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祈りしもの 4
2013-08-04 Sun 23:56
 
  翌朝。
  いつもならまだ宿で早めの食事を摂っている時間に、サラ達は町へと入った。
  黒雲の影響かこの町の住人は昼夜を問わず存在できているようだが、
 アンデッドとは基本的に太陽の出る時間は出てこないものである。
  レイスがそうである事を期待しながらも万が一を考えて、
  物陰から不意打ちされないよう大き目の路地を選び、
 一行は早足で目的地へと辿り着いた。
  目の前にあるのは、十字架と無数に名前の刻まれた一枚の大岩。
  聖北教会の主導でアクートの慰霊祭が最初に行われた時、
 戦争に関わった者達によって立てられた慰霊碑だ。
  本当なら昨日教会の後に訪ねようかとも思っていたのだが、
 思わぬ頼まれ事からの流れでそれ所ではなくなっていた。
  マリスの指導の下一同は黙祷を捧げ、そのままこの場を後にする、筈だった。
  その小さな気配にリックが気付くまでは。  
 
 「誰だ?!」
 
  掛けられた声の大きさに驚いたのかその影はすぐさま踵を返す。
  止める暇などなく駆けていくそれは、人の赤子ほどの大きさの銀色の動物。
 
 「猫?」
 「俺にもそう見えたな」
 
  猫はあっという間にガラクタのようになったものを潜って姿を消してしまう。
  リックは追いかけるのを諦めてその猫のいた辺りを探った。
  石畳である為足跡は追えないのだが、
 代わりに風変わりなものを見つけ小さく声を上げる。
 
 「これは?」
  
  そこにあったのは十字架の聖印だった。
  根元には決して豪華ではないが色とりどりの花を集めた花束が添えられている。
  
 「お墓ですね。よく読み取れませんが、これって名前だと思いますよ」
 
  セアルの指の先は針で引っかいたようになっている。
  磨耗や風雪の影響を知らない素人がやったらしく、
 それはすっかり潰れて正しく読み取れなくなっていた。
 
 「でも、墓参りするにはまだ早い気がするけどなぁ。
  もうすぐ慰霊祭だってあるんだろ?」
 「ハーロ……惜しいけどこの場合の問題はちょっと違うかな」
 
  リックがそう答え、花束を拾って一本を引き抜いた。
  ありふれた春の花は朝霧を露のように含ませその花弁を綻ばせている。
 
 「この花、まだ瑞々しいわね。でもこの近くにこんな花咲いてたかしら?」
 「見なかったと思いますけど? この辺りはほら、こんなお天気ですし」
 
  血の色がかった暗い空を見上げてマリスは首を傾げた。
  太陽が見えない事もあってこの町の周辺は真冬並みの気温だ。
  春の花などとうてい咲ける環境ではない。
    
 「この花束が置かれて、多分二日もたっちゃいない」
 
  そう言うとリックは町の方を見つめた。
  サラ達が視線を追ってみれば、その先では女が中空を漂っている。
  時折立ち止まるのは誰かを捜しているからだろうか?
  しかし、当然ながら足もなく宙を彷徨うその姿に生気は見受けられない。
  おそらくバンシーの類だ。とサラは思い、
 自分があまりに今の状況に慣れてきている事に気付く。
  一般人なら普通、こんな町に入ろうとしない。
  悲鳴を上げてさっさと逃げ出しているだろう。ならば。
 
 「……一体、誰が?」
 
  花束を抱え、昼夜問わず幽霊が彷徨う町中をここまで辿り着いたというのか。
 
 「さっきの猫にでも聞くしかないんじゃねえか?」
 「猫にって言われても……どうやってよ?」 
 
  確かに猫は魔法と縁深いし使い魔にも選ばれやすい生き物だが、
 相手が喋る気がなければ意味ないし、そもそもどう猫と話せというのだ。
  軽くまぜっかえす幼馴染にサラはこめかみを押さえた。  


  ***   ***   ***   ***   *** 

  
  とりあえず彷徨っていたバンシーを昇華させた後、
 一行は色々問題を棚上げにして、そのままその通りを歩いてみる事にした。 
  町の中心地でもある道の先には一軒だけ、立派な館も見受けられるのだが、
 そこは探索に時間がかかりそうなので後回しにする事にしたのだ。
  少し意外な事に、銀色の猫はそんな彼らの前に時折姿を現していた。
  バンシーを祈りで昇華させていたのをどうやら見ていたようで、
 その後は妙に人懐っこく、こちらが撫でても逃げようとはしない。
  まあ、こっちを見張っているのは確かなようだが、
 その視線に嫌なものを感じないので今はそのまま放置している。
  使い魔だとしても苛めすぎてまだ敵味方のはっきりしていないその主と
 うっかり本気で敵対する事になったら困るのだ。
  それに……荷物袋の中で今日もグースカと眠っている宿の猫もいる事だし。
 
 (甘すぎるんだろうなぁ)
  
  自分の決断をそう自嘲しながらもサラは頭を振る。  
  今は、周囲の調査に集中する時だ。
  かつては賑わっていたのであろう道のりにある家々は、
 少し埃がひどく老朽化で壊れた物もあるが、
 頑丈な物件は今なお人が住んでいてもおかしくないほどしっかりと立っていた。 
  ただ、時折見られる血だまりらしい変色や武器による破壊の痕が、
 ここでかつて起きた惨劇をありありと想像させる。
  その中の一つ、手近にあった扉の血しぶきの跡にセアルは手を伸ばした。
  姿のないかつての住人は無事に行くべき場所へと行けたのだろうか?
  あるいはまだ術者に呼び出されていないだけなのかもしれないが、
 しかし公表二千人だったこの町の住人全てを呼び出せる術者など……。
 
 (そんな化け物がいたら、とっととこちらが退散するしかないでしょうね)
 
  悪い空想を振り払うように、セアルが首を振ると、
 リックに連れられて先頭を歩いていたジャックが小さく唸った。
     
 「おや、見つけましたか」
  
  全員で中途半端に壊れた屋根を潜り、狭い室内を覗き込む。
  そこにいたのは七つか八つほどの年頃の幼い少女の霊だった。
  いつまでも戻らぬ父を心細げに待っているようで、
 自分が死んでしまっている事にすらおそらくは気付いていない。
 
 『おとーさん……どこ……?』
 
  小さな呟きに同じような経験をした少年の歯がぎしりと音を立てた。
 
 「オレよりずっとちっちゃいじゃんか……」
 
  ハーロが思わず撫でようとした手はその体をすり抜けた。
  彼女の身はとうに朽ちている。ここにあるのは魂、それだけだ。
 
 (……神よ、死してなお現世を彷徨う憐れな者を貴方の御許へお連れ下さい)
 
  少女の前で跪き、マリスは十字架を握り締めて祈る。
  そんなマリスの祈りが通じたのだろうか?
 
 『……何か、いい気持ち……眠たくなってきちゃった……』
   
  ただただ父を求めていた娘はようやく安らかな眠りを手に入れた。
 
 「お休み……」
 
  少女が消え去る瞬間のあどけない呟きに答えながら、
 サラは足元に転がった人形のオルゴールを拾った。
  彼女の父も、似たようなものを送ってくれた事がある。
 
 (あれはいくつの誕生日だったかな……)
 
  追憶に浸りつつ埃を払ってねじを巻けば、
 年月を経てなお柔らかなその音色が部屋中へと広がっていった。
  まるで、子守唄のように。 
 
 
続く
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