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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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早馬は命を繋ぐ(後編)
2011-11-10 Thu 01:21
  街道を高らかに馬の蹄の音が鳴る。
 どれほど走らせただろうか、確認しようにも太陽は木々に隠れて見えない。
 今いる辺りは山間に作られた道だからだ。
 もっとも、大都市同士を結ぶこの道は、
 多くの商人達が毎日のように通っているので、
 治安もいいし馬を走らせるのに不都合を感じる事は少ない。
   しかし、その途中で、一行は一度馬を止めた。 
 本当はもっと急ぎたい所だが、それでは馬が潰れてしまう。
 特にフィリオン達の馬はすっかりばてていた。
 やはり二人乗りだからだろう。 
 
  リックが軽く辺りを偵察し、他の仲間で馬の世話を焼く。
 唯一馬にあまり慣れていないマリスは、適当な芝の上で固まっていた。
 
「マリス~? 大丈夫?」
 
  馬に揺られるという事は決して楽な事ではない。
 まったく反応しないマリスに、サラは心配そうに声をかける。
 
「気持ち悪い? それともお尻痛かったりしてるのかな? おーい?」
  
  と、手を顔の前で振ってみるが、肝心のマリスは半ば放心状態だった。
 と言っても、サラが言うような理由からではない。
 好きな人に、不可抗力とはいえ揺れる度にしがみついてしまった。
 馬が駆けている時は気にする余裕もなかったそれが、
 今となって思い返すと恥ずかしくてたまらないのだ。
 
(神よ、これはどういう試練なのですか……!)
 
  これは、役得というより苦難であると彼女は思う。
 帰ったら真面目に練習しよう、と心に誓いながらも
 マリスの意識はふらふらと、頭のどこかの揺れに合わせて踊っている。
 船の揺れには慣れているが、これはむしろ酒の酔いに近い。
 ふわふわと浮ついてしまう気持ち。
 彼の足を引っ張りたくないが、嬉しいと感じてしまう心も確かにあって、
 誰かの命を背負っているというのに、それが何より罪深くて痛い。
 
  そんな中、ぴしゃっと髪に冷たいものが跳ねた。
 木から落ちてきた一滴に、マリスの意識ははっと覚醒する。
 神様に怒られてしまったような、そんな気がした。
 
「マリス? 平気?」
「あ、大丈夫です」
「顔色よくないよ? ハンカチ濡らしたから使って」
 
  渡された布をそっと頬に寄せる。
 ひんやりと冷たい感触に、しばし浸っていたかった。
 
  しかし、そんな時間はすぐに終わる。
 街道の向こうから、二頭の馬が駆けてきたのだ。
 
 
************************************
 
  
「どういう事だ?」 
 
  リックが首を傾げる。
 状況からして追っ手が逃がしたものだと一同は推測するが、
 それを為す理由がまったく思いつかない。
  
「三頭で出て二頭で帰るなんて、合理的じゃないよね」
「オレが聞いてる限りじゃ、この辺りは野盗や魔物も出ないらしいよ」
「うーん……」
「あの、急ぎませんか? 私ならもう大丈夫ですから」

  このままここにいても仕方ない、と一同は馬に乗り始めた。
 しかし、セアルだけは未だ瞳を閉じいつになく真面目な顔で佇んでいる。
 重要な何かを忘れている、そんな気がしてならないのだ。
  
「セアル? 行こうぜ」
 
  ハーロの促しに目を開いたセアルは軽く頭を振って、
 
「あっ!」
 
  その視界の隅で、小さな叫びと共に、サラが杖を取り落とした。
 
「おいおい落とすなよ。走ってる最中じゃなくてよかったな」
「そうね。転んで馬の足が折れちゃってたかも」
 
  とにかく杖を拾おうと、サラが馬を下りる。
 その杖の頭に頂く宝玉がセアルの意識をひきつけた。
 
「それですっ」  
「え?」  
「となるともう始まってる! 皆さん、急ぎますよ。
 説明は走らせながらしますから!」
 
  セアルが自分の借りている馬へと駆け寄る。
 ただならぬ雰囲気に、一同は驚きながらも粛々と後に続いた。
 朝靄の中を怒涛のように駆け抜ける馬蹄の響き。
 その合間を縫うかのような詩人の声は不思議と一同の耳に届く。
 彼は声に感情を乗せないまま、己の推理を語った。
 
「彼らは【眠りの雲】を警戒したんです」 
 
  正確には、魔術師達が売りさばいていた魔法の品を。
 売却予定の品とはいえ、窮地における命の値段だと思えば安いもの。  
 そして、その魔法は戦況を一変する事が可能なのだ。
 何の工作もなしに固まって近寄るのは自殺行為に等しい。
 
