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こちらはカードワースのリプレイっぽい書き物置き場です。
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祈りしもの 6
2013-08-05 Mon 01:30
  猫は真新しい墓の前でじっとその身を硬くしていた。
  あれから既に数刻が過ぎ、しかし屋内からは何の音沙汰もない。
  ただ徐々に弱まるレイスの霊圧に、彼らが今戦っている事が分かる。
  猫は祈る。どうか、皆が救われますように、と。
  思い起こせばあの後……冒険者達は館へと入り、すぐにそこから出てきた。
  今度は障害に当たったからではない。
  寡黙な青年が抱えていた女の亡骸を、館の庭へ埋葬する為である。
  時間がない、と呟きながらも彼らは丁重に彼女を葬り、
 そして、もう一度館に突入するとそれ以来出てこない。
  街中での様子もそうだが、この墓の存在こそが彼らの優しさを示すものだ。  
  だから、祈る。どうか、どうか。
 
 (あの人に、冒険者さん達が無事に勝てますように)
 
  やがて、大きな都市ではそろそろ逢魔時の鐘が鳴る時刻……。
  猫の知覚の中で、最も強い気配を放っていたそれが大きく揺らぎ、消えた。
  終わったのだ。彼女の一族の長年の責務も何もかも。
 
 「ね、迎えに来てくれるよね。あの人を」
 
  墓にそう語りかけて、構成していた術を解く。
  もうこの姿も必要ない。
  猫はその姿を脱ぎ去ると最後に行くべき場所へと向かう。
  心配ない。あの人達もきっと来てくれる。
  だって、この町の皆の為にあんなに祈ってくれた人達だから。
  暗くなる中、十字架の墓に祈りを捧げ全部終わった事を報告する。
 
 「これでよかったんだよね。お母さん……」
  
  遠くから、冒険者達の足音が聞こえてくる。
  墓に刻まれた十字架をなぞり夕霧の露をそっと払うと
 猫だった少女は彼らを迎えるために立ち上がった。
 
 
  ***   ***   ***   ***   *** 
 

  サラ達が屋敷の外へと戻ってきた頃には、
 周囲は既に夕闇に包まれていた。
 
 「昨日の今頃に比べれば明るいって思うのが不思議ですね」 
 「元凶を断った事で天候も変わってきてるんだと思う。
  明日からは遅れていた春告げの雪も降るんじゃないかな?
  ここで屋根のある家を借りてもいいけど、
 野営地までは戻ったほうが明日が楽だと思うよ。それに、やっぱね」
 
  サラの言葉に、一同は頷いた。
  美味しいワインにしっかりとした屋根のあるこの状況は惜しいが
 この館全体が町長の墓標に等しい事を今のサラ達は知っているからだ。
 
 「町長さん、これでよかったのでしょうか……?」
 
  先ほど対峙したばかりのレイスを思い、マリスは溜息をつく。
  かの霊はこれまでに背負ってきた業が大きすぎたのか、
 マリスの祈りで天へと送る事は出来なかった。
  それまでに受けたダメージで自然崩壊してしまったのだ。
 
 「……本人が眠りたがっていた」
 
  館の方を振り返り、フィリオンは静かに語る。
  それは確かに、正気に戻ったレイス自身の言葉にもあった。
  彼はサラ達に止めを請いすらしたのだから。

 「じゃ、最後にお祈りしていこうよ」
  
  そういう面では信心深いハーロの言葉を受け、一行は慰霊碑へと向かう。  
  そこで、最後の出会いがサラ達を待っていた。
 
 「貴方は?」 

  慰霊碑の傍に佇んでいたのは、どこか見たような色合いの銀髪の少女だった。
  年の頃は十歳といった所だろうか? 
  怜悧とした雰囲気の中にどこか寂しげな印象を抱かせるその少女は、
 サラの問いかけに焦る様子もなく、ただ静かにその正体を打ち明けた。
 
