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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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フロンティア(前編) 1 語り:4人
2012-01-22 Sun 01:45
シナリオ名 :フロンティア(前編)
製作者 :レシェ様
入手場所 :ギルド


**ハーロ******************************

「おやおや、英雄ハーロ殿。調子はどうだ?」
「いやぁ。この前は久方ぶりに楽しませてもらったよ」
「ちょっと、おじちゃん達勘弁してよー」
「褒めてるんだぞ? あんな子供がよくもまあ、と」
「よかったじゃねーか。俺達だって名声は欲しいんだぜ?」
「じゃ、セアルに歌ってくれるよう頼んで」
「「謹んで拒否する」」
「おじちゃん達酷いよ?!」
「いやいや、晒しもんにはなりたくないし……なぁ」
「まあ、ハーロはまだ若いんだしな。
 これはおごりだ。未来の英雄に乾杯!」
 
  新年の祝いから数日。
  オレの周りではほぼ毎日そんな会話が繰り広げられている。
  これまでも時々、冗談のように歌われてはいたけれど、
 あんなに多くの人の前で名前を出されたのはわりと珍しい。
  そのせいか、からかうのが好きな先輩冒険者のおじちゃん達から、
 オレはいいように弄ばれている。
  まあ、オレはこの宿の中じゃ弟……たまに子供のように扱われているから
 皆に悪気がないのは分かっているけど、でも、なぁ。

「よっ! 英雄さん、しけた顔してんじゃねえよ」

  また肩が叩かれる。……いい加減、色んな意味で耐えかねた。
 
「親父!とにかく何処か遠くに行く依頼ない!?」
 
  幸い、とある金銭的事情に悩むサラ姉ちゃん達との折り合いもつき、
 それから二日後、オレ達は西へ行く幌馬車の中にいた。


**リック*******************************


「暇だなぁ……」

  もう何日こうして馬車で揺られているだろう。
  からからと小刻みに揺れる振動はどうにもこうにも眠気を誘う。
  反対側から外を伺っているハーロも、小さく欠伸を噛み殺している。

「平穏無事なのはいい事ですよ」

  マリスの言葉に腕組みしたままでフィリオンも頷いている。
  今回俺達が目指すのはフロンティア―――西方の開拓地。
  そこでは土地を持たない農民達が己の土地を求めて、
 日々を逞しく生きているのだという。
  そう語ったのは今回の依頼人のマクビーさん。
  彼はそこへ傷薬などの生活必需品や手紙などを運ぶ商人だそうだ。
  待ち合わせ場所の近くの露店でコカの葉を大人買いしたのには結構驚いた。
  1枚100SPのコカの葉を30枚2000sp。
  それで頷かせたのだから、なかなかのやり手といえるだろう。
  ……金のある奴は大胆だよなぁ。
  かくいう俺達も年明けはそれなりに持っていた、のだが……
 ハーロとフィリオンが技を覚えた翌日、ギルドに顔を出した俺を待ち構えていた
 今年の分の年会費(しかも去年と違って新人割引はなし)という辛い現実。
  
「ま、この前見せてもらった身のこなしなら
 リックにゃ蛇(暗殺者の隠語)だって出来そうだしな。
 それだけお前さんが優秀になったって事さ。
 何だったら冒険者辞めてギルドの専属になるか?
 それなら年会費はチャラ、給料まで入ってくるぜ」

  毒使いはそう言って笑ってたけど、笑い事じゃねえよ色んな意味で。  
  結局技能講習三つ分に近い金額を持ってかれて、財布の中はかなり寒い。    
  だからこそ、親父が薦めハーロが懇願するこの依頼に飛びついた訳だが。
  報酬自体も値上げ交渉に成功して一ヶ月の護衛で3000となかなかのものだし、
  辺境では傷薬などがリューンより高く売れるらしいのだ。
  そこでこれまでに貯まったものを売りさばく予定である。
  
(それにしても暇だよなぁ)

