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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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駆け抜ける風(中編)
2011-09-21 Wed 04:33
 

 暗く細い通路に靴音が響いている。
 先ほどの横穴を歩いていくと、ある箇所から中の様子が一変したのだ。 
 ごつごつした岩窟は人工的な内装に。
 石を組んだ舗装には簡素だがレリーフも施されている。
 しかし、想像していたかび臭さのようなものはあまり感じさせない。
 その代わり、壁の向こうから不思議な音が響いてくる。

「これ、風の音か!」

 この遺跡のある岩壁の岩には小さな穴がいくつもあいている。
 そこに風が吹き付けると、それは穴を通って遺跡の中を駆け抜けるのだ。
 湿気をあまり感じないのも、中の空気が新鮮なのも、きっとその為なのだろう。

 罠があるかも知れないからと、いつもよりもより慎重に一行は道を歩む。
 が、そうして歩んだ先、
 ランタンの明かりが照らし出した岩壁に、冒険者達の吐息が揺れた。

「行き止まり――か」

 頑丈そうな壁にはレバーが一つ。

「これで三つ目?」
「そうね。ここもあわせてレバーが三つ、それに扉が三つ」

 サラの指が宙を踊る。遺跡の地図を、虚空に描くように。
 それがなぞる通り、ここまでの道のりは、決して難しいものではなかった。
 しかし、その道すがらにグリフォンらしき影はまったくない。
 先住民といえば夜を待っている蝙蝠くらいで、
 それも思いがけない人との遭遇に、我先にと逃げ出す始末。

「やっぱり怪しいのはレバーよね」

 途中にもここと同じようにレバーを見かけたが、それにはまだ触れていない。
 下手に触れる事で、帰り道が閉ざされる可能性もあるからだ。
 しかし、残りの行程は、それを操作して自分達で切り開く必要があるらしい。

「大きな扉は特殊な仕掛けで開かなかったな。
 あれがこの遺跡の最奥に通じるんだろう、多分」
「ここまでの構造から鑑みて、広いフロアがあるとしたらその扉の先でしょう」
「でも、あれを開くにはレバーを操作しなきゃ駄目よね、きっと」
「それから、残り二つには罠や鍵がかけられてた。かなり手強い奴だな、ありゃ」 
「リック兄ちゃんの腕の見せ所だね」
「そういえば幾つかプロペラもありましたね。回っていませんでしたが」 
「単なる魔力切れの空調とも思えない。――何か、意味があるんだろう」

 あーだこーだと意見が錯綜する。
 しかし、ここで話し合っていても答えは見つかりそうになかった。

「ま、これ以上話し合うのもちょっと時間が勿体無いわ。
 洞窟を見つけるまでに少し時間がかかったし、山の夕暮れは早いものだし。
 だから、今日の所は途中にあった扉を調べてみる、でいいんじゃないかしら?
 開かない扉とレバーの関係に関しては、明日本腰を入れて調べてみましょう」

 サラの提案を拒否する理由もなく、一行は踵を返した。
 とりあえず手前にあった鉄扉の鍵を、リックは開錠しようと試みる。

「開きそう?」
「ああ、罠はないし、鍵はこれで……よし!」

 鍵穴から響く快音に頷いて、扉に手をかける。
 しかし、どれだけ力を篭めても、それはびくともしない。
 もう一度扉そのものを確認し、リックは顔をしかめた。

「あー、ここでこうなってんのか……」
「兄ちゃん、鍵開け失敗??」
「いや、どうももう一つ別に鍵がかかってるみたいだ。
 しかもそれはどこか別の場所の仕掛けに連動してる。
 ここでこの扉を弄くってるだけじゃ、開きそうにないな」
「よく出来ていますねぇ。どこまで機械仕掛けなんでしょうか」

 セアルが感心しながら扉を触る。
 
「ここがいつの時代の遺跡かは分かりませんが、
 古代の叡智には現代では計り知れないものがありますね」
「そうね。旧文明期には炎を吐く筒や空に浮かぶ島が普通にあったらしいし、
 今の魔術なんて子供のお遊びに過ぎない位発達してた、とも……」
「話してるのはいいけどさぁ。早く次の扉行こうよ」

 オレ、腹減ったし退屈だよ~とハーロがぼやく。
 更に戻ると、向かい合った二つの扉が見えた。
 大きな方の扉が仕掛けによって開かない事は既に確認済みだから
 リックは小さな方の扉の鍵開けに取り掛かる。
 しかし、こちらはかなり難しいらしくなかなか快音は聞こえなかった。

「なんだか大変そう。ちょっと待ってくださいね」

 マリスは脳裏に故郷の海を浮かべながら【祝福】の祈りを捧げた。
 その力はリックのみならず全員の身体を包み込み、
 一行は自分達に不可能などない、と錯覚しそうになる。
 それと同時にリックの手が会心の動きを見せはじめた。
 主に聖北教会で教えられる【祝福】は、味方の士気を高めると共に、
 相手の運気を上げ、行動の成功確率を引き上げると言われている。
 それは冒険者にとってまさしく神のご加護といっても過言ではない。
 やがて、鍵穴の奥から小さな、盗賊にとっては小気味のいい音が響いた。

「これでよしっと」

 リックは長年封じられていた割には状態のいい扉を押し開けると、
 あまり広くない室内を手にしたランタンで照らす。
 おそらくここは倉庫か何かだったのだろう。
 石造りの小さな部屋には、古びた樽や木箱の残骸が山のように積まれていた。
 その様子に外から覗き込んだ誰かが溜息をつく。しかし。