 「この町の者だよ」
 「え?」
 「私のおじいちゃんとおばあちゃんがこの町の生まれなの」
 
  その言葉に冒険者達の誰もが驚いた。
   
 「……生き残り……ですか。アクートの虐殺の……」 
 
  セアルの問いかけに、少女がこっくりと頷く。
  町一つ皆殺しで生存者なしがアクートの虐殺に関する歴史の通説だ。
  サラ達は、レイスが残した書置きを読み、
 それが正しくない事を知ったばかりだったが、
 それでもやや遠いとはいえ生き証人が現れた事に驚きを隠せない。
  そんなサラ達に、少女は深く頭を下げた。
 
 「ありがとう」
  
  そして、告げる。 
 
 「この町の人たちの霊魂を呼んだのは、わたし」 
 
  そう言って、彼女は十字架の墓に手を伸ばした。
 
 「やり方はお母さんに教わったの。……もういないけど」
 
  墓を優しく撫でながら、寂しげな笑みを浮かべる少女。
  その仕草にその墓で眠っているものの正体を知る。
  無言になってしまった彼らの沈黙を破ったのはサラだった。
 
 「……霊を呼んだって言ったわね。何のために?」
 「あの人を……ひいおじいちゃんを解放する為には、必要だったの」
 
  唇を噛み締めて少し厳しい物言いをするサラに、
 少女は黄昏を瞳に浮かべたまま説明を入れる。
  彼女の曽祖父が、他でもないあのレイスだった事。
  曽祖父が暴走するのを抑え人々に危害を加えぬようにする為に、
 少女の祖母、母、そして彼女自身が死霊術を覚え、
 毎年慰霊祭の時期には魔法で暫く動きを封じていた事。
  そして、少女の母が昨年の慰霊祭に祖父を抑えるのに失敗して死んだ事も。
 
 「でも、ひいおじいちゃんはそのこと知らなかったんだよ。
  昼間は何とか理性があったけど、夜は心まで魔物になっていたから……」
 
   彼女は、母の死によりこの繰り返しをこれからも続けるのに疑問を抱いた。
  彼女の曽祖父は町の人の恨みなどを全て抱え込み、
 その大きすぎる力で町に君臨している。
  では逆に町の人たちをそういう負の感情から解放してあげれば?
  あるいは少し力が弱まるかもしれない。
  だからこそ少女は、今回の事件を起こしたのだ。
  
 「私達も、上手く貴方の思惑通りに動いたわけですね」
 
  猫にそうしたように膝をついて目線を合わせるマリスは、
 怒られるのかと思っている少女をそっと撫でた。
 
 「そんなに気にしなくていいですよ。
  貴方が頑張ったおかげで、私は大事なことを教わりましたから」
 
  真摯で純粋な祈りを捧げる事で、亡霊達を解放出来る。
  それを知ったマリスの祈りは短くも濃い経験を重ねた事で、
 既に技と言ってもいいレベルに達していた。
 
 「それはお姉さんが優しいからだよ」
 
  少女はそう言って困った顔をする。
  しかし、彼女が始めた事がこの町の亡霊達を救ったのは確かなのだ。
   
 「もう、行くね」
 「待って」
 
  語るべき事は全て語り終えたのだろう、
 少女は暗闇の中を慣れた足取りで歩みだす。
  その肩にサラが手を伸ばした。
  懐から取り出した古い書物を、少女へと押し付ける。
 
 「これを持っていって欲しいの。針をくれたの貴方でしょ? そのお礼」 
 「いいのに。……あれ? これ……」 
 「これは多分貴方のひいおじいさんが使っていた精霊魔術よ」  
 「ひいおじいちゃんの?」
  
  少女が改めてその本の表紙を眺める。
  不思議と懐かしいのは、祖母の死霊術の本に字が似ているからか。
 
 「この本は、術が持つ精霊達のバランスで成り立っている。
  詳しい術式を知らない私には、そのうちの一つしか選べない。
  そして、一つだけを選んだらこの本はきっと消えてしまうでしょうね」
 「消えちゃうの?」
 「ええ。でも、貴方のおばあさんはひいおじいさんの知識を受け継いでる。
  だから、あなたのおうちには詳しい資料があるかもしれない」
 