  外へ向けている視線を馬車の中へと移せば、
  傍らのサラは胸ポケットから手の平サイズのカードを取り出している。
  導師の手助けをした報酬兼聖誕祭のプレゼントとして
 あの父親から贈られたというそれを眺めるのが最近のサラの癖だ。
  その向こう、竪琴を取り出し調律を始めたセアルは、
 ハーロに睨まれていてもまったく動じていない。
  一方、どこまでも自然体で、けれど警戒を緩めていないフィリオンへと
 マリスは時々視線を向けている。すぐ逸らすけど、少し赤くなって。   

(ま、こいつら皆いつも通りだしなぁ)

  観察眼は去年より確かに上がっている気がするが、
  すぐに飽きた俺は今晩のメニューでも考える事にした。
  保存の利く食料のアレンジは、意外と奥が深いのだから。


**マリス*******************************


  くしゅん、と少し離れた位置からくぐもったくしゃみが聞こえました。

「もっと火の傍にいらっしゃいな。寒いでしょう?」

  彼、御者をやっているセレシュ君は、
 皆が寝静まった後も続けていた馬の世話を躊躇いがちに止めました。
  その様子は、知らない人を怖がる孤児達とそっくりです。
  今日、私が夜の見張りを立候補したのも、
 少し彼と話がしてみたかったからでした。
  どうにも、私達の事を怖がっているみたいなのですが、
  いつまでも緊張されるのも、なんだか嫌ですものね。

「馬が好きなのですか?」
「……うん。明日撫でさせてやるよ。こいつらすごく大人しいんだよ」
「いいんですか? ありがとうございます。セレシュ君」

  怖がらせないようににっこり微笑むと、少し照れたように笑ってくれます。
  昔、エステル様に教わった通り、笑顔は最高の潤滑油です。
  ここまでのすれ違いはお互いにきっかけがなかっただけなのでしょう。
  
「お姉さんは」
「マリス、でいいですよ」
「マリスさんは、どこの生まれなの?」   
「えーっと、アレトゥーザって知ってますか」

  どうやら知らないらしい彼に、碧海の都について話します。
  どこまでも碧く澄んだ海に抱かれる都市。
  異国情緒溢れる港の賑やかさ、教会へは水路で移動する事。
  不思議な伝説を持つ、懐かしい故郷の話を。
  
「凄いや、きっとないものなんてないんだろうなぁ」
「そんな事はないですよ」
「そうかなぁ。開拓村には井戸もないんだぜ。
 マリスさんだって見ればびっくりするよ」

  少し悔しげで、けれど懸命に生きている
 かの地を誇らしそうな口ぶりです。

「開拓村が、セレシュ君の故郷なんですか?」
「うん、おいら、シスタークレイに育ててもらったんだ」
「シスター、に?」
「うん。村の教会のシスターだよ」

  それは、親がないという事と同じ意味。
  つまりは、私と同じ境遇だという事。

「マクビーの旦那と、一緒にお土産選んだんだ」

  私の躊躇いに気付かずに、心配そうに彼は呟きます。
  彼はきっと、異郷で買った何かを贈るという事は初めてなのでしょう。
  
「何を買ったんですか?」
「きれいな布地だよ。喜んでくれるかなぁ」

  ……何となく想像がつきます。
  開拓村では贅沢出来るとは思えませんから、
  彼を養ったシスターも古びた服装をしているのではないでしょうか?
  初めてみる都会で華やかな服を纏っている人達を見て、彼は何を思ったのか。
  アレトゥーザへの憧れの声も、あるいはそういう事なのかも知れません。  
 
「大丈夫ですよ、きっと喜んでくれます」

  思わず両手を掴んで励ましちゃいます。
  品物が嬉しいんじゃなくて贈られる気持ちが嬉しいんですもの。
  そんな私の強引さに困ったように頷き返してくれた彼は、
 眠気がようやく来たようで、馬車の方へと歩いていきました。
  後に残されるのは、私と焚き火のぱちぱちという音。

(今度アレトゥーザに帰る時は、私も何かを用意したいですね……)

  思い起こせば蘇る潮騒の音にそれを誓って、
 私は夜明けまで、懐かしい思い出を数えていました。
  
 
**サラ********************************
    
 
  最初にその話を切り出したのは誰だったかしら?
 