「ゴミだけって訳でもなさそうだな」

 二つだけだが、今も原形をとどめている木箱がある。
 時の流れに風化していないのは防護の魔法がかかっているからだろう。
 その様子ににやりとして目を凝らしたリックは、
 ある事に気付いて小さく舌打ちした。

「なぁ……」


************************************


 彼は待っている。
 途方もなく永い間、ずっと。
 ここに来て何百年がたっただろう?
 恐らく常人なら気が狂うほどの時間だろうが、
 生き物でない彼はそんな事は気にしなかった。
 彼はただ待っている。  
 自分に触れてくれるぬくもりを、
 己の空腹を満たしてくれる相手を、途方もなく永い間、ずっと。

 そして、その日は来た。
 生き物の動く気配が、彼の知覚に触れる。
 けれどまだだ、まだ遠い。
 もっと、もっと近くまで来てくれれば……。

 人間達は何やら言葉を交わしている。 
 しかし、人の言葉を解さない彼は、それがどういう意味かを知らない。
 だから彼は獲物が己に触れてくれるのを待ち続けた。
 そんな彼に最初に触れた冷たい鉄の塊が、彼の本能をも断ち切る瞬間まで。

「兄ちゃん、終わったよー」
「おう、ありがとな。次はこっちを調べないと」

 そんなやり取りも彼にはもう届かない。
 未来の侵入者に残された忌まわしい罠、
 長い年月を封じられた倉庫で放置されていた箱の形の魔法生物は、
 酷い匂いを発しながら何もなせぬまま溶けていった。


************************************


 サラは少し溜息をつきながら、幼馴染の背をぼんやりと眺めた。
 リックはかなり難しい罠が仕掛けられているという木箱を
 ぼやきながらも嬉々として開けようとしている。
 そんな姿が今のサラにはちょっとだけ羨ましい。
 サラも初めのうちは遺跡というだけでわくわくしていたが、
 グリフォンのグの字も見つからないこれまでの道のりを考えると 
 この調子で依頼を無事に達成できるのかと不安になってくる。
 何せ、今回の依頼には依頼人の人生が掛かっているのだ。
 人のいいサラには、見過ごしておけない。
 
(いけないいけない、もっと客観的に、冷静に物事を見ないと)

 自分は魔術師でありリーダーなのだから、
 メンバーの誰よりも落ち着いて色々考えないといけない。
 彼女は毎日のようにそう決意を新たにしている。
 
「サラ、何か本が出てきたんだけど、いるか?」
「本? 見せて見せて!」

 毎日のように揺らぐから、毎日決意しなければならないのだけど。
 
「あ、これ…失われた魔術の書よ!」

 先ほど冷静にと自分に言い聞かせたばかりのサラだが、
 今はそんな事をすっかり忘れてしまっていた。
 ぱらぱらと本をめくっては閉じ、めくっては閉じを繰り返し、
 挙句に抱きしめてわぁわぁと興奮気味に叫んでいる。

「わぁ……まさか私が遺失魔術を手にする日が来るなんて」
「それ、そんなに価値がある書物なのか?」
「うーん。金銭的な価値はそんなにないと思う。
 軽く読んでみた感じ術としての難易度は魔法の矢と同じ位だもの。
 リューンの賢者の塔で教われる【蜘蛛の糸】の魔法より効果は短いし、
 葡萄酒のボトルを3本……よくて5本って所かな、多分」

 そう言いながらも、彼女は嬉しげな様子を崩さない。

「ただ、新しい理論が見つかるかも知れないからね。
 魔術師にとってはそういうのって大事なのよ」
「理論ですか? 神への祈りとは随分違うんですね」
「ええ。実はね、魔術を使うだけなら誰にでも出来るわ。
 魔法には魔力が必要って思われがちだけど、
 それって精神力や気力ってのとなんら変わりはしないもの。
 だから、きちんと呪文を丸暗記して、正しいイメージができれば
 術の成功率はその人の適性によって変わるけど、
 マリスにだってハーロにだって魔法は使える筈なの」
「そういうものなの?」
「うん、そういうものよ。
 けれど、魔術師を名乗るならそれだけじゃ駄目。
 どうしてその術が成り立っているのか、
 呪文の単語の繋がりがどういう事象を巻き起こしているのか、
 その理論をきちんと理解できているのが、本当の魔術師なのよ」

 もっとも、この辺の理屈に関しては父さんの受け売りだけどね、と
 サラはやや照れたように笑った。

「でね。失われた魔術をきちんと研究すると、
 これまでにない新しい魔法理論が発見されたりするの。
 だから、この一冊には過去の遺産と未来への希望が詰まっているって訳」
「詰まってない場合もあるんだろ?」
「それはこれからの研究次第よ。……だから貰っていい?」 

 指を祈りの形に組み、一同の顔を見回すサラ。
 流石にこの魔術に対してこれだけの反応を見せている彼女に
 あえて否を言うほど彼女の仲間は冷血ではない。
 だから、皆で軽く苦笑して頷きを返す。

「やったー! さ、早く宿に戻りましょー!」

 とりあえず目指すは一晩で呪文の丸暗記よ!と、
 サラはいつになく意気揚々に遺跡の出口へと歩いていく。

「姉ちゃんテンション高いねー」
「……あいつは魔術師らしさってのに劣等感があるからなぁ、その反動だろ」

 訳知り顔にリックは彼女の後を追った。


 そうして翌日。

「よーし! それじゃいくわよ!」

 やや眠たげだがやり遂げた表情のサラとその仲間達は
 レバーをあれこれ操作して、遺跡の最深部へと足を踏み入れたのだった。


続く

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