に入らないなど前代未聞、まったく持って信じがたい。
 しかし、説明をする薬草屋の主人は力なく肩を落としている。
 そして何より、棚が空っぽの店の中の様子がその言葉の真実を物語っていた。

「すまないねぇ、シャルロッテちゃん……」
「おじさんが悪いんじゃないわ。それよりお願い、何があったのか教えて」

 彼は、マットと懇意にしている相手だ。
 シャルロッテの事も随分可愛がっていたようで、再会を喜び、
 彼の記憶の中では小さかったシャルロッテが今や立派に成長して
 親の代わりを務めようとしている事に感動していたようだったが、
 その喜びも商売が成り立たない現実の前ではあっさりと翳ってしまった。

「それがなぁ」

 溜息をつきながら話す主人の話をまとめるとこのようになる。

 アダンの繁栄は、隣接する豊かな森にある。
 五十年前の隕石落下による炎上――
 一時期は魔術師学連の研究施設も置かれるほどの椿事だったが、
 その衝撃から蘇って以来、この森ではありとあらゆる季節の薬草が取れていた。

 しかし、ここ数ヶ月と言うもの、森に入った薬草採り達が相次いで失踪し始めた。
 勿論大きな森ではあるし、慣れた者でも何らかの事故等で戻れなくなる事はある。
 けれど、こうも頻度が高いのはまったくもっておかしい。
 その為、一月ほど前に村の長老会は十数名の冒険者を雇い、森の調査を依頼した。

 だが。

 一週間経っても、ニ週間経っても、彼らは戻ってこなかった。
 二十日目の朝になってようやく一人戻ってきたが、
 見る影もないほど痩せ細ったその冒険者も、衰弱が激しくすぐにこの世を去った。
 
 ―――“森の悪魔を見た”

 と言い残して……。
 死因が餓死だった為、空腹のあまり幻覚を見たのではとの説もあったが、
 それよりも森に何か恐ろしい生き物が住み着いたと怯える者の方がなお多く、
 薬草採り達は森に入る事を嫌がって、近くの町や村に出稼ぎに出てしまったらしい。
 誰も薬草を採りに行かなければ、在庫もあっという間に売り切れてしまい―――
 
「今、店の棚は空っぽって訳さ。すまないが他を当たっておくれ。
 と言っても、おそらくアダンの店はどこも同じだろうが……」
「そんなぁぁ」

 シャルロッテはがっくりと肩を落としている。

「まあ、今日はもうこんな時間だ。
 シャルロッテちゃんさえよければうちに泊まって行きなさい。
 冒険者の皆さんも、たいしたおもてなしは出来ませんが、よろしければ」

 依頼人のシャルロッテがお願い、と言うように小さく頷く。
 こうして、サラ達は薬草屋に泊まる事になり―――。

 その翌日。

 秋を謳歌している森の中を、慌てた様子で駆けていく幾つかの影があった。


************************************


「この辺で、一度休憩しましょう」  

 森を縦横に走る獣道を東へ東へと走り、
 東への道がなくなると今度は北へ北上する。
 そうして、一行が足を止めたのは森の中心にあるという湖の西岸だった。

「……水だ。むせぬよう、ゆっくり飲むといい」 
「はぁ、はぁ……すいません……急ぐ時はいつも、足を引っ張っちゃって……」
「もう。マリス、そんな事ないってば。
 一年前に比べれば、断然足も速くなってると思うわよ」
「でも……こうしてる間にも、シャルロッテさんが化け物に襲われるかも……」

 そう。サラ達は一人森へと入ってしまったシャルロッテを追いかけていた。
 相手は子供の足とは言え、彼女が家を出てからサラ達が気付くまでそれなりの時間差がある。
 それを補う為に道を急いでいたのだが―――獣道を走るのはやはり楽ではない。
 それに、もう一つの懸念もある。

「いっそ叫んでみる? シャ」
「よせよおい、今更かもしれんがあまり物音立てないほうがいいぞ」
「えー、何でさ」 
「……こちらが化け物に逢う可能性もあるだろう?」
「その時は倒しちゃえばいいじゃん」

 やや自信過剰気味なハーロはあくまで楽観的だが、
 彼よりも多少は長く生きている若者達はそうは思わなかった。

「もう、あんまり無茶言わないで」
「姉ちゃん怖いの?」
「そうねぇ、怖くないとは言えないわ。正体がまったく分からないし。
 せめて弱点でも分かればまた違うんだろうけど」

 冷静さと対極にいるような性格のサラだって一応は魔術師だ。
 暇な時には賢者の塔に通って、冒険の参考になるような知識をなるべく蓄えている。
 けれど、情報が少なすぎて森の悪魔の正体が分からない。
 こうなるとサラとしては日々の勉強不足を指摘されているようで頭が痛い。
 もっとも彼女は本質的に勤勉だ。努力が足りない訳ではない。
 ただ、得た知識がなかなか上手く生かせないだけで……より性質が悪いかもしれない。
   
「でもさぁ。こうなるなら、昨日受けておけばよかったかも」
「私が悪いとでも言いたげですね、ハーロ」
「いや、そうじゃないんだけど……」

 昨夜、シャルロッテはサラ達に薬草採りについてきて欲しい、と言いに来ていた。
 彼女は今回の仕事をやり遂げ、父に一人前だと認めてもらいたかったのだ。
 けれど、サラ達はそれを断った。
 森に巣食う相手は、数十人を殺したであろう大物だ。
 もしも遭遇した時、荒事に不慣れな者を守りながら戦うのは楽な事ではない。
 特にそう主張していたのはセアルだった。
 だから今日、他の店を回っても本当に薬草がなかったならば
 サラ達は、シャルロッテを薬草屋に預けて、
 自分達だけで薬草を採りに行くつもりだった。
 薬草の種類ならセアルが分かるし、自分達だけの方がやりやすい。 
 けれど、そこの所をシャルロッテにどうも勘違いされたらしく、
 彼女は一同が目覚める夜明け前に村を抜け出してしまった。
 持ち出されていた薬草採りの道具との関連上、行き先は森としか考えられない。
 そういった経緯もあってか、セアルの声色は普段よりも少し硬かった。

「セアル。目的地はこの湖をさらに東、だっけ?」

 空気を読んだかのようにリックが声をかける。
 その足元ではジャックがくんくんと鼻を鳴らしていた。

「ええ、店主さんの話によると一度北に行って回り込む形になりますね」

 薬草屋の親父によると、ずっと東に行った所に薬草が一面に広がる草原があるらしい。
 その話をシャルロッテも聞いていたから、おそらく彼女もそこに向かっている筈だ。
 
「ここ。桟橋みたいなのがあるんだよな。船があればよかったのに」
「そういえば、この湖、隕石が落ちてできた……」

 仲間達との会話を耳に入れながら、サラはふと辺りを見回した。  
 化物が住み着いたと言われる森の中は、とてもとても静かだ。

「……」

 こうしてゆっくり観察してみるのは初めてだが、
 他の森に比べて変わっている所は見当たらない。
 せいぜい紅葉している樹木が少ない位だろう。
 でも、だからといって、何かが特別変わっている訳ではない……。 
 一体この森のどこに、冒険者を十数人も殺したという魔物がいるのだろう?
 どこからか恐ろしい物がこちらを見ている気がして、少女は小さく身震いした。 

 小休止を入れた後、一行は湖を北に回りこむ道を選ぶ。
 ―――彼らを観察する視線に気付かぬままに。


続く
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