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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
第十九話 セアルさんのリサイタル
2011-12-31 Sat 23:59


新春企画
セアルさんのリサイタル



  夕暮れにちらちらと小雪が舞っていた。
  それは路上の馬車や飾られたヤドリギについては儚く消えゆく小さな雫。
  路肩に先日の吹雪の名残が残る今日この頃、
 夕暮れ近いこの時間の気温は段々下がって来ているのだが
 人々の波は途絶える様子を見せず、リューンの主要な通りを埋め尽くしている。
  その多くは聖誕祭から続いた祝祭ムードを最後まで楽しもうとする人達だ。
  明日はいよいよ新たなる年の始まりの日。
  人は酔い、騒ぎ、楽しんでその時間を迎えようとしている。
 
  そんな中《星の道標》でもある馬鹿騒ぎが始まろうとしていた。
  とはいっても集まった人々は神妙な面持ちで静まり返っている。    
  だが、その表情はごく一部のメンバーからは笑いを抑えているようにも見えた。
  それは、あるいは彼らの被害妄想かもしれなかったが……。
 
  と、ベルの音を合図に演出係の精霊使いが闇の精霊を呼んだ。
  突如現れた暗闇に一同が狼狽するのも束の間、明るい輝きを放つ鳥がそれを引き裂く。
  それと同時に、それまで誰もいなかった演台には一人の詩人が立っていた。
 
「Ladies & Gentlemen!!
 本日は、私のリサイタルにお集まりいただきありがとうございます。
 今年も選りすぐりの冒険譚を幾つも集めてまいりました。
 種も仕掛けもございませんが思わぬ引っ掛けはありますので、
 願わくば最後まで席を立たずに聞いていかれる事を心より祈っております」
 
  まだ年若く見える彼が壇上で礼をすると、宿を埋めている人々から大きな拍手が上がる。
  正直、聞く者が聞けばどうしてこうもあの法螺が受けるのか、と思うのだが
 集まった人々のささやき声の中には、
 
「今年はどんな話が聞けるかねぇ…」
「去年は下水道のネズミ退治かと思ってたらビホルダー倒してたよな」
「ビンゴ! そうでしたそうでした」
「本当はありえないって分かるけど、だからこそ面白いよ」
「いや、本当に出ますよ。ありえるんですよ」
 
 等という高評価?も確かにあって、
 要するに新たな年を笑い飛ばして迎えたい人々が、今ここに集まっているらしい。
 
  そんな、宿の片隅。演台からは一番遠い奥のテーブルに、詩人の仲間は集っていた。
  友人の晴れ舞台だというのに、彼らはあまり芳しくない表情をしている。
  昨年は結成間もなくという事であまり彼ら自身の冒険譚は歌われなかったが
 今年は彼らの冒険の歌を歌うと詩人は明言している。
  しかし、己達がやったどの冒険をどのように歌うつもりなのか、
 どれほど恥ずかしい脚色を加えられているのか、
 考え続ければ、いっそ逃げ出したいような気持ちにもなる。
  しかし、最終的にはこうして奥に陣取りながら、気になる箇所をチェックして
 あとで彼にツッコミ、あるいは酒の一杯も奢らせよう、という事になったのである。 
   
  やがて、数多の期待と少しの不安を乗せて竪琴は旋律を奏で
 それに絡むかのような詩人の声は、これまで誰も知らなかった物語を語るのだった……。

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