「つまり、散開したって事か!」
「ええ。一人が馬に乗ったまま遠距離から足止め。
 他の二人は足が止まった馬車に忍び足で近づき
 奇襲を仕掛けて一番厄介そうなのを倒す」
 
  おそらくですが、と付け加えながらもセアルは確信を持って告げる。
 馬から下りてしまっても、帰りは敵の馬車を奪えばいい。
 敵をすべて排除して!
 その確信に一行は無言になり馬の足を更に速めた。
 馬達は閃光のように、山の中を駆け抜けていく。
 どの馬も苦しげな息をしている。潰れるのも時間の問題だ。
 だけど、もう少し、もう少しだけがんばってくれと
 冒険者達は祈るような気持ちで手綱を緊張させ、馬体を締める。
 
「見えたっ!」
 
  木々の隙間から垣間見える五人の冒険者達。
 その誰一人として無傷なものはいない。
 彼らの背後には、御者らしい風体の喉から血を流した男が倒れている。
 ……状況は新米冒険者達の方が圧倒的に不利だった。
 一人が逃げようとしているが、それを木陰からの矢が足止めする。
 的確な射撃、しかしそれは決して急所には当たらない。
 猫が鼠を弄るかのように、弄んでいるのだ。
 その間にも傷口から入り込んだ毒が彼らの体の中を回っていく。
 苦しみに身悶えしながらも、懸命に生きようとする冒険者達。
 その様は哀れみを誘うものだった。
 しかし、盗賊達は一切の手加減をせず、必要とされる事を貫いている。
 彼らは贄だ。盗賊ギルドの本気の恐ろしさを伝える為の。
   
「ああ、もう見てられない!」
 
  軽く馬を飛び降りたサラはその勢いで駆け出す。
 魔術師とは到底思えない運動神経だ。
 
「駄目ですよ。盗賊に手を出しては」
「分かってる!」
 
  サラ達がいるのは風上だが、念の為にとハンカチで口元を押さえる。
 そうして、そのまま木立の中を駆け抜けて、戦場へと飛び出した。
  
「そこまでよ!」

  その、突然の侵入者によって辺りの空気が変わった。 
 盗賊達の方から見れば予定にない来客にわずかな困惑。
 単なる通りすがりだとすれば、面倒な事になるからだろう。
 しかし、新米冒険者達からしてみれば、
 顔を隠した怪しさから見ても敵の新手が来たとしか思えない。
 
「新手か!」
「勝ち目がない、やっぱ逃げよう!」

  しかし、逃げるという言葉に反応して居直った盗賊がまた弓を放つ。 

「そうはいくかよ!クソカスがっ!」
 
  逃げ場はない。少なくとも、彼らの背後には。
 
「だったらその女を倒して道を切り開くまで!」
 
  戦士風の男の攻撃は、毒で苦しんでるのもあるのか
 サラでも軽くよけられるものだった。
 改めて、レベルの違いとやらを噛み締める暇もなく次が来る。
    
「ちょっと、止めなさいって言ってるでしょ!」
 
  サラとしてはどちらにも傷をつけたくない。
 弱いもの苛めになっていたからつい飛び出してしまったが、
 ギルドの側にも本質的な非はないのだ。
 魔法など打ち込んでは、今後こちらがギルドに狙われる事にもなりかねない。
 かといって、新米達を眠らせた所で止めを刺されるだけだろう。
 今更に、自分では何も出来ない事にサラは気付いた。
 出来るとすればそれは……。
 
「ちょっとリックー!」
「はいはい呼ばれましたよ、と。お前足速すぎだろ」
 
  しかし、後から駆けてきたリックに驚いたのは、盗賊達の方だった。
 
「お前リックか!」
 
  同じ盗賊ギルドに出入りしているのだ。
 彼らが顔見知りでもおかしくない。
 思った通りであった事に、サラはこっそり息を吐く。
 
「聞いてくれ、毒使い! ぉっ」
 
  しかし、その言葉を新米達の方が剣で遮る。
 サラ達が敵の顔見知り……つまり自分達の敵だと確信したからだ。
  
「吹っ飛べ! 吹っ飛んでくれ!」
 
  少し軽い雰囲気の青年が、馬車の積荷をサラ達へと投げる。
 それは朝日にきらきらと、眩しいまでの輝きを見せた。
 精霊使いがいればその中に炎の力が封じられているのに気付くだろう。
 なぜならその石の名は、
 
((火晶石!))
 