  書置きからの推測だし、今もそれが残っているかは不明だが、
 これからサラが持って帰って調べるよりも可能性は高い……。
  淡々と説明し、サラは少女の目を見つめた。
 
 「だから、貴方にこれを受け継いで欲しいの。
  もう一つ禁呪もあるけれどあれは余りに危険すぎて……
  こういっては何だけど、死霊術の類は余りに使いすぎると
  ひいおじいさんのような悲しい事例を生むわ。それに」
 
  静かに聞き入る少女の口元に、サラはそっと指を沿わせた。
 
 「この天使みたいな唇で死霊術の呪文なんて唱えて欲しくないって
  きっとひいおじいさんも願ってるから」
 
  そう言って、サラはぽんぽんと少女の頭を撫でる。
  レイスとなった町長が残した書置きに記されたその願いは、
 結局叶いはしなかったけれど、その子孫がそれを叶えたっていい筈だ。
  
 「……ね?」
 
  サラの言葉に、彼女は無言のまま首を縦に振った。
  深く静かに礼をすると、本を抱きしめて去っていく。
  冒険者達はその後姿を見つめながら、
 神に、あるいはすぐ傍の慰霊碑に祈る。
    
  廃墟の町アクート。もはや亡霊すら居ない、寂しい町。
  その町の数少ない末裔が、静かに、けれど健やかに、
 死んでしまった者たちの分まで生を謳歌できますように、と。
 

 
************************************



シナリオ名 :祈りしもの
製作者 :SHIMO様
入手場所 :my navy shoes 委託されての公開のようです

依頼料:1200sp
売却アイテム:氷の造花(上げた事にした)
       ムーングラス(その分高く賢者の塔へ売ったという事にする)
臨時収入:100sp→宝箱から
合計所持金:13232
入手アイテム:聖水2本、葡萄酒1本、傷薬1本、古い魔法薬1本、光弾の書1つ
       白蛇の後牙
入手スキル:無垢の祈り→マリス
入手クーポン:祈りしもの(+2)→全員 魂を救いしもの(+1)→マリス

 最初に注意。
 今回もシナリオ内のキャラを多少環菜が動かしてるシーンがあります。
 環菜の解釈だとこの子はこうでこうする、って感じにすぎないので、
リプレイ小説だからね、と淡く流してくだされば幸いです。

 お久しぶりです。皆様。
大変長らくお待たせして申し訳ありません。
環菜による久しぶりにまともなリプレイの更新です。
何せ前から既に半年……早すぎる。
もう誰も待ってなかったらどうしようと真面目に思います。
今回はリクエストの消化として祈りしものをやってみました。
リクエストしてくれた方、見てくれるかなぁ?
読者の皆さんの琴線などに少しでも触れてくれれば幸いです。

・・・あとがきのかきかたわすれた。これでいいかなぁ・・・?
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コメント
★ いいお話
お久しぶりです。

再び、かんなさんのお話を読めてうれしい限り。
そしてリクを受けていただけたとは、本当にありがたいです。

楽しく(?)、悲しくですかね?読ませてもらいました。

このシナリオは好きです。悲しいけれど、最後に救いがあるので、プレーした後は不思議と心地よい余韻にひたれます。かんなさんのお話を読んだ後も、同じような余韻にひたれました。

ありがとうございました。

2013-08-26 Mon 02:02 URL | ceevol #-[ 内容変更]
★ ありがとうございます
お久しぶりですー。いつもいらしてくれてありがとうございます!
他のリクエストが難しくなってきたので、これだけでもかけて良かったと思います。
このシナリオ、確かに素敵なシナリオですよね。私も大好きです。
お話の方も、気に入っていただけたのでしたら幸いです。
ちょっと9月は不調な時期ですがまた続きを書けるようがんばります。
こちらこそ、感想ありがとうございました。
2013-09-11 Wed 02:35 URL | 環菜(かんな) #-[ 内容変更]
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