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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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転機・3
2013-06-20 Thu 23:31
  冬枯れしていた木々の枝を白い蕾が彩り始めたある日、
 共同墓地の一角はいつになく綺麗に整えられていた。
  そして、そこに響くのは嗚咽のような歌声。
  とある墓の前で歌っている青年の、竪琴を爪弾く指先は既に赤く、
 歌い始めてから経過した時間を物語っていた。
  周囲の人々も、今では哀れみを込めて彼ともう一人の方を伺っている。
 
 「こ……これ、で、、そろそろぜんぶ……」

  三度目の台詞をこれまでにない悲痛さで呟き、
 けほけほと咳をしながら演奏を止めた青年に、
 墓の前で一際熱心に祈っていた少年は一つため息をついた。
 
 「二年前に二人で行った狼退治のやつがまだだろ。
 山の主とか色々ついて最終的にワーウルフになっちゃったあれ」
 「……っ」
 「オレ、銀の武器なんて使ってなかったから、
 お前の馬鹿力は感染されたからじゃないか、なんて
 その後しばらく質問攻めにされたんだよね」
 
  それ以上異論も出せず、青年は空になった水筒を投げ捨てて大きく息を吐く。
 『仲直りする前にこれまで作った歌を全部うちの親に聞かせてよ』と、
 朝から始まった“ハーロの両親に捧ぐセアルの特別リサイタル”は、
 既に夕方になろうとしている今まで、時折休憩を挟みながらも途切れがない。
  周囲としてはセアルがハーロの仲間になってからの三年で作った曲が
 こんなにも沢山ある事を驚くべきなのだろうが、
 それよりなによりハーロがその殆どを覚えていた事に戦慄を感じていた。
  それだけ日々辛酸を嘗めてきたと憐れむべきか、
 その記憶力をもっと別の形で発揮して欲しいと願うべきなのか判断が難しい。
  とはいえ、疲労でふらふらになっているその様を見かねたのか、
 仲間の少女が彼らの間に割って入った。
 
 「ねえ、ハーロ。日も落ちてきた事だしそろそろ切り上げましょう?
  明日は休むとしても今後セアルが歌えなかったら依頼でも困るし」
 「仕事も終わったしな。この後親父が奢ってくれるんだろ?」
 
  感情的にならずに納得しやすいよう、理性の面から持ちかけるサラと、
 この墓参り終了後のお楽しみを持ち出すリック。
  そう、今日の墓場の大掃除の依頼人は親父だ。
  他の冒険者の墓も掃除する代わりに、豪勢な夕食を約束されている。
  それには、二人の仲直りを祝って、という意味もあるのだろう。
  それぞれの事情や想いを知るが故に、一番気を揉んだのが親父なのだから。
  ハーロの方も料理の味を思い出したのか、その表情にも迷いが出る。
  
 「うーん……」

  もう声も出せずにこくこくと頷いているセアル。
  ささやかな意趣返しはそれなりに効いた様だ。
  ただ、ハーロの心はあまり晴れなかった。
  仲間から目をそらし、父母が仲良く眠っている墓石に伸びた木の根の先に目を凝らす。

(別に、歌われること自体がそこまで嫌だったわけじゃないんだよな)

  セアルは違うというかもしれないが、ハーロにとってセアルは恩人である。
  彼と知り合った頃、ハーロの背は同い年の子と比べても低かった。
  今に比べて栄養状態があまりよくなかったからだろう。
  父親にそれなりに鍛えられていたからそこらの新米よりは腕があったが、
 小さな子供に討伐依頼などをまわす依頼人はほぼいない。
  だから、腕っ節が強くても、一人で依頼を受けられる機会は少なく、
 親父が好意でくれる賄いや、薪割りなどの力仕事で生活していた。
  そんな彼に、転機が訪れたのは数年前の事。
  物好きな詩人が英雄の素質を見抜いたとかいって付き纏い始めたのだ。
  最初は、それを歓迎していた。
  一人で依頼を受けられない彼には、セアルの存在は大変ありがたかったし、
 ハーロ自体、目立ちたがり屋で英雄願望も強い方だ。
  本来、詩人が自分の歌を歌ってくれるなんて大喜びするタイプだろう。
  ただ……