  二人はとっさに身を翻し木立へと飛び込んだ。
 次の瞬間、それまで二人がいた辺りから激震が走る。
 サラ達は隠れてなお全身を打ち据える痛みに歯を食い縛りながら唸った。
 火晶石の爆発、それは一般市民なら即死しかねない威力。
 振り返れば、落下地点には衝撃でクレーターが出来てしまっている。 
  
「なんて危ないものを」
 
  幸いリックも他の仲間も、余波は食らったようだが無事のようだった。
 マリスは神へと祈り、新米の一人である倒れている女性へと癒身の法を放つ。
 
「リック、こいつらモグリの盗賊なんだっ! 援護しろ!」  
「誤解だっ、毒使い! こいつらは!」
 
  視界の向こうではハーロに切りかかる戦士。
 癒しの術を使い切っているのか、神官風の男は天を仰いで倒れる。
 その身を再度、マリスの秘蹟が現世へと引き戻した。
 しかし、傷が癒えようとも体内の毒が消えるわけではない。
 新米達の誰もが既に弱りきっていた。
 止めという形の慈悲を与えようと、毒使いは弓を引き絞る。
 その全員に届けといわんばかりにリックは声を張り上げた。
 
「うちの宿の冒険者達だっ!!」
「―――なん、だと?!」
 
  毒使いが放った矢は狙いを大きく外れて近くの木へと突き刺さる。
 
「味方……なのか?」
 
  新米の中では一番若そうな剣士の青年が、目を見開きながら呟いた。
 恐怖に慄いた目に、冷静さが戻ってくる。
 そのまま、彼らは糸が切れたように、その場へと座り込んだ。
 
  
************************************
 
 
  応急手当を終えた所で、一同は諸事情を話した。
 オットーの依頼、ギルドから見た敵は先ほど事切れた御者だけだった事、
 そして自分達が真実を伝える為に派遣された事……。
 ちなみに、御者がこの一行の中で優先的に狙われたのは、
 やはり【眠りの雲】の指輪を使おうとしたから、らしい。
   
「とまあ、こういう事だったのさ」
「なんとまあ……そうだったのか。そいつは悪い事をしたな」
 
  毒使いは面目なさそうに頭を掻く。
 新米達は居心地悪そうに身じろぎした。
 毒使い、そう呼ばれるひげの男は一見すると温和だ。
 彼が先ほどまでの殺気の持ち主とは、新米にはにわかには信じがたい。
 自分達の見たものと現状の不一致で戸惑いを隠せないのだ。
 だからこそ、毒使いが向けた視線にびくっと肩が動くのも無理はなかった。
 
「しかしまあ、お前達もお前達だ。
 この世界で生きるならモグリじゃ話にならん」
 
  きつく、咎めるような口調。
 殺気こそなかったものの威圧感はさっきと同じ。
 しかし、震える新米達に毒使いはやおら口を歪め笑った。
  
「迷惑料として入会金は負けといてやる。
 お前ら、一度うちのギルドに顔をだしな」
「分かった。必ず行く」
 
  少なくとも、これだけ威圧したのだ。
 今後彼らは盗賊ギルドに逆らおうとは思わないだろう。
 そうして、未だ毒の影響で体力の戻りきらぬ新米達は、
 御者のいない馬車に乗って、リューンの街へと戻っていく。
 毒使い達も一緒だから心配はいらない。
 荷台の違法なマジックアイテムは、ギルドから塔へと返されるだろう。
 そこまでを見届けて、サラ達もようやく肩の荷が下りた。
  
「疲れたーっ。お腹すいた!!」
 
  気がつけば太陽の位置も高い。
 朝食抜きに昼食前まで走り回っていた事になる。
 ハーロが音を上げても無理はない。
 
「ふふ。夜まで我慢したら? 今日はご馳走なんだし。
 任務失敗とはいえ、新米さん達を慰労してあげないと」
「今頃親父さん達が作ってくれてる筈ですよ。
 依頼の一環として頼んでおきましたからね」
「セアルえらいっ!でもそれはそれとしてご飯っ!」
「じゃ、早く帰ろうぜ。あんまり待たせると親父の禿が進んじまう」
 
  こいつらも返さなきゃなぁと馬へと歩んでいく一行。
 それを見守りながら歩いていたフィリオンの袖が、ついと引かれた。
 そこではマリスが少し頬を赤らめて佇んでいる。

「あの、フィリオン様……今度馬術を教えていただけませんか?」
「……かまわんが」

  フィリオンの言葉はそっけなかったが、マリスは満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうございます!!」
 