「それじゃあ皆さんは海は見た事があるんですな」
  
  そう言ったのは今回の依頼人のマクビーさん。
 今日はハーロが幌馬車の手綱を握ってて、幌の中にマクビーさんが座ってる。
  ハーロが退屈すぎて死にそうだからって交代してもらったのよね。
  もっとも、もしかしたら外の方が退屈になっちゃってるかも知れないけど。
  マクビーさんって、商売人としてはやり手だからか話もとても上手で、
 気がつけばどこの街へいった、とか冒険の話になってたわ。
     
「船に乗ったこともあるわよ。フィリオンは海の向こうの生まれらしいし」
「……ああ」
 
  船にはちょっと苦い思い出もあるけど、それは思い出さない。
  いつまでも思い悩むほど繊細じゃないつもりだけど、鈍感にもなれないもの。
  でも、今考えたって答えが出せない事ではある筈だから。
   
「では、海の向こうには一体何があるのかご存知ですか?」
 
  再度マクビーさんに尋ねられる。
 
「さぁ……それはね……人魚達の上位種の住まう宮殿があるとか、
 巨大な竜の胴体が世界を取り巻いているとか、色々歌や伝承には聞くけど」
 
  地理関係の情報は行く先々でそれなりに抑えてるつもりだけど、
 実際に海の果てを見た、なんて話は、今のところ聞いた事がない。
  それに、実際そこに行ったなんて報告があったら、
 地図作成組合や魔術師学連だって調査に乗り出すと思う。
   
「最近の流行は世界の果てにとある海賊の秘宝が眠っている、らしいですよ?」 
「どこの流行だよ! 俺が聞いたのは、天に上れる梯子があるってのだな」 
「……ある国のとある賢者曰く、世界は丸いから、反対側につくらしい」
「フィリオン様、それって……」
「神の教えを信じていないわけではない。そういう説もあるだけだ」
「なるほど……ちなみに私の母は、海の果てには滝があって、
 そこには天使が住んでいるのだと言っていました」
「まぁ、マクビーさんのお母様はロマンティックな方だったんですね」    
「流石に、この年になってはおとぎ話ですがね。
 子供の頃はそれがどんな姿をしているのかと思うと
 なかなか寝付けなかったものです」  
 
  照れたようにマクビーさんは笑っている。
  でも、私には何となくそんな気持ちが分かった。
 
「本当の所は見てみないと分からないわよね」
「ええ。……思えばあの頃から世界の果てに行きたいと
 思っていたのかもしれません」
 
  ああ、だからマクビーさんは開拓地に物資を運ぶのか。
  その先はこの大陸の西の果て。
  きっとその向こうを、この人は見てみたいのだ。
  いいなぁ、なんかそういうの。
 
「行きたいな、私も。世界の果て、まだ見た事がない場所に」
「よし、外を見よう。まだ見た事がない景色だろう」
「そうだけど……リックってば、そこにツッコミ入れないでよ」
「へいへい。ま、俺もまだまだ色々知りたいし付き合うさ」
 
  そういえば、私が何処かへ行きたがる様に、リックは何かを知りたがった。
  私達は似てる様で違う、けれど、違う様で似てる好奇心を持っている。
  だからこんなに長く幼馴染としてやってこれてるのかな。
  子供っぽさが抜け切れていないだけかもしれないけど、
 そんな所が誰よりも気が合うのは間違いない。
  主にボケとツッコミなのが困った所だけど。お互い様な意味で。
 
「ほほう……サラさんとリックさんは……ふむ、仲がいいのは良い事ですなぁ」
 
  ああ、この反応は……とりあえず、誤解は解いておこう、うん。
  段々慣れてきている自分が少し悲しい……。
 

続く
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