(狼退治の時だってそうだったなあ)
 
  セアルの歌に、ハーロ自身が行動した結果はほとんどない。
  慣れないフェイントを入れてようやく仕留めた相手も、
 ただの一撃で軽やかに叩きのめした事になっている。 
  言ってしまえば、ハーロの名前の部分を別の誰かにしても、
 成り立つのがセアルの歌だ。
  それにモヤモヤしたものを感じるようになったのはいつからだろう。
  世の英雄は皆、そんな気持ちを抱くのだろうか?
  英雄なんて相手との付き合いがないハーロには知る術はない。
  それとなく相談した先輩冒険者には『ししゅんき』だとか言われたが、
 それが何かも分からずにただモヤモヤがたまっていくだけだった。
  それが爆発したのがフロンティアからの帰り道だったが、
 もしもサラ達と出会い組むようになっていなければ、
 ハーロはもっと悪い形でセアルと決裂していたかもしれない。
  とはいえ喧嘩を始めて約一ヶ月、彼自身後悔などがなかった訳でもないわけで。
     
 「そうだね。……今日はありがと。父さん達賑やかなのが好きだったから」 
 
  ハーロの一言に、周りの一同も知らずと安堵の溜息をついた。
  墓の周囲に生えた雑草を集めて焼いた所に火の気が残ってないのを確認し、
 他の冒険者達から預かった花を彼らの仲間の元に添え、その冥福を祈る。
   
 「ほら、マリスもそろそろお祈り切り上げよう?」
 「……」
   
  聖職者としての義務感か、掃除の後は身寄りがない者の入る墓にまで
 マリスは一つ一つ丁寧に聖句を唱えていた。
  集中しすぎているのか、終わりを告げるサラの言葉に見向きもしない。
  そんな彼女の肩をフィリオンが軽く叩くと、
 彼女は慌てた様子で帰り支度を始めた。
  その頬はほんのり夕焼け色だ。
  最後に全員で辺りの墓に一礼して、一行は帰路に着く。

「あ、今年作った歌は来年また歌ってね」  
 
  帰り道、ハーロからにこやかな表情でそんな念押しもされたので、
 額に汗を滲ませているセアルの無茶も少しは減るだろう。
 
  そんな、ただそれだけの一日だったのだが。  
 
  そんな様子を小耳に挟んだある教会の神父がいた。

  数日後、星の道標に新しい依頼が入る。
  それがサラ達の、新しい冒険の幕開けだった。


************************************

 お久しぶりです、環菜です。ご無沙汰してしまい申し訳ありません。
 パソコン買い換えました。いろんなものがすごく綺麗です。
 カードワースのバージョンもあがったことで音楽とかすごいですしね。
 正直これほど変わるとは思ってなかったです。
 にしても……リンクを張らせてもらってるLeeffesさんのリプレイが完結してました。 
 早すぎますよぉ、こっちは全然おわりそうにないのに……(汗)。
 一応目指すは6レベルなのでもうちょっとなのですが、
いいシナリオは多いのに、私の技量が追いつきません。
 どんな風にまとめればいいやら。てかどう考えてもここから長そう。

 さて、という訳で新しい書き物は本人も予定してなかった転機の続きです。
 実は、リプレイをまじめに書こうとして書いたOPが2パターンありまして、
こっちはこっちで気に入ったので片方捨てるのがもったいなくなったのと、
まだまだそちら仕上げるのに時間がかかりそうなのに、買い替えの挨拶もないのは、と
悩んだ挙句、こっちにくっつけてしまおう、となりました。
 久しぶりなので読めるレベルになっているか自信がありませんが、
読んでくれる皆様に楽しんでいただければ幸いです。

 ところで、ちょっと気分転換にテンプレートを変えてみました。
見えにくいなどなければよいのですが……。
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