  
~~その後~~
 
 
  【星の道標】の新米冒険者達は歓迎会や交流を通じて
 生き馬の目を抜くこの業界では、年の差より経験が重要な事に気付いた。
 彼らは親父の助言も馬耳東風だった自分達の見解を改め、
 冒険で自分達が生き残るのに必要なものを揃え始めたそうだ。
 また、たまに盗賊ギルドからちょっとした依頼も頼まれているらしく、
 コネが出来たと思えば、あの苦しい体験も塞翁が馬と言えるかも知れない。
 とはいえ、今後もその調子でいけるかは、彼らの活躍次第である。
 願わくば馬の合う仲間と共に、己達の道を切り開いて貰いたい。
   
  一方。

「いやーっ止まってーっ!」
「落ち着け、マリス」
 
  離れていても相手から突進して来る冬の朝。
 あれから数日、暴れる馬に周囲の人間が蹴られそうになる光景が
 【星の道標】近辺では見られたそうな。 

 ―――人の恋路を邪魔しなくても、馬の足にはご用心―――


************************************

シナリオ名 :早馬は命を繋ぐ
製作者 :suikame様
入手場所 :ギルド

依頼料:+700SP
合計所持金:4700SP
クーポン:駆け出し冒険者の救助成功(+1)


今回は早馬は命を繋ぐを書かせていただきました。
派手な戦闘はなくても、冒険者が格好いい話なので、好きなシナリオの一つです。
周摩さん、リクエストありがとー! 満足できる内容でしょうか?
是非今度あの格好いい目次の設定の仕方も教えて下さいっ!
なお、中身としては予想を裏切って?マリス重視になっちゃいました。
彼女は自分が押すのは平気だけど近づかれると焦ると思うんだ。
でもこんなの書いといてなんですが、ロマンスは苦手です。照れるから。

なお、今回シューヴちゃん再登場に加えてサジタリス君など新キャラも出してみました。
彼のいるパーティが多分、【星の道標】の看板冒険者かなぁ。
今、これまでぼんやりだった宿の設定や
他の冒険者とかの設定をちょこちょこ考えてる所です。
若者が多いのにも、一応?意味はあります。たいした理由じゃないけど…。

それでは今回はこの辺で。
暖かい日と寒い日が交互に訪れますが、
皆様風邪など召されぬよう気をつけてくださいね。
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コメント
★ 待ってましたァ!
どうもこんばんは、周摩です。
ま、まさかこんなに早く読めるとは……!
リクエストがモチベの向上に繋がったのなら、嬉しい限りです。

やった! シューヴさん来た!
毒舌キャラが懐くと可愛くなるのは必然っ……!
愚痴を聞いてあげるサラさんがお姉さんみたいで素敵です。

私が以前試しに書いた時は、馬車に追いついてからの展開に悩みました。
一声かければ一件落着という、カードワースのシステム的には緊張感バツグンな場面。
しかし文章に起こすと簡単そうな場面にどうやって緊張感を持たせるかが一番の悩みどころでした。
結果的に断念した訳ですが、環菜さんのリプレイを読んで脱帽です。
なるほど、そういう表現・展開もあるのかーと。

リクエストさせてもらった身として、大満足のリプレイでした。
ご馳走様です!

私も以前にロマンスもどきを書きましたが、やはり照れます。
なんかこう、読み返すと枕に顔を埋めて足をバタバタさせる程度には。
文章力が上がればいいのか……それとも慣れれば平気になるんでしょうか?

ではでは、この辺で。
環菜さんもお体には十分気をつけてくださいー。

追伸。
目次の設定については、今夜中に私のブログで解説記事を作ります。
なるべく分かりやすく作りますねー。
2011-11-11 Fri 20:32 URL | 周摩 #xomJgpUE[ 内容変更]
★ こちらこそありがとうですよー。
正直前編が8割って辺りで止まってたので、燃料の投下ありがたかったです。
そもそも書こうとした時にはじゃじゃ馬が暴れ馬云々辺りを掘り下げるつもりだったので
どうしてマリスさん主体になったのか実はちょっと不思議かも。
育ちで考えれば彼女は馬に乗れないだろうなぁとは思ってたのですが
その辺どうするか考えるとやっぱり照れちゃって止まってました。
ロマンスは難しいですよね…。
ただ、元々彼女がやや薄かったのは気になってたので、
書き上げる元気を貰って本当に助かりました~!
満足されたなら、こちらも嬉しいです。

2011-11-11 Fri 23:24 URL | 環菜(かんな) #PQYfn/Wg[ 内容変更]
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